スペインを世界王者に導いた”ペップ・エルナンデス氏”との会談 その②

ペップ・エルナンデス氏の考えるコーチングについて

2013年3月3日、コーチングツアーにてスペイン代表のヘッドコーチをされていたペップ・エルナンデス氏と会談をさせて頂きました。ツアー後すぐの公開は控えておりましたが、3年の月日を経てこの度、会談の内容をレポートにまとめましたので是非多くの皆さんにご覧頂ければと思います!!!



▼レポート第1弾!2006年に日本で開催された世界選手権の時の内容▼

スペインを世界王者に導いたコーチ“ペップ・エルナンデス氏”との会談




今回はレポート第2弾としてコーチとして体験した経験やコーチング時の内容を中心にお届けします。

800600

Pepu Hernández, nuevo entrenador del conjunto verdinegro|出典:Scariolo nuevo seleccionador español

ペップ・エルナンデス氏について

スペイン・マドリード出身のバスケットボール指導者。

1994年にCBエストゥディアンテスのヘッドコーチに就任。

2000年にはコパ・デル・レイ優勝に導くなど、エストゥディアンテスを支えた。

2006年世界選手権を前にスペイン代表のヘッドに就任。初優勝に導いた。

2007ユーロバスケットでも世界選手権とメンバーを変えず指揮を執り、準優勝。

2010年にホベントゥート・バダローナのヘッドコーチに就任。

2011年にエストゥディアンテスのヘッドコーチに就任。

ミーティングをするときに大事だと思う事はなんですか?

ミーティングに大事だと思うことは三つあります。

一つ目はアシスタントとのミーティングです。
アシスタントコーチは選手に聞かれたことに対して十分に答えられるよう準備しておかなければいけません。ですので選手に何を質問されてもアシスタントコーチ達が答えられるように必要な情報は伝えておかなければなりません。
そのためにゲームプランや考え方、対戦相手の情報を共有しておく必要があります。アシスタントコーチ達とは必要な情報を共有し、お互いの考え方が理解できるように何時間でもかけて話し合ってよいと思います。但し、選手全員が全てを聞きたいわけでもないので、選手が求めている情報だけを伝えられるように準備をします。



二つ目はトレーナーとのミーティングです。
身体の状態や怪我の具合などはトレーナーが一番良く分かっています。チームの選手たちがどれくらいの時間プレイが許されていて、どのタイミングで出場させられるかを考える一つの指標にもなります。



三つ目はプレイヤーとのミーティングです。
選手に対してもミーティングは必要だが長い時間をかけては行いません。内容は短く、最も大事なことだけを伝える。短いビデオやスタッツを見せ、試合への準備をさせます。

コーチとして考える大事な事はなんですか?

コーチとして考えなければいけないことを三つに分けて紹介します。

まずは自分のチームのことを考えるべきだと思います。
次にコーチ自身のことを考えます。
最後に対戦相手のこと考えます。



アメリカの有名な指導者、ボビーナイトにまつわるエピソードですが、ある夜、ボビーナイトらは試合に敗れた後にスタッフミーティングを開きました。試合の結果について様々な意見が出され、ミーティングは夜通し行われましたが、早朝の6時に差し掛かった頃、突然ボビーナイトが「分かった!」と言いました。
そして「相手よりも自分たちが劣っていたのだ。」ということを言い出したのです。
このエピソードから学べることは、試合後はシンプルに何が悪かったのか考えて長く引きずってはいけない。時間を無駄にしてはいけないということです。



もう一つのエピソードはある大会でスペインが決勝まで進んだ時の話です。決勝前夜に対戦する相手のビデオを観ていたが、肝心の試合中にコーチが寝てしまい、そのため試合に負けたという話です。
ここから学べることは、ゲームには新鮮なマインドで臨むことが大事だということです。

選手からコーチになる人の共通点などはありますか?

ミーティング終わった後にもっと情報が欲しいと聞きに来る選手はコーチになりたいと考えている人が多かったですね。
ユアン・オレンガ(注釈1)も若い時にはいつも質問にきていました。

「なぜ、このようなことやるのか?」
「この練習の目的は何なのか?」

ヘルマン・ガブリエル(注釈2)も練習後にノートをとったり疑問に思った時にはたくさんの質問をする選手でしたね。


※注釈1

ユアン・オレンガ

元スペイン代表選手(1992年バルセロナ五輪、1994年世界選手権等出場)

現役時代はエストゥディアンテスでもプレイしていた。

現役引退後にコーチへ転身し、2014年のFIBAワールドカップではスペイン代表のヘッドコーチを努めた。

2016年4月にエジプト代表監督に就任。



※注釈2

ヘルマン・ガブリエル

元スペイン代表選手

エストゥディアンテスに長く在籍し、当チームのレジェンドとも言われるプレーヤー


今話をした2人とは別の人の話ですが、27年間スペインの代表コーチを努めていたアントニオ氏という方がいます。
アントニオ氏はもともとエストゥディアンテスの選手であり、その後コーチに転身しました。
スペイン代表のコーチを努めたアントニオ氏、次に私自身(ペップ氏のこと)、その次のスペイン代表のコーチも元エストゥディアンテスの選手で、その後コーチになりました。エストゥディアンテス出身の選手が、引退後コーチとなり、またその何名かがスペイン代表チームでもコーチをすることができた。このことは本当に凄いことだと思いますし、私自身この話をできるのがとても嬉しいです。

pepu2

Pepu Hernández regresa a las canchas|出典:Pepu Hernández regresa a las canchas

コーチングをするときに気を付けている事はありますか?

選手もコーチも失敗から学ぶことが多いです。転ぶ前に助けない、失敗してから何をしたらいいのかを学ぶのです。



いろいろ細かく教えるコーチもいるが、私のおすすめは、選手自身が自分の“やりたいこと”と“やらなければならないこと”を考えられるようなコーチングが良いと思います。
“やらなければならないこと”は、チームの為であったり、その選手の成長の為にといった理由でやはりやらなければならない。
“やりたいこと”は、こうやったらもっと良くなるのではと自分自身で考えられるようになります。



指導する中で難しいのは考えさせることです。選手にコートの中で考えさせること。何故なら試合の混沌としている中で選手はプレイを考える必要があるからです。もちろん規律という部分を守ることも大事ですが、選手が自主的に考えることも非常に大切です。



素早く考えさせるのは大変ですが間違いなく結果はよくなる。
素早く考えることができればバスケットボールの結果もよくなるでしょう。
考えるのは、コーチングやティーチングの中で育まれるものであり、選手自身が実際に失敗してそれを修正するプロセスでより育まれるものです。



自分の選手時代にリーバーススピンを教わったが何故それをやらなければならないのかが分からなかった。
なぜそれが必要なのか、いつそれが必要なのかを教えてもらえなかったのです。スピン以外ではダメな理由も教えてくれなかった。

なので、自分がコーチとして選手に教えるときは
「なぜそれを使うのか?」
「いつ使わなければならないのか?」
を教えるようにしています。



技術は選手よりも上手く使えるように意識して使っています。選手よりも、「いつ使うのか?」また「どのように使うのか?」を理解しているから。
だから、技術も選手の時よりもコーチになってからの方が上手くなりました(笑)

nueve-anos-del-oro-de-saitama00

Nueve años del oro de Saitama|出典:Scariolo nuevo seleccionador español

最近の記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
PAGE TOP