
スポーツには人の心を動かす力がある。
ただプレーが上手いだけではそれは最大の力を発揮しない。
その人の情熱や熱意に心を大きく動かされるのである。
オリンピックでのスポーツの盛り上がりが記憶に新しい中、そんな経験が誰しもあるのではないだろうか。
インタビューを通じてその熱や力強い決意に心を動かされるものがあった。
今回の8スターズ達成者は、中学1年生の平田丈一朗(ひらたじょういちろう)さんだ。
ERUTLUCの自主練ツールの一つとして、身体の使い方やハンドリング能力・コンディション能力などを高めるための技能検定という取り組みがある。
これらを全てクリアすることが、ERUTLUCの殿堂入り選手として「8スターズクラブ」に認定されるための一つの条件である。
次々検定項目をクリアをしていく中で、どんな取り組みや成長があったのだろうか。
大きな目標を掲げ、壁にぶつかりながらも日々奮闘する姿をインタビューを通じて探っていく。
1/100人の存在になるために
丈一朗さんが検定カードに本格的に取り組んだのは、コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出され体育館が使えなくなった時だ。
検定ではレイアップの項目、ノーマルとパスキャッチが得意で一級までは難なくクリアできたそうだ。ボディバランスやハンドリング能力が必要な難題だが、難なくクリアしたということに、コーディネーション能力のレベルの高さを感じた。
反対に、股関節を横に広げてバスケットボールが股の下を通過しないところまで下げるという体幹の項目は苦戦をし、家で頑張って取り組み、なんとかクリアまでいけたそうだ。
緊急事態宣言中は家で自分で動画を撮り、コーチにチェックしてもらった。ただ、動画は撮ったもののコーチにチェックしてもらうまでは少し時間がかかっていたそうだ。
それでも何とか早くクリアしようと検定カードに取り組んだ。
中々進めなかった中でも、丈一朗さんは進むのをやめなかった。彼を突き動かしたやる気の背景には、どんなことがあったのだろうか。

一つは弟・新之介さんの存在だ。
普段から切磋琢磨している2人は良き仲間であり、良きライバルである。
検定カードは少し丈一朗さんの方が早く進んでいた。そこから弟・新之介さんの追随もあり、2人とももう少しで検定をクリアするというところまできていた。
そのときに丈一朗さんは、絶対に先に終わらせる、負けたくないと思い、そこからはすぐにコーチに見てもらって勢いよく検定をクリアしていった。
身近にライバル的な存在がいることは成長においてとても大きい。
検定カードはもちろん、普段の練習から常にお互いがいい刺激をし合っていることが見えた。それが負けたくない気持ちや、やる気となり成長につながっているのだろう。
そしてもう一つ、丈一朗さんのモチベーションを上げていた言葉がある。
それは代表の鈴木が選手たちに話をしている時に言った、「この話を100人が聞いていたとしても、行動するのは10人くらい。さらにそれを継続できるのは1人いるかいないか。」という言葉だ。行動力と継続力の難しさ、大切さを表している。
この言葉に感銘を受けた丈一朗さんは「100人に1人の存在になろう」と強く意気込んだ。
コロナで体育館が使えずチーム練習ができなかった時期でも、この言葉をもらったことでモチベーションが無くなることは全くなかったそうだ。逆に、この時期に周りとの差をつけるチャンスだと捉えていた。
どんなことをするにも、継続するということが1番難しく、1番重要である。それを分かっていても中々出来ないことが多いのではないだろうか。しかし丈一朗さんは、それを当たり前の感覚で成し遂げているのである。
それは丈一朗さんが人の言葉に耳を傾けることのできる素直な心の持ち主であり、さらに決めたことは最後までやり抜くという強い心も持っているからであろう。
成長マインド
8スターズクラブの認定には、検定カードを全てクリアする他に、もう一つの条件がある。
スクール入会時に配布される『子どものスポーツのすすめ』という冊子で、練習の後にコーチと話の内容をインプットする時間がある。そこにはバスケットへの取り組みや、成長のための大切な考え方が載っている。
この冊子の話を家に帰って自分の言葉で全ページアウトプットするというのが、8スターズの最後の星をもらうための条件である。
読み進めてインプットをし、自分の考えも含めてアウトプットすることによって内容を自分の中にさらに落とし込むことができるのだ。丈一朗さんももちろんこのアウトプットを全てクリアしているが、その取り組みの中で、自身の行動や考え方にどんな変化があったのだろうか。
1番印象に残っている話を聞いてみると、「うまくなるかどうかはあなた次第」という冊子の1ページ目に載っている話しだという。

この話では、おばあさんにも若いお姉さんにも見える一枚のだまし絵から、この女性が満員電車に乗って来たら席をゆずりますか?という問いかけがされている。同じ絵を見ていてもおばあさんに見えているか、お姉さんに見えているかで行動が変わってくるはずだ。
『見え方が違えば行動が変わるのです。練習に対しても同じです。見え方、感じ方、捉え方が違えば、行動が変わってくるのです。行動の積み重ねが習慣になり、技術になり、その選手のレベルを決めていきます。つまり、行動を決めることになる「考え方」が、皆さんの成長スピード、可能性を決めるのです。』
と書かれている。さらに同じページの内容で、丈一朗さんが考え方で大切にしているものが以下の文章だ。
心が変われば、態度が変わる。
態度が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、運命が変わる。
運命が変われば、人生が変わる。
丈一朗さんはこの話しを聞いて、「1番最初の1番重要な内容だと思った。この話はその後の全ての話に繋がってると思う。」とのことだ。
練習や生活、どんなことでも考え方次第で行動が変わるということを学んだ丈一朗さんは、続く2ページ目以降はこの内容を踏まえて話の受け取り方に注意したそうだ。そしてより成長に繋がる考え方、行動は何かと考え、行動するように心がけたと言う。
さらに、「考え方を変えることで、チームの練習で考えながら取り組むようになった。自主練でも前はシュートを打つだけだったけど、今は細かいところや修正するべきところまで考えてやっている。」と話してくれた。
この考え方のシフトチェンジこそが、周りとの差をつける大きな一歩である。ただ言われたことをこなす練習を1年続けるか、自分で改善点を考えながら行う練習を1年続けるか、その後の成長は一目瞭然だろう。
それにいち早く気付き、行動に繋げられた丈一朗さんだからこそ、8スターズという一つの難題をクリア出来たのだ。
行動することによって得られた勲章は自信となり、今後どんな壁が待ち構えていようと丈一朗さんの背中を押してくれるに違いない。
信頼は自然と付いてくる
丈一朗さんにERUTLUCに通い始めたきっかけを聞くと、「バスケがもっとしたい、もっと上手くなりたいと思って親に頼んだら探してくれた。そこから色々なスクールやキャンプに参加するようになった。」とのことだ。
参加したスクールでは、色々なスキルとリーダーシップを学んだ丈一朗さん。
1番成長を感じる瞬間は、部活でスキルを発揮できた時や、キャプテンとしてリーダーシップを発揮する時だそうだ。
「リーダーシップを学んで、練習や試合中に声をかけたり、アドバイスをしたりしている。プレーでも出来ることを見せている。」と精神面でもプレー面でもリーダーシップを発揮する事には自信をのぞかせていた。

母・奈緒美さんにも話を聞くと、「色々なことを試すのが好きなタイプで、誰かに言われなくても様々なことに挑戦していた。スクールで習ったスキルや考え方も、部活や学校生活で積極的に発揮していると思う。学校の先生と話すと、周りに対しての行動を褒めてもらえたり、信頼されていると感じることが多い。スクールでたくさんのコーチに教わることができて良かったと思ってる。」
と、一番身近で丈一朗さんの行動を見ているからこそ、変化や成長がいい方向へ発揮できているのを感じているのだろう。
丈一朗さんの周りへの冷静な対応は、困っている誰かの助けになり、支えとなっているに違いない。そういった行動の積み重ねが信頼となり、丈一朗さんに返ってきているのだ。
成長のための環境を求め、行動したことによって訪れる出会いがある。そこで丈一朗さんは成長のチャンスをしっかりと自分のものにし、周りの人たちに認めてもらえるまでに成長を遂げたのだ。
これからの自分
現在中学1年生の丈一朗さんは、身長が176㎝と比較的大きい方である。小学生のときから周りよりも大きく、ポストプレーをすることが多かったそうだ。
ドライブしてゴール付近で得点することも得意としている。身長もあり、検定カードをクリアするほどのハンドリングやコーディネーション能力に加え、誰よりも努力の大切さを知っている丈一朗さん。
そんな丈一朗さんが今後さらに伸ばしていきたいと思っているプレーは何だろうか。
どんなプレーヤーを目指し、どんな成長を見せてくれるのだろうか。
「今まではドライブからとかのゴール下の得点が多かったけど、これからはアウトサイドを極めて、更にアシストも出せるように早いパスと判断の練習もしていきたい。」
中学生になり自分と同じくらいの身長や高い選手がたくさんいる環境でプレーをすることが多くなり、今までと同じプレーで勝つのはどんどん難しくなると感じているようだ。

今から先を見据えて、課題解決に取り組んでいることは素晴らしい。
そこには今でも自身でプレーをしている父・卓也さんのアドバイスもあるという。
近くでサポートしてくれている存在があってこそ、ここまでの丈一朗さんの良さが発揮されているのだろうと感じた。
母・奈緒美さんは、「ミニバスは周りがみんな小さかったからポストプレーが多い中で、対戦相手にはもちろん自分より大きい選手はたくさんいたけど、その中でも一生懸命負けないようにやっていた。これから周りの身長が伸びて、仮に自分が伸び悩んだとしても自分の武器を見つけて欲しい。検定カードも取り組んである程度のハンドリング力はあるはずだから、器用貧乏にならずスキルを発揮していってほしい。」と期待の言葉をかけた。
丈一朗さんはアウトサイドシュートとアシストの上達に向けて、
「フォームが定まってないから、しっかり固めて自分なりのフォームにしていく。パスはもっと早く出せるように。判断もしっかりできるように。」
とこれから取り組むべきことを明確にした。
武器を一つ、二つと増やしていくことによって更なる自信に繋がることは間違いない。これからどんどんプレーの幅が広がり、成長していく丈一朗さんの姿が楽しみである。
勝負強さ
みなさんは元NBAのコービー・ブライアントのプレーを見たことはあるだろうか。
多彩なスキルや強靭なメンタリティで繰り広げられるプレーは、観ている人の心を奪い、惹きつけられる。
そしてそのメンタルからくる勝負強さは何度も私たちを興奮させてくれた。
丈一朗さんはこのコービー・ブライアントの勝負強さを目標としている。
「練習熱心なところやバスケットに取り組む姿勢を動画で見たことがあったから、それから考え方などをお手本にしている。勝負所に強く、結果を残しているところがすごい。そういう選手になりたい。」
普段からコービー・ブライアント動画を見てプレーやメンタリティを学んでいるそうだ。
なぜ丈一朗さんは勝負強さにこだわるのだろうか、、、
そこにはある強い思いがあった。
キャプテンとしてリーダーシップやプレーでチームを引っ張る丈一朗さんは、試合での大事な場面で幾度となくボールが回ってきた。
最後のシュートを任される存在なのだ。
しかし、そのような場面で思うようにプレーできないことがたくさんあったそうだ。
もちろん悔しくて落ち込むことが何度もあった。
しかし落ち込むだけでは進めない「やるしかない」とその日のうちには切り替えることを意識してやっていた。
ここからさらに強い自分を手に入れるためには、メンタル面でももっと成長しなくてはいけないとまた新たな課題も見つけているのだ。
そして「チームに頼られて勝負所で任される選手になりたい。」とチームでの存在感を出すための強化を進めていく。
なりたい自分が明確にあり、やるべきこともはっきりしている、そんな丈一朗さんの将来の夢は、『NBAでプレーすること』だ。
憧れのコービー・ブライアントの所属していたレイカーズや、マイケル・ジョーダンの所属していたブルズに入ることが目標だ。

丈一朗さんは、コービー・ブライアントの言葉で『失敗を恐れるから失敗をする』という言葉が好きだと言う。
何事も挑戦には失敗がつきものだ。それが怖くて中々踏み出せなかったり、諦めてしまうことは誰しもあるのではないだろうか。
それでも丈一朗さんはコービー・ブライアントの言葉を胸に、失敗を恐れず挑戦をし続け、自分の可能性を広げていく。
「プロとして通用するレベルに、冊子の内容が全てできる人に」という目標を掲げ、なりうる最高の自分に向けてこれからも邁進していく。
自身のポテンシャルだけに満足せず努力し続ける丈一朗さんは、これから更に大きな成長を見せてくれるだろう。
お世話になっているコーチへメッセージ
丈一朗さんからお世話になった全てのコーチへ
「これからもたくさんのことを教わりたいです。ご指導よろしくお願いします。
そして、プロになるまでずっと見ててください。」
ワクワクさせてくれる力強い目標を語ってくれた。
丈一朗さんの夢であるNBAの舞台まで、今後も目が離せない存在となった。

名前:平田 丈一朗(ヒラタジョウイチロウ)
生年月日:2008年7月11日生まれ
出身:千葉県東金市