スペインプロリーグ(ACB)所属のフエンラブラダの育成クラブについて
2017年3月10日、スペインコーチツアーにてNacho Rodilla(ナチョ・ロディージャ)氏にインタビューをさせて頂きました。現在スペインプロリーグ(ACB)所属のフエンラブラダの育成責任者をされている方です。ナチョ氏がフエンラブラダの育成責任者として選手やコーチたちに対する想いを聴くことができました。
インタビューの内容をレポートにまとめましたので是非多くの皆さんにご覧頂ければと思います!!!
・身長2mのPGとしてスペインプロリーグに1部で14年間プレー
・元スペイン代表選手(銀メダル獲得)
・バレンシア在籍時に国王杯で優勝に導く
・現在スペイン1部リーグのフエンラブラダの育成責任者。
フエンラブラダとの出会い
ナチョ氏とフエンラブラダとの出会いは、フエンラブラダの育成担当者よりヘッドハンティングされたことがきっかけとなり2016年の夏からフエンラブラダの育成責任者として活動している。
プロバスケットボール選手を引退後、所属チームであったバレンシアのコーチを担当。その後、スペインの育成クラブエストゥディアンテス(カンテラ)で育成年代の選手の指導を担当した。
フエンラブラダでは組織の方針や指導の哲学がまとめられておらず、指導プログラムや組織的なマニュアル、指導哲学や方針などを明確に整理する役割を担っている。
フエンラブラダのスクールについて
フエンラブラダでは2つのコースがある。
・競技力を求めるカンテラ
・趣味としてのスポーツ活動ができるスクール(16歳まで)
スクールには6歳から入ることができます。
12歳からカンテラで本格的にバスケットボールをしていきます。そのため2週間に1度試合をしている。サラゴサでもスクールをやっているが、13歳以上ではスクールからカンテラに移動する。エストゥディアンテスに近い部分があります。
練習について
フエンラブラダの哲学として浸透させようとしている事がある。まず戦略の前に個人技術が非常に必要だと考えている。
戦略ももちろん大事ではあるが、その戦略を最大限生かすためには個人で状況を打開する能力が必要だと考えているからだ。そのために、個人の技術に焦点を当て重点的に練習をしている。しかし、技術ばかり練習して試合の勝利に繋がらないでは良くないので、技術練習の中にバスケットボールの基本的な動き方も取り入れながら、チームとしても勝利に近づくよう練習している。
技術だけを切り取り、ディフェンスや状況判断がない練習を行うだけではなく、ディフェンスの対応を含んだ1対1や3対3なども取り入れて行なっている。
試合や普段の練習の中で生まれた課題に対して、チームや個人で課題を解決するために練習を行なっている。その課題に対しては練習中に課題解決を促す練習を繰り返し行っている。練習のやり方は、様々な方法や状況を作り、達成したい目的や課題に向けて解決できるようにしている。
個人技術を向上させ、試合の中でどうやって活かすかを考える。
年代やカテゴリーが上がっていくにつれて選手のレベルが上がっていくため、個人では打開できない場合は、徐々に戦術的なことも取り入れている。ジュニオール(U-18)のリーグ戦で戦っていくためにも5対5の戦術的な練習は取り入れており、トップチームに上がれるような準備もしている。
練習時間はトータル3時間行なっている。育成年代のシーズンの最初はフィジカルトレーニングを多めに行っている(約1.5時間から1時間)。フィジカルトレーニングは筋トレというよりも、フットワークやコーディネーションの練習を多く取り入れていき、シーズンが中盤になるにつれて、フィジカルトレーニングの時間は短くしている(約45分)。フィジカルトレーニング後の時間はバスケットボールの練習を行っている。個人スキルの練習もポジションごとに分かれてそれぞれの課題解決や強みの強化を図っている。
セカンドチームの練習は課題解決を解消するための練習が多くなっている。スクリーンプレイやピック&ロールなどの状況判断が多くなっている。ディフェンスの対応に対してどのように対応するのか。どのようなオプションを選択するべきか。ビックマンによっては、もっている技術が違うからできること、できないことがある。それに合わせてプレーの共通理解を図っている。
ポジションについてフエンラブラダでは、17歳まではポジションは固定しない。たくさんの個人技術を行い、ポジションにとらわれることなく様々なことにチャレンジして欲しいからだ。様々なポジションを経験することでたくさんの技術が身に付きやすく、ポジションを固定した後、プレーの幅がある選手が育ちやすいと考えているからだ。18歳からはポジションを固定させ、18歳以降では身体的な成長はあまり大きくないため、その選手がより活躍出来るポジションを精査している。
プロには技術レベルが高い選手が各ポジションにいる。その中でも通用するものを見つけ強化していく必要がある。
完璧な選手を目指していくが、全ての選手が完璧な選手にはなれないので、その選手の必要になることを強化することや、強みとなるものを持つことが必要になる。他の選手よりも1つ2つの飛び抜けたものを育て、チームに必要とされる選手にしていきたい。
フエンラブラダではジュニオールまでに幅広くポジションを経験させ、ジュニオールでは、専門的に強化する。
フエンラブラダのトップチームに上がる選手
現在トップチーム(1部)、セカンドチーム(4部)でそれぞれ16人ずついる。その中で、フエンラブラダ出身の選手は2人。セカンドチームもトップチームと同じように一緒に練習している。セカンドチームの2.3人はトップチームのプレシーズンで試したりして、そこの結果を踏まえながらトップチームにあげるかどうか判断している。
また、トップチームで活躍できそうな選手がセカンドチームに入ってきたら、レンタル移籍という制度を使いその選手をよりレベルの高いステージでプレーさせ、戻ってきたときにトップチームですぐに活躍できるように経験を積ませたりもしている。良い選手はすぐに現れたりしないので、将来活躍できそうな選手に対して環境と経験を与えるようにしている。
アンダーカテゴリーの今後の目標について
<2017年3月10日現在のフエンラブラダの各カテゴリーランキング>
U14のトップチームはランキング2位。
U16のトップチームはランキング3位。
U18のトップチームはランキング2位。
ナチョ氏がフエンラブラダに呼ばれた理由はクラブ制度の整理ともう一つアンダーカテゴリーの選手のレベルを上げること。ナチョ氏の就任1年目はトップチームの底上げとアンダーカテゴリーのランキングを上げることだった。
アンダーカテゴリーのリーグは現在、U14、U16、U18のカテゴリーがあり、それぞれA1、A2、A3とレベル分けされている。フエンラブラダではU14、U16、U18のカテゴリーでそれぞれトップチームとセカンドチームがあり、各カテゴリーのトップチームはA1でプレーしている。セカンドチームはA3でプレーしているためセカンドチームの所属カテゴリーを上げていくことを目指している。
U14、U16、U18のランキング1位はレアルマドリードのチーム。U14のランキング3位はエストゥディアンテス。
1位のレアルマドリードにはなかなか勝つことができていないが、U18のカテゴリーではレアルマドリードに勝つチャンスがあるほど成長してきている。
U16のチームにはヨーロッパ選手権ベスト5に選ばれたボスニアからきている選手も在籍していたり、U17のサラゴサで行われた大会のスペイン代表にフエンラブラダ出身の選手も選出されている。