デイブ氏が伝説の指導者ジョン・ウッデン氏から学んだこと
2016年3月30日(水)、4月3日(木)にアメリカでプロコーチとして活動されるデイブ・テイラー氏(Dave Taylor)をお招きし、特別クリニック(3/30)及び指導者向け講習会(4/3)を開催しました。
デイブ氏はアメリカバスケット界への警鐘を鳴らした書籍『THE A.A.U WASTELAND』の執筆、NBA選手主催のキャンプディレクター、NCAAのリクルート担当者も数多く訪れる大規模なトーナメントの運営など、様々なアプローチでバスケットボールの普及に携わり活躍されています。
今回のレポートではデイブ氏がメンターと崇める伝説の指導者ジョン・ウッデン氏とのエピソードも交えながらデイブ氏のバスケットボール観やアメリカバスケットボール界の善悪についてなどデイブ氏が日本の子どもたち・指導者の方々に伝えてくれたことをご紹介していきます。
デイブ氏が大きな影響を受けたジョン・ウッデン氏について
ジョン・ウッデン氏とは?
米国大学バスケット史上最高のコーチといわれる。1910年生まれ。大学時代、名選手として活躍、卒業後、高校のコーチや第二次世界大戦への従軍を経て、1948年よりUCLAのコーチに就任。カリーム・アブドゥル・ジャバー、ビル・ウォルトンほかのスター選手を育て上げる。60年代から70年代にかけてUCLAを10回にわたり全米チャンピオンに導くという大記録を打ち立てた。
米国大学バスケット史上最高のコーチといわれる。1910年生まれ。大学時代、名選手として活躍、卒業後、高校のコーチや第二次世界大戦への従軍を経て、1948年よりUCLAのコーチに就任。カリーム・アブドゥル・ジャバー、ビル・ウォルトンほかのスター選手を育て上げる。60年代から70年代にかけてUCLAを10回にわたり全米チャンピオンに導くという大記録を打ち立てた。
そのジョン・ウッデン氏の元にデイブ氏が出向いて直接教えを乞い、伝説の指導者から学んだ中で特に印象に残ったエピソードを話してくれました。
チームの中で特定のプレイヤーに特別な価値をつけない
チーム作りの際に、例えばエースプレイヤーが最も大切であるといった考えではなく、全てのプレイヤーを平等な目でみることを大切にしてチーム作りをしていた。
自分たちのチームをスカウティングする
多くのコーチが相手チームのスカウティングを重視する中、ウッデン氏は常に自分のチームのビデオを見ることを大切にしていた。対戦相手に合わせて変えるというよりは、自分のチームがどうすれば、より良くなるかを常に考えるというのが大きな理由であり、そこが他のコーチとの違いであった。
成功のピラミッド
ウッデン氏は自ら考え出した成功のピラミッドについて、オン・ザ・コートの部分だけではなく、オフ・ザ・コートの面でも非常に重要視していた。様々な問題を提起し、それらを成功のピラミッドをもとにチームのメンバー達に解決策を見つけさせ、プレイヤーひとり一人がどうすれば良いのかを考えさせるよう促していた。
それはつまり、コーチは操り人形として選手を動かすのではなく、最終的にコーチのもとを離れた選手が自分の足で歩んでいけるように育てることを大切にしていたからである。
勝利と育成の二項対立
勝利と育成は、よく対立になると思われがちだがウッデン氏は育成に重きを置いたコーチのロールモデルだと考えている。例えばNCAAのレベルでは勝利と育成が対立し、
「勝利を求めると育成ができない」
「育成を求めれば勝利はない」
と考えてしまう指導者が多い。しかしウッデン氏は「育成とはリーダーシップを育み、人として成長させること。」そして「人として成長すれば自然と勝利が近づいてくる」という考え方を持っていた。そのため、特に「鍛錬する」ということを非常に重要視していた。
靴ひもの結び方・ソックスの履き方から指導
UCLAのチームとして規律と文化を大事にしており、新入生が集まった日にチームの規律を守ることの大事さから始まり、靴の履き方から靴ひもの結び方、ソックスの履き方・脱ぎ方まで基本的なところから指導を始めた。チームにはカリーム・アブドゥル・ジャバ―というスーパースターがいたがこの選手にも基本からしっかりと教えた。
選手に迎合しない
UCLAではチームルールの中に髭を生やしてはいけないという決まりがあった。ある日の練習前にビル・ウォルトンというスター選手が髭を生やして体育館にやってきて彼は、「アメリカ人として髭を生やす権利がある」と主張した。そこでウッデン氏は「私は、あなたが大切にしているものに対して信念を貫く人物であることに敬意を抱きます。しかし、チームからあなたが居なくなるのは残念ですね。」と言った。その言葉を聴いてビル・ウォルトンは練習が始まる前にバスルームで髭を剃ってきた。
規律を正すことを恐れない
ウッデン氏はルールに対して厳しく、それに従わなければどんなに良いプレイヤーであってもプレイはさせなかった。学校生活の乱れていたり、成績が良くなかったりしたとき。チームオフェンスを覚えないとき。チームのルールに従うことが出来なければチームにいることはできないと厳しく選手たちと接してきた。
成し遂げたことではなく、成し遂げられたはずのことで評価をする
デイブ氏が高校のコーチをしていたときに、彼のチームが20点差で勝った試合の後にウッデン氏から電話にかかってきた。「チームは20点差で勝ったかもしれないが点差は問題ではない。自分たちのバスケをするためにベストを尽くすことはできたのか?」というメッセージが今でも非常に印象に残っている。
礼儀正しく振舞うことを教えなさい
デイブ氏がウッデン氏をコーチとして尊敬しているのは、決して悪い言葉を使ったり、怒鳴り散らしたりしないところ。常に自分自身の感情や言葉をコントロールしている。そういうところが最も尊敬でき、ロールモデルにしたいと強く思わせてくれるところである。
写真は若かりし頃のデイブ氏と今は亡きジョン・ウッデン氏。デイブ氏がウッデンコーチから直接見聞きしたエピソードをいろいろと語ってくださいました。レポートの後半ではアメリカバスケット界の光と闇の部分についてデイブ氏の考えをお伝えします。
後半へ続く…。