
多くの選択肢の中からバスケットボールというスポーツを選び、そのバスケットボールを通してさまざまな人と出会いながら、関わりを持っていく。
出会う人、一人一人の感じ方や考え方が違う中で、私たちは一体どれだけの発見や学びを得ているのだろうか。
「見えないと始まらない。見ようとしないと始まらない」という天文学者ガリレオ・ガリレイが残した言葉がある。
目の前の物事を「観て」人の話を「聴いて」それに「没頭する」。
この注意力を発揮して多くの学びや気づきを得て大きく成長し、見事8スターズを達成した選手を紹介する。
2021年8月に8スターズを達成し、8スターズクラブに認定を受けた家徳桜香子(カトクサクラコ)さん。
現在小学5年生の女の子である。
桜香子さんは小学3年生からバスケットボールを始め、地域のミニバスチームに所属しながらエルトラックが開催するスクールに通っていた。
その中で見本にしたい選手やコーチなど多くの人達と出会った。
まわりの人との関わりが多くなっていく分、いろいろな考え方に触れる機会は増えていくが、その発見や気づきを得ることができるかどうかは本人次第だ。
目の前の物事に関心を寄せずにぼんやりと過ごしていたり、人の話を他人事のように聞いている注意力散漫な人は発見や気づきがなく、日常での学びが少ない。
一方で、注意力を発揮できる人はどんな環境であっても知識や気づきを得ることができる。
桜香子さんはバスケがうまくなりたいという強い思いを持ちながら、いろいろなコーチの言葉から多くのことを学び、そして励まされ、解決の糸口を見つけていった。
8スターズクラブ達成という一つの目標を達成して自信をつけた桜香子さんと、それをそばで見守り続け支えてくれたお父さんの英雄(ヒデオ)さんがインタビューに応えてくれた。
支えてくれた人達や環境への感謝の思いが詰まったメッセージを届けたいと思う。
意識の変化から生まれた目標
桜香子さんがバスケットボールを始めたのは小学3年生になってから。
最初何もできなくて悩んだ時期が続き、もっと上手くなりたいという思いから母がエルトラックのスクールを探してくれたとのことだ。
3年生の秋から通い始め、
「それまでは自分からあまり練習することがなかったけれど、スクールに通って上手な子にたくさん出会ったことで自分もそうなりたいと思うようになってから、毎日練習するようになった気がします。」
とお父さんが意識の変化の様子を教えてくれた。
意識の変化が見えてからは、なんでも一生懸命やるようになり、
「ドリブルドライブが得意になりました。」
と桜香子さんも自分で得意なものができた自覚を持てるようになっていた。
「狭いところでもどんどんドリブルをついて抜いていくようになりました。
気が強くなった。自信がついたんだと思います。」
とお父さんが話してくれた。

意識の変化からさらにバスケに没頭する中で生まれた目標、それが8スターズ達成というものだった。
目標へ向かっての取り組みを始めたのは4年生の2月。
新たに通い始めたスクールで出会った鈴木代表と山澤コーチから8スターズというものを聞き、本格的に8スターズ達成を目指して取り組みを始めたとのことだ。
そして、5年生の1月に8スターズを達成した女の子がいるということをきっかけに目標はより明確になった。
7つの技能検定を合格し、「子どものスポーツのすすめ」というスクール入会時に受け取る冊子のアウトプットを全ページすることで8スターズを達成することができる。
そして、達成した選手はエルトラックスクール生の殿堂入り選手として認定を受けるものだ。
8スターズ達成の目標をを5年生の1月に掲げ取り組みを進めていき、目標とする時期の半年程も早い5年生の8月に見事8スターズ達成の目標を果たした。
「成功したときはお互い喜んで、楽しかったことの方が多かった」
8スターズ達成に向けて取り組み始めたところ、初級レベルはスムーズにクリアしていったが上級レベルになると上手くいかないことが多くなっていったという。
「なかなか上手くいかないことでよくお互いイライラして、けんかになったりしましたね。でも、それを乗り越えて成功したときはお互い喜んで、楽しかったことの方が多かったです。
苦労はしたけれどできたときの喜びと達成感はすごかったので、よかったです。」
桜香子さんの検定の取り組みをいつもそばで支えてくれていたお父さんが取り組んでいたときの様子を話してくれた。
上手くいかないことが続くと気持ちも後ろ向きになってしまったり、焦りが見えてしまうだろう。
なかなか上手くいかないことが続いたり気持ちが不安定になったときに、桜香子さんはどのようにして取り組んでいったのだろうか。
そこには目標に向かってひたむきに取り組む中で気持ちが不安定になったときに彼女を支えてくれるものがあった。
親やコーチの存在と気持ちを持続させる考え方だ。
技能検定で最も苦労した項目について聞くと、
「体幹の2級が一番苦労しました。はじめは1秒も乗れませんでした。
できるようになるまで3ヶ月はかかりました。」
と取り組んだ様子を振り返った。
体幹の項目の2級の内容は、体を床に対して横向きにし、片足でボールに10秒間乗るというものだ。
その他にも同じ体幹の項目である、4つのボールの上で腕立て伏せを3回行うギャノンプッシュアップや、2つのボールを上に打ち上げている間に回転し、打ち上がっているボールをキャッチしてシュートを決めるコーディネーションレイアップにも長い時間をかけて取り組み、見事合格をもらうことができたという。

はじめは1秒も乗れなくてもやり続けることでそれが2秒となり、5秒となり、いずれは10秒という目標を達成することにつながるが、難易度が上がるにつれてなかなか上手くいかないことが多くなってくる。
そんなときに一緒に取り組んでくれる存在がいることが大きな支えになるだろう。
お父さんの英雄さんは自分はバスケをやったことはないし知識もないということだが、それでも一緒に練習に付き合ったり、身体を動かしたりしたという。
そばで支えてくれる存在がいるだけでどれだけ心強く、挫けそうになっても頑張り続ける力が湧いてくるものだ。
そして達成したときの喜びは1人のものではなく、共有できる喜びとなりより大きな力を生み出すのである。
「初めは、パパなんてできないじゃないかといっていたんですけど、今はそんなことは言わなくなりました。」
目標達成に向けて支え合いながら取り組む中で、8スターズという称号を手にするだけでなく、親子の絆も深めていった。
気持ちを持続させる考え方との出会い
初めてのことに挑戦するときに、できないからやらないという選択肢はない。
誰もが何事も初めての挑戦であり、それを乗り越えて物事ができるようになっていく。
しかし、さらなる向上を目指して挑戦を続けていくとなかなか成果が見えない時期もやってくる。
偉業を成し遂げた桜香子さんもはじめはボールに1秒も乗れなかったり、コーディネーションレイアップでもできるようになるまで目が回ってしまうほど挑戦するなど、上手くいかない時期を乗り越えて目標を達成した。
この目標達成の支えとなったあるお話と考え方について話してくれた。

「中国の竹の奇跡」というお話は聞いたことがあるだろうか。
その内容は
「中国のある竹は種を蒔いてから4年間、小さな芽が出るだけで何一つ成長は見られない。
その4年間、成長はすべて地面の中、土の中に深くその根を張っているのだ。
そして5年目、その竹は一気に25メートルも伸びるのだ。
うれしいことに、人生はこの中国の竹の話に似ていることが多い。
まじめに働き、時間とエネルギーを注ぎ、成長するためにありとあらゆる努力をする」
といったものだ。
技能検定の取り組みについても、この中国の竹の奇跡に似ているのでないだろうか。
桜香子さんにこの話が好きな理由を尋ねたところ、
「最初結果が出なくても地下に根っこは張り巡らされていて、あるとき一気に結果が出るというところ」だと答えてくれた。
桜香子さんの検定に対する取り組みも、初めはできる気もしなかったものでも取り組みを続けることで深く根を張り、結果を出すことができたに違いない。
目標を達成したい!結果を出したい!という大きな成果を摘み取るためには、根を張ることなしには成し遂げられない。
だからこそ、小さなことの積み重ねが必要なのである。

この話に励まされながら、頑張り続ければ中国の竹のようにいつか大きく成長できるときがくると信じて取り組み続けた結果、桜香子さんは大きな成果を摘み取ることができたのだろう。
しかし、取り組んでいた技能検定はその項目が上手になることを成果としていない。
技能項目をクリアすることで身体の使い方を覚えたり自由に動かせるようになるといったコーディネーション能力のアップとボールハンドリング能力の向上が図れることでバスケットボール能力が向上していくことを成果としている。
「バスケが上手くなった感じはあります。身体もよく動くようになりました。」
とお父さんから見ても技能検定に取り組んだ成果が見えるようになったとのことだ。
そして、桜香子さんはできたことに満足せず、
「できなくなっちゃうといけないので今でも毎日項目を選んでやっている」
とのことだ。
技能検定の本質を理解し自分の刃を磨き続ける桜香子さんの、これからのさらなる活躍に注目したい。
この「中国の竹の奇跡」のお話は、8スターズ達成の条件の一つ「子どものスポーツのすすめのアウトプット」の一エピソードである。
桜香子さんは毎日2ページずつお父さんにアウトプットを続けたそうだ。
技能だけでなく、小さなことを取り組み続け積み重ねることがいつか大きな成果を生むのである。
この取り組みを続ける中でお父さんの英雄さんは、
「自分を見つめ直す時間になる。
大人も『なるほど』と納得したり考え方が変わったりできました。」
と大人でも子どものスポーツのすすめに教えられることが多いことを話してくれた。
技能検定と子どものスポーツのすすめのアウトプットの取り組みは、桜香子さんの心技体を大きく成長させるものとなったに違いない。
お世話になっているコーチに感謝の気持ちを届けたい

目標に向かって取り組む桜香子さんにとって、毎週通っているスクールや各所で開催されているクリニックで出会うコーチの存在は大きく、とても感謝しているとのことだ。
ここで、桜香子さんからお世話になっているコーチにメッセージを届けたいと思う。
鈴木良和コーチ、山澤恵コーチ、蓜島元夢コーチ
「3ヶ月だけだったけど、THCUに混ぜてくれてありがとうございました。
あの時習ったことは今でも毎日続けています。」
藤巻俊哉コーチ
「いつも大切なアドバイスをしてくれてありがとうございます。」
鈴木竜一コーチ、小川和樹コーチ、門谷気流コーチ、菅澤力仁コーチ
「検定をしっかり見てくれてありがとうございました。」
田中繁広コーチ
「いつもクリニックで教えてくれることが身についていて、試合で使っています。」
佐東雅幸コーチ
「シュートを丁寧に教えてくれたり、クリニックの休憩時間まで検定を見てくれてありがとうございました。」
山本友香コーチ
「親への態度を叱ってくれてありがとうございます。大切なことを教わりました。」
桜香子さんはバスケットボールというスポーツを通して多くの人と出会い、そしていろいろな考え方に触れたことだろう。
バスケの技術だけでなく、取り組む姿勢や考え方、人に対する態度、物事の見方などたくさんのことをコーチ達から教わり、感じ取ってきた。
「優しい言葉も厳しい言葉も、子どもは言われると嬉しい。
こうやっていってくれたよと教えてくれたり、こうやって怒られちゃったとか、本人は嬉しそうに言っています。コーチ達はいつも大切な言葉をいろいろとくれます。」
とお父さんの英雄さんも指導してくれたコーチ達に感謝の思いを告げた。
考え方が変わると行動が変わるということ
コーチ達からもらった言葉には自分の考え方を変えてくれたものがあったという。
桜香子さんから、スクールでお世話になっている水野コーチに伝えたいメッセージが
「考え方をガラッと変えてくれる話をしてくれてありがとうございます。」
というものだった。
桜香子さんがチームでなかなかうまくいかないことが続き、スクールのコーチである水野コーチに相談をしたところ、
「自分のできることをなんでもやりなさい。シュートもリバウンドもディフェンスもできるだけ自分でやりなさい。そうすればすごく伸びるよ。」
と教えてくれたとのこと。
マイナスな気持ちが続いていた桜香子さんだったが、
「その話を聞いてからすごくやる気が出てきちゃって、何十点も試合で取るようになった。」
とお父さんが変化の様子を話してくれた。

ある一つの言葉でも、人を勇気づける言葉だったり、人の考え方を変える言葉になりうる。その反面、人を傷つけてしまったり不快にさせてしまう力も言葉にはある。
私たちはたくさんの言葉に触れ、影響を受けながら生活していることを自覚しなければならないだろう。
言葉を発する人、タイミングなどによって人に与える影響力は変わってくるものだが、言葉一つで考え方が変わり、その考え方が変わることによってとる行動も変わってくるのである。
桜香子さんは、水野コーチからもらった言葉から勇気をもらうと同時に解決の糸口を見つけ、それを行動に移していった。
「ガラッと考え方を変えてもらってよかったなと思っています。水野コーチに感謝しています。」
と桜香子さんとお父さんは感謝の意を伝えた。
そして、ある言葉によって影響を受け桜香子さんの世界観は広がっていった。
その言葉は『スウィッシュ』だ。
教えてもらってから今でも好きな言葉だそうだ。
これは、スクールの中で鈴木代表に教えてもらったとのことだ。
『スウィッシュ』というのは、ボールがボードにもリングにも触れずにネットを揺らしてシュートが入ることをいう。
桜香子さんは
「スウィッシュのときのネットの音が気持ちいいから好き」だと理由を教えてくれた。
加えて、
「練習でスウィッシュじゃないと点数に数えられない練習があって、そのときに決まった時の音が気持ちよかった。」
とスウィッシュで決めることの気持ちよさを肌で感じたそうだ。
考え方が変わった言葉や勇気づけられる言葉をもらい、好きだと思える言葉に出会った桜香子さんは、これからさらにバスケットボールに没頭していくだろう。
そしてこれからは、今までもらった言葉を今度は自分が周りの人達へ還元し、桜香子さん自身が周りを勇気づけられる選手になっていくであろう。

新たな目標に向かって
8スターズ達成という大きな目標を成し遂げた桜香子さんは、新たな目標に向かって進んでいる。
その目標を教えてくれた。
「H4Hに入団して大活躍する。」
これが桜香子さんの新たな目標だ。
そして、今考えるなり得る最高の自分の姿だと答えた。
現在桜香子さんはミドルシュートやロングシュートを特訓している最中で、それを武器にしたいと考えているとのこと。
「ミドルシュートで活躍できると良いなと思う。」
と自分の課題と向き合い、新たな武器を磨いているところだ。

そんな桜香子さんが目標にしている選手は、NBAで活躍しているカイリー・アービング選手、ジェームズ・ハーデン選手、東京オリンピックの3X3で活躍を見せた冨永啓生選手だと教えてくれた。
「冨永啓生選手のどこからでも決めるショットやカイリー選手やハーデン選手は見ていて楽しくなるプレーをするので、そんな選手を目指している。」
と目指す選手像を明確に話してくれた。
明確な目標を持ち、それに向かって自分を磨き続けている桜香子さん。
彼女が会場を沸かせ、誰もが見ていて楽しめるプレーでコートを駆け回っている姿を見られる日が来ることがとても楽しみだ。

桜香子さんの今後の目標を聞き、お父さんはどういう思いを持っているか伺うと、
「H4Hのお姉さんたちを見てかっこいいなと思っているので、そういうところに入って頑張ってもらいたいなと思っています。」
と思いを語り、親子で見つめている先は同じだと感じ取ることができた。
目標達成のためにそばで支えてくれた親に対して、「8スターズ達成」という大きなプレゼントができたことが感謝の印。
コーチや親など多くの支えてくれた人達への感謝の念を抱いている桜香子さんは、その感謝の気持ちを行動や態度に示し、これからも目標に向かって進み続けていく姿から目が離せない。

名前:家徳 桜香子(カトクサクラコ)
生年月日:2010年6月19日生まれ
出身:千葉県千葉市