
家庭、学校、会社、クラブ活動、通信ネットワークなど、様々なコミュニティーで生活をしている中で出会う言葉は数えきれないほどだろう。
その言葉の中にも、優しい言葉、強い言葉、厳しい言葉、きれいな言葉、流行っている言葉といったそれぞれ人の感情に訴える言葉がある。
私たちは自分の持っている言葉をいつ、どこで、誰に使うかを日々選択し、人とのコミュニケーションを図っているのだ。
皆さんも経験があるように、日々使われている言葉には何気ない言葉に勇気をもらったり心が痛んだりするといった、人の感情や更には行動に影響を与える力を持っている。
そしてその自分が使う言葉には、相手だけではなく、自分自身へも影響を与える力を持っているのではないだろうか。
子どもにとって最も言葉を交わしてきた存在が家族だ。
家族とのコミュニケーションは、本人の心身に大きな影響を与えている。
8スターズ達成者として今回紹介するのは、家族間のコミュニケーションを大切にし、小さい頃から言葉の力を感じてきた現在小学5年生の平田新之介さん。
周りから声をかけてもらったり自分が仲間に声をかけたりする中で、人にかける言葉を自分の意思で選択し、その言葉の力を行動する力に変えていった。
8スターズを達成するまでの新之介さんの成長と、これからの目標や夢について新之介さんとお母さんの奈緒美さんに話を伺った。
目標のために乗り越えなければならない課題
新之介さんはERUTLUCが開催しているスクールに小学1年生の頃から現在に至るまで、5年間通い続けている。
新之介さんには共にバスケットボールを頑張っている中学1年生の兄と、未だ現役でバスケットボールを続け、指導者としても活動している父に影響を受け、バスケットボールの世界に飛び込んだ。
まだ幼少のときに兄が通っていたスクールに幼児クラスがあり、そこでバスケをやりたいと切望したが、叶わなかった。
我慢の末、小学1年生で念願のスクールに通い始めたのが新之介さんの夢の始まりだった。

スクールではバスケットボールの技術を学ぶことはもちろん、自分の身体を自由に動かせるようになるためのコーディネーショントレーニングや人と協力したり影響し合ったりするコミュニケーション能力を学んでいく。
スクールは週1回の開催ということもあり、繰り返し同じスキルを学んでいく場というよりは体の賢さや判断力を向上させたり、引き出しを増やしていく場だ。
新之介さんはそういった取り組みを長い時間大切に積み重ねていった。
5年生になり、新之介さんは「H4H」に入るという明確な目標を掲げたという。
H4Hは千葉県で活動しているERUTLUCが運営するクラブチームだ。
その目標を達成するために新之介さんに与えられた課題が「検定カード」だった。
「『6年生になったらH4Hに入りたいです』といったら水野コーチに『検定カードをがんばってね』と言われました。」
そこから新之介さんの検定カードクリアへの取り組みが本格的に始まった。
自分がなりたい姿になるために、8スターズを達成することは新之介さんにとって乗り越えるべき課題だったのである。
母の奈緒美さんは取り組み始めるきっかけに出会ったときの様子を振り返った。
「それまではスクールの練習内で、コーチが時間を取ってくれる中で取り組んでいて、私が『やってみれば?』と提案してもなかなかスイッチが入らず、自分がやりたいことばかり練習していたんですけど、きっかけがあって、本格的に取り組み始めました。」
新之介さんが検定カードクリアに向けて取り組み始めたのは5年生の8月だったそうだ。
そして、その1ヶ月後の9月の終わりには検定カードの級を全てクリアしたということを聞き、驚いた。
検定カードには7つの項目が用意されており、それぞれの項目で7級から1級までの難易度が設定されている。
体幹や柔軟性が必要となり、高いボールハンドリング能力、コーディネーション能力を発揮しなければクリアがなかなか難しいものである。
新之介さんが短期間でクリアできたのも今までの積み重ねがあったからこそだということがインタビューを通して理解することができた。

小さな取り組みが大きな力を生み出す
ある技術を教えてもらったとする。
一方は技術を習得するのに時間がかかった。
もう一方は時間をかけることなく、見てすぐに技術を習得した。
この双方の違いはなんだろうか。
自分の体を思った通りに動かすことができるか、技術の習得を邪魔しているものがないかなど、習得技術の前提に立って見てみる。
その選手の土台がどれだけ積み上がっているかでこの差が現れるのではないだろうか。
例えばシュートという技術は手がまっすぐゴールに向かって伸びていること、距離によって力加減やボールをリリースするタイミングを調整できること、さらにはボールを保持するためのキャッチングやバランス能力がシュート技術として必要になってくる。
技術はある一つの動作だけで成り立っておらず、いくつもの要素が複雑に関係して成り立つものである。
短期間で検定項目をクリアしていった新之介さんは、今まで磨いてきたコーディネーション能力や高いハンドリング能力が生かされ、難易度の高い技術もすぐに体で表現することができたのだろう。
インタビューで検定に取り組んでいたときの様子を伺った。
新之介さんに検定項目について聞くと、
「体幹が難しかったです。」
と最も苦労した項目について教えてくれた。
「体が固かったので、股関節を開く項目になかなか時間がかかりました。」
新之介さんには、股関節の柔軟性の課題があったそうだ。
股関節の可動域を広げるためにお風呂に入った後や身体を動かした後を狙ってトレーニングを続けていったとのことだ。
使わない筋肉や動きは衰えていくもので、身体の柔軟性をあげたり可動域を広げるのはそう容易いものではないだろう。
努力の甲斐もあり、股関節の課題を見事クリアした。
8スターズ達成者が口を揃えて苦労したと話した、最難関の『ギャノンプッシュアップ』も試行錯誤しながら時間をかけて達成したとのことだ。
「まずはボールを支えて、それでボールに乗る感覚を覚えて、乗れたら腕立てをやってと分解しながらやってみました。芝生でやってみたり、砂の上でやってみたりあっちこっちに行って、結局一番やりやすかったのは、家のマットの上でした!
1回できて、コツをつかんでからは早かったですね。」
「できない悔しさから涙をこぼしたこともあったけれど、やりとげることができました。」
新之介さんは、「お母さんは厳しかった」と答えたが、その厳しさも新之介さんに目標を達成してもらいたい、諦めずに取り組み続ける強い人になってもらいたいという思いがあったからこそだろう。
そして、なかなか上手くいかないことにぶつかったときに、できないからとすぐに諦めてしまったり、やる気が起きないと思っているとそれ以上の成長は見られない。
しかし新之介さんには挑戦を楽しむ心と成し遂げたい目標があり、支えてくれた人がいたからこそ困難に立ち向かって成し遂げられたのであろう。
困難を乗り越えて達成できたときの喜びや達成感は、取り組んだ人にしか与えられない特権である。

新之介さんのモチベーションを上げていた要因は他にもあった。
兄の存在と父の影響力である。
歳が2つ違いの兄は、8スターズクラブ12人目の達成者となった平田丈一朗さんである。
兄弟はお互いを意識し、競い合いながら高め合っていったという。
体幹の項目では兄が先にクリアし、新之介さんが燃え上がる要因になったに違いない。
新之介さんの父の影響力は大きく、プレーに関することを細かく繰り返し教えてもらっているそうだ。
父との取り組みについても話してくれた。
「お父さんのチームが練習している体育館でも検定の取り組みをしていると、お父さんのチームメイトも一緒になってやったりしていました。結局大人の方ができていなかったです。」
検定項目のカップリングスキップを一緒に楽しく取り組んだとのことだ。
「音楽とかリズム系は得意ではないから時間がかかるかなと心配していましたが、その日のうちにはクリアをしていました。」
と母の心配をよそに、新之介さんは積み上げてきたコーディネーション能力を発揮していった。
新之介さんのコーディネーション能力の高さを実感できるエピソードだった。
「カップリングスキップはお父さんではできなかったみたいです。俺は難しい、お前たちはすごいなって。」
父からのこの言葉は新之介さんにとってはとても嬉しい言葉であり、もっと頑張ろうという気持ちにさせてくれたものに違いない。
父に頑張りを認めてもらったことで誇らしく思い、新之介さんの自信につながったことだろう。
検定カードの取り組みについて、
「あっという間に終わっちゃった感じです。取り組んでいる様子を見てて、本当に積み重ねだなって思いました。
こんなに早く終わるとは思っていなかったです。
小さい時からスクールに通っていて、やっていただいたことがこうやって結果に出ているんだろうなって感じました。」
母の奈緒美さんは積み重ねることの大切さを改めて感じている様子だった。
そして、検定を全てクリアして
「ハンドリングスキルが上がったり、最後のシュートのフィニッシュ力が上がりました。」
と新之介さんは取り組んできた成果を実感した様子だった。
家族みんなで力を合わせて取り組み、8スターズを達成した新之介さん。
「初めてトロフィーをもらって嬉しいです。」
そう達成した感想を述べ、積み重ねてきたことの結晶としてトロフィーが新之介さんの自信を映し出すものとなった。
小さいことを積み重ねるのは時間がかかる。
しかし、最終的な差は土台となる器の広さがどれだけ準備できているかに左右される。
小さい頃からの積み重ねが、目標を達成するときに大きな力を発揮していくことだろう。

自分だけじゃなくて、チームとしてみんなと一緒に勝ったりすることが大事
成し遂げたい目標に向かって8スターズクラブ認定を目指した新之介さん。
8スターズに認められるためには身体の使い方だけでなく、心の面でもバスケットボール選手として一流の考え方ができることが求められる。
そういった考え方や取り組み方などメンタルスキルついても学んでいくのがERUTLUCスクールの特徴のひとつである。
体の使い方とスキルで7つの星が揃い、そして心を整えることで1つの星を手に入れると8つのの星が揃い、ERUTLUCの殿堂入り選手として認められるのだ。
練習終了後には「子どものスポーツのすすめ」という冊子を活用し、子ども達とチームスポーツの考え方や価値観を共有して心を磨いている。
そして、全ページをアウトプットすることで物事の見え方や見方を自分の中で整理し、今まで気づけなかったことを発見していく。
仲間と共有した話を親にアウトプットすることが心の星を手に入れる条件となっており、その取り組みの中で親にも考え方や価値観を共有する。
新之介さんはこの取り組みの中で自分の中心となる考え方や言葉に出会った。

親へのアウトプットは、スクールに入った1年生の時から取り組み続けてきたという。
「お父さんお母さんに今日の話を伝えてね」というコーチからの働きかけもあり、帰りの車の中で「今日はどんな話だった?」というやりとりを毎練習後にしていたとのことだ。
この取り組みを続けていたことで、全ページをアウトプットするという課題は8スターズへの取り組みをする前からほとんど終わっていたそうだ。
ここでも小さい頃からの積み重ねがあったことが伺えた。
アウトプットをする中で、『win-winを考える』という話と『大事なことを優先する習慣』はとても大事なことだと気づき、特に心に残っているそうだ。
「『win-winを考える』は、自分だけじゃなくて、みんなで勝てるようにとか、チームとしてみんなと一緒に勝ったりすることが大事だと思いました。
『大事なことを優先する習慣』は、良い選手になるためには第2の領域を大事にしようって書いてあって、自分もそれが大事だと思ったからです。」
新之介さんは良い選手になるために大事なことに気づき、それを行動に移していった。
母の奈緒美さんは新之介さんの成長した様子を話してくれた。
「感情を出すことが多かったのが、いい意味で感情をぐっと抑えられるようになったり、勢いで行き過ぎないようになったりだとか、ちょっとした成長が試合をしている中でも見られています。
ちょっとした声かけをしたり、仲間にアドバイスをしていたり。
そうすると同じチームメイトのお母さんたちに『こう言ってもらったんだ』とか、『アドバイスありがとうね』とか私も言ってもらえて。
次男なので、自由にやっているように見えて、結構人のことを気遣っている部分とかが見えています。」
新之介さんはチームメイトとWIN-WINの関係を意識し、周りにもそして自分自身にも良い影響を与えていた。
また、新之介さんの取り組みとして、
「毎日家でもちょっとずつ勉強していって、それがテストでいい点数を取れたりしています。バスケでも毎日ストレッチをやったり毎日ボールを触ったりしています。」
と、大事なことを優先するという習慣づくりを実践しているとのことだ。
この『大事なことを優先する習慣』の話では、私たちの行動を「重要なこと」「重要でないこと」、「緊急なこと」「緊急でないこと」で整理している。
第1領域は、緊急かつ重要なこと。
第2領域は、緊急ではないが重要なこと。
第3領域は、緊急だが重要でないこと。
第4領域は、緊急でも重要でもないこと。
良い選手になるためには、第2領域を大事にすることだ。
新之介さんが大事にしている第2領域は、自分を磨いていく自主練が当てはまる。
自主練は「緊急なこと」にはほとんどなり得なく、しかし良い選手になるためには「重要なこと」だ。
私たちの生活はほとんどが緊急なことに時間を奪われ、緊急ではないことをするためには自ら時間をつくり出す必要がある。
さらには、重要なことだとわかっているが重要ではないことに時間を使い、結局重要なことが後回しになってしまうことが多い。
この『大事なことを優先する習慣』を身につければ、良い選手に近づいていくということは誰も疑わないだろう。
8スターズの取り組みも、緊急を要することのない、しかしより良い選手になるためには重要な第2領域である。
新之介さんは重要事項を優先する習慣を身につけ、より良い選手になるための準備を整えていた。
準備ができている選手は大事な場面で失敗をすることはないだろう。
「私たちがうまく伝えたいけど伝えられないことを冊子を通して教えていただいています。
勉強をしなさいって言えば『そうだね』っていって取り組むこともできるし、帰ったら手洗いうがいをしてすぐ宿題をするとか、他のおうちが『うちは言っても勉強してくれない』など困っているようなことに困ったことが全くないので、こういうところに取り組んだ結果が現れているのかなと。
そういうところが見れてて、なんかすごいことをこの子たちはやってるんだ、当たり前にやっているんだけどそれってやっぱりすごいことなんだって親としては実感しています。」
年齢を重ねていくごとにちょっとずつ成長している姿を実感し、母の奈緒美さんも取り組んできたことにやりがいを感じているというように伺うことができた。

世界が広がった瞬間
自分の行動が変わったり、成長するきっかけとなるものはなんだろうか。
新之介さんはスクールで自分が成長するきっかけになった出来事について話してくれた。
「パスをしっかり回すことを学びました。
チームでは、低学年のときには1対1でどんどん仕掛けていくことをやっていて、パスをしませんでした。でも、スクールで同じことをしていたら、パスをしなさいと注意されて。」
そこからパスを回してもいいんだということに気づき、チームでも実戦するようになったそうだ。
「低学年の内は自分でいくことを優先していて、パスは禁止でした。それをやっぱりスクールでもやっていて、コーチから『空いてるよね?』って指摘を受けて、涙を流していることもありました。
でもそれがあって、上級生との練習に混じって試合に出るようになってからは成長が早かったですね。スクールで判断を練習をしていたこともあったので。」
そう母の奈緒美さんが新之介さんが変わっていく様子を話してくれた。
課題と出会うことは、成長のきっかけとなりうる。
その課題を解決するのはコーチだろうか、家族だろうか、それともチームメイトだろうか。
自分でない誰かがあなたの課題を解決したところで、どうして向上していけるのだろう。
課題を自分で解決することでしか自分の成長は期待できないのである。
新之介さんは自分の課題に気づき、それを自ら行動に移したことで成長のきっかけをつかむことができた。
課題を解決したときに自分が見る世界は広がり、バスケットボールがより面白くなる瞬間なのだ。
勇気を出して行動に移し自分の成長を感じた新之介さんは、これから先どんな課題に出会ったときにも前向きに課題と向き合っていくことだろう。

新之介さんの世界観を広げた言葉についても教えてくれた。
それは、「子どものスポーツのすすめ」の冒頭ページに出てくる心理学者ウィリアム・ジェームズ氏の言葉だという。
心が変われば、態度が変わる
態度か変われば、行動が変わる
行動が変われば、習慣が変わる
習慣が変われば、人格が変わる
人格が変われば、運命が変わる
運命が変われば、人生が変わる
「心一つが変われば態度や行動、習慣などいろいろなところが変わるから」
この言葉によって心動かされ、新之介さんの考え方に影響を与えた。
そして、『親に感謝する』ということについてもスクールで学んだと教えてくれた。
「『連れてきてもらっている、お月謝払ってもらっているんだよ、これが当たり前じゃないんだよ』とよく子ども達には言ってくれている。」
自分がバスケットボールに集中できるのは支えてくれる親の存在があるから。
そう教えてもらったことで、感謝の気持ちを持つということに気づいたのである。
これから新之介さんは多くの人や言葉と出会い、そこでいろいろな考え方に触れていくことになる。
心を変えていくことで自分の人生が変わっていくことを知った新之介さんは、人に感謝する気持ちを忘れずに自分の人生を良い方向に進めていくことだろう。
持っている言葉から何を選ぶか決めるのは、自分自身
「プレー以外のところでは、声かけを学びました。コーチの声かけで励まされたりして、自分もやっていました。」
「ナイシュー!とかナイスプレー!とか褒められる言葉が嬉しいです。」
新之介さんは声かけについて学んだという。
そして、自分が嬉しかったことをチームメイトにも還元していたのだ。
「声掛けに関して、際どいこと言っちゃうのかなって親としてはハラハラしている部分はいつもあるんですけど、『励ましてくれてた』と言ってもらえると、あ、ちゃんと成長しているんだなと安心します。
家では親が結構言ってしまうことも多いので、それを外でもやってしまうんじゃないかって思うこともあるんですけど、そういうのも自分でちゃんと判断しているようです。」
「学校生活でもそう、チームメイトともいざこざになったりだとか、コミュニケーションを取れるということは外でも繋がってくると思うので、まずは家庭から取り組んでいます。
もちろんバスケがうまくなることも大事ですが、そういうコミュニケーションからも結果が変わってくることがあると思うので、コミュニケーションについては子どもたちに言っています。」
新之介さんの家庭ではコミュニケーションを取ることを大切にしていると母の奈緒美さんは話してくれた。
何かあったら徹底的に話しをするし、親も言いたいことは伝える、子どももちゃんと伝えるようにしているとのことだ。
「マイナスのことを言っていることは聞かないです。試合中、練習中も。
何回も失敗が続けば他の子に対して『なんで?』とか『シュート入れてよ』とかきっと思うことはあると思うんです。だけど、いいところを探そうとしているというか、シュートが入らなくても『ドライブよかったよ』とか『シュートの選択良かったよ』とか本人は言っています。そういうのを見ると、私たちより大人だなって。」
新之介さんはスクールで学んだことを生かし、チームメイトを励ます言葉を選んでWIN-WINの関係を築いていこうとしている様子が伺える。
「お兄ちゃんが結構声かけをしていて、僕もやらないとってなって」
兄の影響もあり、前向きな言葉がけを心がけている新之介さん。
家庭で言葉を交わし合う中で、思っていることを言葉にすることの大切さを学び、チームメイトに声かけをしていくことを兄から学び、新之介さんの周りではいい影響が連鎖しているように思えた。

先日、ERUTLUCの活動に参加してくれている選手から能力テストの結果などで選抜された選手が招待されるプレミアムキャンプで、代表の鈴木が言葉の力について話をした。
人に使っている言葉は自分に言っているのと同じになるという話。
PREMIUM CAMP MINI2022 鈴木良和コーチ
脳は主語を識別するのが苦手なので、「あなた素晴らしいね」って声をかけていると、あなたのことを言っているんだけれど、脳は自分が素晴らしいって言われているように反応する。
練習中や試合中に人がいいプレーをしたり行動をしたときに、「それいいね」「よかったね」「ナイス!」と声を掛けられる人が自分の状態を良くするし、言われた人も状態が良くなる。
バスケットは自分の心の状態がいい人が活躍する。
これはチームスポーツとして大事なスキル。
そして、親が家庭で子ども達とどう接するかで、子ども達がよく使う言葉が決まってくる。
普段どんな言葉を子ども達に使うかはすごく意識して選んでいくといい。
ミスのことを悪くいうのは、『これはだめだよ』というのに気づかせて『もっと頑張らなきゃ』となるように考えがちだが、
ダメ出しをすると、そのダメ出しをされた子も周りにダメ出しするようになる。
そして人のミスをだめだと言っているから、自分のミスもだめだと思いやすくなり、自分がミスした時に、自分はだめだと自分を攻めるようになってしまう。
バスケットボールのような相手によってプレーを変えていかなければならないスポーツは、練習してきたことを相手が邪魔してくるもので、7割くらいは失敗する。
うまくできなかったときにパフォーマンスを下げないことが大事。
普段から人のだめな部分を言っている子は、自分がしたミスに引きづられ、パフォーマンスが落ちていき、好不調の波が大きい選手となる。
人の短所を悪く言うと自分の短所も許せなくなり、そうなると自己肯定感が上がりにくくなる。
自己肯定感がパフォーマンスを左右するので、家庭でバスケの話をする時に注意が必要なのは、ダメ出しをして「私はだめなんだ、もっと頑張ろう」より、もっとこうなりたい今のままじゃだめだと本人達が思えるようにすると、チームでプレーしている時に自分のパフォーマンスを下げずに済む。
もっと良くなってほしいと思うけれど、思わせ方が大事。
自分が発する言葉は人への影響だけでなく、自分へ影響するという。
このキャンプには8スターズを達成した選手達も招待されるため、新之介さんも参加した。現地ではたくさんの励まされる声、勇気をもらう声に触れたことだろう。
ただ、新之介さんが触れてきた言葉の中には励まされる言葉のようなものではなく心が痛むような言葉も含まれているだろう。
いろいろな言葉に触れている中で、言葉を選んで使うのは自分自身だ。
新之介さんはこれからも仲間を勇気づけ、チーム全体の士気を高めていく選手として活躍してくれることがとても楽しみだ。

自分のなりたい姿は『目標に向かって諦めないで努力する自分』
一つの大きな成果を上げた新之介さんだが、これは夢を叶える第一歩に過ぎないだろう。
「アウトサイドのプレーをやっているから、インサイドのプレーができるようになりたいです。」
と今の自分の課題を話してくれた。
新之介さんの目標としている選手は、記憶にも新しいNBAオールスターゲーム2022でMVP賞を獲得した「ステフィン・カリー選手」だそうだ。
「外のシュートが得意になりたいと思っています。
オフェンスもディフェンスもできて、アウトサイドもインサイドもできる選手になりたいです。」
自分のなりたい姿をイメージし、目標に向かって一歩ずつ進んでいる様子が伺えた。

なりたい姿になるために、何を取り組んでいくかというのを考えて実行することが大切だが、
「たくさんシュートが入るようになるために、シュート練習をするシュートフォームの動画などを見て学ぶ。フォームを真似する。」
と新之介さんは目標達成のための道筋をしっかり立てていた。
さらに、アレン・アイバーソン選手にも大きな影響を受けたと教えてくれた。
「小さくてもたくさん点を取れるから、自分も点をたくさん取れるような選手になろうと思いました。」
母の奈緒美さんは
「身長が大きくはないので、大きい子には負けちゃいがちですけど、そこにも立ち向かっていける気持ちも強くしてもらいたいです。シュンとなっちゃいやすいので。
メンタルも強くなって、周りから信頼されてお互いに助け合える人に恵まれていいプレーができる選手になってもらいたいかなって思います。」
今の自分の身体の大きさで自分で可能性を決めることなく、どんな相手に対しても立ち向かっていける大きくて強い心を持つことがこれからの課題なのだろう。
はっきりした目標を掲げた新之介さんに、なりうる最高の自分とはどんな自分かと投げかけた。
『目標に向かって諦めないで努力する自分』
8スターズ達成という偉業を成し遂げた新之介は、掲げた目標を達成するまで努力を続ける強さと、それは成し遂げることができるという自信を手に入れた。
間違いなくこれからも目標を達成するまで諦めずに進んでいけるだろう。
新之介さんのなりうる最高の自分をイメージした迷いのない強い言葉でインタビューを締めくくった。
コーチ達へメッセージ
「プロになるから、応援よろしくお願いします!」

名前:平田 新之介(ヒラタシンノスケ)
生年月日:2010年6月21日生まれ
出身:千葉県東金市