藤原さんとの対談7トップ

鈴木:「そこは大事にしたいなと思ってるところがありますね。なので、ホームページとかに「我々は人間性を育みます」とか書きたくないんですよ。

インターネット、SNSで情報を大量に入手できる時代。しかし、実際の経験が積み重なってこそ、成長の礎になるとのことだ。前回の対談では、シュートやドリブルが上手くなること以上に価値があるものについて話が進んだ。その価値について改めて鈴木が思いを語る。藤原氏は、例の塾の先生がなぜ出会ってよかった人なのか、またそこから見えてくる、ERUTLUCの価値について語った。

 

 

経験が積み重なってこそ成長の礎になる

 

鈴木:「最近、コーチ育成していても思うことなんですけど実際にそのコーチの経験や体験となってるかっていうのは、すごく大きいなと。

今の時代は本当にSNSでもなんでも名言のようなものとか、たくさん手に入るじゃないですか。

そうするとうちのコーチ達も、子どもたちに対してすごく理路整然と、それらしいことはもちろん言えるわけですね。

しかし、自分の身を通して、経験したことをある人がそれを語るのと、言葉尻だけSNSとかで持ってきた言葉をそのまま言うのとでは、やっぱり違うじゃないですか。伝わるところが。」

 

子どもたちだけでなく、若手のコーチを育てていても大きく感じるところがあるようだ。

メンターとか恩師とか言われる人たちとの出会いの経験、勉強してきたことを実際に自分自身でやってみた経験、そういった経験と経験が積み重なってこそ、成長の礎になっていく。

 

 

渡邊さんインタビュー画像06

毎週一緒にバスケをするという体験から何かを感じ取ってもらえたら

 

鈴木:「本で書いている理論の事とかそういう言葉だけじゃなくて、僕が一緒にスクールでやっている子たちは、毎週僕と一緒にバスケットするっていう体験の中から何を感じてもらうということに、そもそも僕の指導者としての価値があったりするのかなと。
だから僕たちはバスケットを好きになった子たちにとっては、バスケットの指導者としてその親御さんが選ぶだけの価値があるコミュニティーでありたいというか、そういう指導者の集団でありたいと思っています。」

 

 

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今響いているものやのめり込んでいるものがない子どもたちにきっかけを

 

話は、バスケットを好きになる前の子どもたち。普及活動プロジェクトできっかけを作ってあげたいような子達の話題へと移る。

鈴木:「やはりこの普及の活動って、ある種そうなる手前の、そもそも何にも今響いてるものがなかったり、のめり込めているものが無い子どもたちな可能性もあります。

親御さん的には、何かに打ち込んでほしいなとか、何か楽しいと思ってくれないかなとか、思っているかもしれません。僕らの普及のプレゼントが、さまざまな場所で行われることによって「あー、なんかスポーツって楽しいかも」とか「バスケットって、もっとやってみたいかも」みたいなところを、最初の役割として担えたらと思います。」

 

その子たちが、地域のチームだったり、スポーツの環境に足を運ぶようになったらと鈴木は願う。学校でも家でもない、”サードプレイス”という言う意味では、スポーツ活動の場所はすごく価値があると。

 

 

 

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“人に魚を与えれば1日で食べてしまう。人に釣り方を教えれば一生食べていける” 塾の先生から学ぶこと

 

ここまでの鈴木の話を聞き、藤原氏が続ける。

藤原氏「例えば中国のことわざで“人に魚を与えれば1日で食べてしまう。人に釣り方を教えれば一生食べていける”
という言葉があるじゃないですか。なので、例えば塾でいうと、解くためのメソッドを教えるということは、僕は魚そのものをあげることに相当するんじゃないかと思うんですよね。

どういう風にして自分なりの問題を解いていくための知見を広げてくれるのかっていうのは釣り方の話だと思うんですよ。

その塾の先生が凄かった理由の一つは、なんと教えないということなんです。」

例の藤原氏や3兄弟がお世話になっていた塾の先生の話だ。

 

 

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藤原氏:「例えば、数学の微分積分の話でいいます。微分積分は、中学時代の三角関数が大切になるんですよ。ただ、高校で微分積分をやる段階で、三角関数忘れているケースがあるわけですよ。それで微分積分やっても分からない。

その塾の先生は、直接三角関数自体の解き方を教えるんではなくて、『微分積分がわからないなら、中学の三角関数をやるといいよ』と、何から手をつければいいかだけのアドバイスをくれます。そして三男は自主的に三角関数をやってみようと取り組むわけです。

その子の力で一歩が無理なら半歩に。半歩も無理なら0.1歩でも良いんだよ。ただし0歩はやめようぜ。っていう風にしてくれるんです。0.1歩をずっと踏んでると、歩幅が0.3歩になる時があってそうすると、カメの歩みはいつかカエルになるし、いつかウサギにもなりうるんですよ。

一方周りの友達の一部では、一歩を踏み出すときに躓いてしまう場合もあります。その時に、一歩を半歩にすることが大事なのに、半歩に出来ないまま足踏みばっかりしていて、やがて歩みをあきらめてしまう。

どんなに遅れていてもカエルやネズミぐらいに家の子が進化していくと、その足踏みしている子や諦めてしまってる子の横を通り過ぎていくことができるという事が起きるんですね。

こんなことを教えてくれるようなその塾の先生ってのはもはや、勉強を教えていないです。勉強だけでない価値をくれます。」

 

 

 

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ERUTLUCの価値について

 

藤原氏は、塾の先生が勉強ではない別の価値を教えてくれるように、ERTULUCもバスケットボールではない別の価値を伝える組織だと続く。

藤原氏:「僕はERUTLUCさんにもそういう価値提供があると思っているんですよ。こういうことが世の中では非常に希少性の高いものであるということは何となく分かります。

ある人の言葉に、”あなたにとっての哲学”っていう言葉があるんですね。

それは、哲学の意味は何かって言う問いなんですよ。その問いは、現実に流されないためのアンカー、錨(いかり)だそうです。ごはんを食べていくとか、世の中で生きていくためには大変な事がいっぱいありますよね。それによって自分の魂を、売るというか、そこまで大げさかどうかは分かりませんけど、そこを妥協してしまう様な事って、世の中ありますし僕だって無いとは言えないですよ。でもこだわりたいですよね。っていうのがその現実に流されないためのアンカー、錨(いかり)であると。」

 

藤原氏はこの話がすごく心に響いたそうだ。自分自身の魂や理念のアンカーをしっかり持ち続けながら、大変なことがたくさんある現実に流されずに進んでいく。

 

藤原氏:「ERUTLUCさんはそういうことが出来る人たちが僕はたくさんいると思っているんですよね。」

 

 

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“大切にしたいからこそ軽々と口にしたくない

 

鈴木:「そのアンカーは大事にしたいなと思ってるところがありますね。

なので、ホームページとかに「我々は人間性を育みます」とか書きたくないんですよ。宣伝文句みたいに、軽く掲げられるような事じゃなくて、本当に真剣に取り組まなきゃいけない事なので。コマーシャルで使うようなレベルじゃない。って僕はやっぱり思いますね。

もしかしたら、本当に大事にしているんだったら、もうそういったものは、口コミとかで広がってくれるような本当にじわじわと広まっていくような広がり方がいいなと思っていました。

今回、藤原さんにそう言って頂けたように、実際に実践できるような組織でありたいと思いますし、今出来てるから、じゃあ5年後やってるかっていうとそれが保証されないのがこの難しさだと思うんですよ。次々コーチが入ってくる中で、みんなそういうのが分かって出来るようになるっていうのは、組織としての僕らの力だと思います。

もちろん僕ら至らないところがたくさんありますし、お叱りを受けながら活動してきています。それでも、ずっと身を引き締め続けてやっていかなきゃなと今のお話聞きながらすごく思いましたね。」

 

 

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▶︎第1回 出会い 〜バスケのコーチがなんで『ザ・ゴール』読んでるの!?〜
▶︎第2回 理念の深堀り 〜バスケットを普及してもらいたいという人たちがたくさんいるのならば、その思いを受け取って〜
▶︎第3回 長男がバスケを始めるまで 〜親としてすごく大事にしたかったことを伝えるために〜
▶︎第4回 次男のバスケットとの関わり方 〜子どもたちにとって、夢中になれることの価値とスポーツがもたらすもの〜 
▶︎第5回 あの時の言葉が今つながる 〜スポーツから社会性を学ぶという大きな価値〜 
▶︎第6回 家庭でも学校でもない場での大人との出会い 〜夢中になるきっかけ作り〜 
▶︎第7回 かつての地域コミュニティの役割になれたら 〜シュートやドリブルが上手くなること以上に大切な価値〜 
▶︎第8回 情報社会において、言葉尻だけではなくて 〜経験が積み重なってこそ成長の礎になる〜
▶︎第9回 プロジェクトをより価値のあるものにするために 〜子どもだけでなく、ご両親にも子育ての助けになる情報が届けば〜
▶︎第10回 子どもを育てるご家庭にむけて 〜コミュニティは子どもたちだけのためでなく〜
▶︎第11回 より価値のある活動を 〜選んでよかった、応援してよかったと思ってもらえる「場」にむけて〜

 

PROFILE
名前:藤原 浩(フジワラ ヒロシ)
所属:プルデンシャル生命株式会社PROFILE
名前:鈴木 良和(スズキ ヨシカズ)
所属:株式会社ERUTLUC 代表取締役
撮影協力_中田 和英・篠原 有紀子・高橋 真央
TEXT_加賀屋 圭子