
スポーツに打ち込んでいる人は目標を掲げて日々取り組んでいることだろう。
「あんな選手のようになりたい」、「こんなプレーができるようになりたい」といったようにだ。
目標を掲げて取り組む中で、ただ目標を立てればいいというわけではない。
いつまでに達成させるのかという『具体的な時期』を決めることはとても大切なことで、それがあるのと無いのとでは取り組む姿勢が変わってくる。
その時期を中学校卒業までつまりエルトラックを卒業するまでにと焦点を合わし、8つの星を集め8スターズクラブという偉大な目標の達成を遂げたのが今回紹介する金子聖那(かねこせな)さんだ。
聖那さんは今年2021年3月に中学校を卒業を迎え、4月からは高校生としての舞台へ上がっていく。
大きな目標を達成し自信をつけて高校生活に向かっていく聖那さんと、母親の真紀さんにインタビューをお願いした。
成し遂げる力の秘密を探ると
聖那さんは技能検定を全て合格、メンタルを磨くためのアウトプットを成し遂げて8スターズクラブを達成したが、それは容易いことではなかったはずだ。
まず、技能検定ではバスケのスキルだけではなく土台から運動能力をも必要とする。
何度も失敗をして、なかなか思うようにできるようにはならずモチベーションを保ち続けることは難しい。
しかし、聖那さんはそれをやり遂げた。
技能検定での取り組みについて聞いてみたところ、
「1番難しかったのはテニスボールの1級で、一回落としてしまうともう一度初めからになり、連続でやるプレッシャーと難しさがありました。
まわりがシュートとかをしているときもひたすらやっていました。」
続けて、何か工夫したことやコツがあるのかと聞くと、
「とにかく、ひたすらやっていました。長いときで2時間半くらいはずっとテニスボールの練習をしていることもありました。」
と答えた。

ここから聖那さんの目標に対してひたむきに取り組み続ける集中力の高さがうかがえるだろう。
どうしてそこまで集中力を発揮できるのであろうか。
それは、聖那さんが出会った大きな存在と育った家庭環境に秘密がありそうだ。
出会うことが人生が変わる瞬間をつくる
聖那さんがここまでバスケットボールに夢中してくれたものは何か。
その原動力は、あこがれを抱く存在との出会いだろう。
小学2年生でバスケットボールを始めた聖那さん。
それまではサッカーのクラブに入っていたのだが、あることをきっかけに彼はバスケット少年へと道を変えていった。
そのきっかけとなったのは、聖那さんと同じミニバスチームでありバスケットボールスクールに通っていた先輩存在だ。
その先輩と聖那さんは同じ小学校に通っており、彼のバスケをしている姿をみた聖那さんは、
「あの人、かっこいい!あのスポーツをやりたい!」
とバスケに興味を持った。
そして、ミニバスケットボールを始めたという。
先輩の、学んだことを発揮する姿を身近で見たり、中学校でも活躍している姿を見て、聖那さんは先輩が通っているエルトラックのスクールに通うことを望むようになったが、その希望がすぐに叶うことはなかった。
時が来るまで目標に向けて練習をがんばり続け、ついに小学5年生でスクールに通い始めることができたという。
そこからの聖那さんは、5年生になり試合に出る機会が増えてきたときに周りのコーチ達から
「何かやってるの?」
「上手になったね!」
と変化が目に見えるほどの著しい成長を遂げていったそうだ。
「エルトラックのスクールに通うことでミニバスのチーム以外の選手と関わる機会が多くなり、それが自信になったのではないでしょうか。」
とお母さんは答えた。
その自信はプレーにも見えるようになり、周りから認められること、目標を一つ一つ達成していくことで本人の自信もついていった。
あこがれていた先輩は、年に一度開催されるERUTLUCのイベントである『プレミアムキャンプ』という特別な招待を受けるキャンプへ毎年のように参加していた。
招待を受けるための条件として、8スターズクラブ達成条件の一つである『技能検定』の成績が優れていることがあげられる。
聖那さんはプレミアムキャンプに参加したい一心で、日々技能検定に必死に取り組んだそう。
その積み重ねも彼の自信に繋がったに違いない。

変化はプレーだけではなかったとお母さんは続けて答えた。
「親から見てもけっこう真面目な子で、時間に対する意識が特に強くなったと思います。周りが遊びに行っても、絶対に練習を休むことはなかったです。
『シュート1本打たなかったことの重さがきっと試合に出てしまう。1点差で競ったときに休んだ1日がでてきてしまうかもしれない』と言っていました。
生活の中でも変化があり、昔はそうでもなかったんですが、バッシュや鞄、ボールの置き方はこう、ととてもキッチリしてきて、自分の信念があるようです。」
あこがれを抱く存在との出会いが彼のバスケットボールへの思いを育て、バスケットボールが大好きで、バスケットボールに対してとても真面目に向き合う姿を生み出したのだろう。
聖那さんはいつでも自分の目標となる存在を見つけ、それに向かって直向きに取り組んでいく姿が思い浮かぶ。

聖那さんに大きな影響を与えた人がもう一人いる。
マインドの面で影響を受けたのが、騎手の福永祐一さんとのことだ。
福永騎手が、負けることのできない試合の際にインタビューを受けたときのやりとりが、
記者「今日の試合はどうですか。」
福永騎手「不安はゼロ。楽しみしかない。」
このように答えたそうだ。
「不安を楽しみにできるマインドが心に刺さりました。」
と熱く語ってくれた。
不安や緊張を抱える場面は今までにたくさん経験してきただろうし、今後も立ち向かって行かなければならない。
緊張したときに聖那さんは「一回必ず大きく深呼吸する」という。
自分の平常心を取り戻し、リセットして不安や緊張と向き合うそうだ。
この不安や緊張との向き合い方もそうだが、何か一つのことをやり遂げようと取り組むときに、自分の中で『こうすればできる』というのを知っていることは強みとなる。それを聖那さんは知っている。
そして困難なことに繰り返し出会ったときにも平常心でやり遂げることができるのだろう。
人から信頼され身についた勤勉さと集中力
「何が欲しいのか、本人は何がやりたいのかというの聞いて、それを基本に本人が納得のいくようにしています。」
お母さんは家庭で心がけていることやその様子を教えてくれた。
「中学1年生のときに上手な先輩が履いている練習着がかっこよくて、どうしても欲しいと言って。
中学3年生になって試合に出られるようになったら欲しいということで、その2年間ずっと我慢して頑張り続けました。
2年後、3年生での試合を父に見せ、これだけ頑張っているから、買ってもいいよ!ということになりました。」
ここにも聖那さんの一つのことに集中して取り組み続ける姿があった。

お母さんは続けて、
「自分のやりたいことがブレないです。
欲しいものをずっとしつこく言ったりしませんが、私は本人の希望を聞いて待ってあげるようにしています。」
お母さんは子どもの可能性を信じて待てる強さを持っていた。
この忍耐強さは聖那さんにも引き継がれ、途中で辞めることなく一つのことに集中してやり遂げる力をメキメキとつけていった。
その支えとなっているのは、信頼。
親から信頼され、愛情溢れる家庭環境は聖那さんが安心して挑戦し続けることができる源になっているのであろう。
これから高校生になる聖那さんを、お母さんはこれからは違うアプローチで見守っていこうと決意していた。
「今まではちょっと近すぎたかな。本人が困ってそうなときには『大丈夫?』と声をかけて話を聞いていましたが、これからは本人がヘルプを出したり、何かを言ってこない限りはちょっと見守っていこうかな、思います。寂しくなるけれど。」
中学生の頃は親の助けを得なければならない場面も多く近くで見守ることが多かったが、これから高校生になる聖那さんに向けて、母親からの強く愛情に溢れた決意が伺えた。
自分の信頼残高を貯めることは人の信頼残高も貯めていく
聖那さんが8スターズクラブを達成する過程に、「子どものスポーツのすすめ」というメンタル面を磨くための教材をアウトプットするというものがある。
その中に「信頼残高」という話があるが、聖那さんはその話が最も印象に残っているという。
「普段からちゃんとしていないと、試合とかで1回のミスで交代をさせられてしまったりするので、この話を読むと普段からしっかりと取り組もうという気持ちがつきます。」
信頼残高とは、人はそれぞれ銀行を持っており、そこに預けられているのはそれぞれに対する信頼。
その信頼がどれだけ銀行にあるかというものだ。
それは、人に対する信頼残高だけではなく自分に対する自己信頼残高もある。
周りからの信頼残高は貯まっているか聞いてみるとまだ実感はないというような反応を見せたが、聖那さんの普段からの取り組む姿勢や直向きな姿勢は自分の気付かぬうちに周りからの信頼を得ているに違いない。
続けて自己信頼残高は貯まっているかどうかと聞くと、
「ある程度上達してくると、『ここまでできるようになったんだな』とは思います。」
と答えてくれた。
聖那さんの得意なプレーは「ディフェンス」だということで、なぜかと理由を聞いたところ彼らしい答えが返ってきた。
「オフェンスでは、うまい選手でも波があると思うけれど、ディフェンスでは頑張ったら頑張った分だけ自分に返ってくる。」
この考えからも彼の勤勉さを伺い知ることができるだろう。

聖那さんは自分で何かを達成していくということに長けており、できるようになったということで自己信頼残高を貯め、自分自身を信頼できようにすることがとても上手に思える。
その自己信頼残高は周りの人にも影響し、人からの信頼残高も貯めることができる。
コーチがプレーを見ていても感じるところがあるようで、
「スリーポイントシュートが上手いという印象で、きっと打ち込んでいるんだろうな」
と聖那さん自身は実感を持てないかもしれないが、コーチからの信頼残高は確実に溜まっていると言っていいだろう。
後輩達へ伝えたいこと
最後になりうる最高の自分はどんな姿かという質問を投げかけた。
「文武両道で生活ができて、バスケではチームをまとめて勝ちに導いていく」
という姿を彼は描いている。
目の前のことに直向きに取り組む聖那さんにとって今回「なりうる最高の自分」という究極と言える目標を言葉で再確認したことで一つの道がはっきりと見えたと思う。
究極の目標に向かって直向きに進んでいくその姿勢こそが彼に大きな自信と信頼を生み出し、成功へと導いてくれるであろう。
ERUTLUCで学んだ「最後まであきらめないこと」を胸に高校へと進学する彼が後輩達にメッセージを残してくれた。
「嫌なこと、辛いことがあっても諦めない心を持ってほしい。
途中でミスすると心が折れてしまうけれど、そこを折れないように、『このくらいできるまで今日は終わらない』とか自分で目標を持ちながらやると達成に近づいていくと思います。」
コーチへメッセージ
自分の技術を向上させたいと思ってエルトラックに入りました。
小学5年生の時から5年間でしたが、技術も高めることができたので、ありがとうございました。

おわりに
「ERUTLUCは聖那の人生を変えてくれた存在です。
メンタルが強くない子で、強く言われてしまうと心が挫けてしまいます。ミニバスもわいわいとした環境で、通っていたスクールのコーチ達みんな優しく教えてくれるし、すごく成長していきました。
そのままCPMクラブチームに入ってあの子にとって一生の宝物かなと思えるくらいです。もう、感謝しかありません。
子どものこの時期はあっという間でも、子どもにとってはすごく長い時間で、この一生に残る時間を過ごせたことで、心も体も成長させてもらった場所です。」
私たちERUTLUCは「より多くの子ども達になりうる最高の自分を目指すための環境を提供する」ということを第1の理念におき活動をしている。
今回聖那さんが8スターズクラブを達成し、その過程の中で親とともに成長していくことで自分自身の『なりうる最高』の姿を築き上げていくだろう。
そのような選手が育っていくことを、私たちはとても嬉しく思う。
もっと多くの子ども達が「満足した!」と思える人生を歩めるような基盤作りのサポートにこれからも取り組んでいこうと改めて思わせてくれたインタビューだった。

PROFILE
名前:金子 聖那(カネコセナ)
生年月日:2005年9月26日生まれ
出身:東京都東久留米市
PHOTO遠藤_航太郎 TEXT_萱沼 美穂