藤原 浩 × 鈴木 良和 対談記事(第7回/全11回)かつての地域コミュニティの役割になれたら 〜シュートやドリブルが上手くなること以上に大切な価値〜

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鈴木:「昔でいう兄弟とかおじいちゃんおばあちゃんがいたとか、近所づきあいが強かったとかっていう頃にあったようなコミュニティとしての機能を、僕たちはバスケットボールを教えるスクールっていう中で、子どもたちとか親御さんに提供しているんじゃないかっていうのをすごく思うようになったんです。」

 

子どもは、出会った色々な人からの影響で、価値観を形成していく。

 

今回はドイツの社会学者ルーマンの「オートポイエーシス」などの話とも繋げて、話が展開していく。

 

シュートやドリブルが上手になること以上に大切な価値

 

鈴木:「僕らERUTLUCが持っている価値ってなんだろう?と考えた時に、シュートが上手になりますとか、ドリブルが上手になりますってことが価値だとは思えない。全くそこに価値なしということではないんですけど、それを学ぶ過程を通して学んだこと、のようなものが価値になるかと思います。これをいつも深掘りして考えています。」

 

話は、鈴木の幼少期育ったころの環境と、現代の子どもたちの環境になる。

鈴木:「僕が子どもの頃は、その辺の近所で悪さしていると、近所のおじさんに怒られるみたいな、地域で子どもを育てているみたいな雰囲気がありましたけど、今は例えば同じマンションに住んでる人たちに接点がなかったりとか、そもそも兄弟が少ないこともあったりして、子どもを囲む大人の数が減ってると思うんですよね。昔よりも。そこで、ルーマンという方が言っていた、『オートポイエーシス』という言葉があります。子どもは、自己生成するという話です。」

 

渡邊さんインタビュー画像06

子どもは出会った色々な人からの影響で価値観を形成していく

 

ニクラス・ルーマンは、ドイツの社会学者だ。1984年に主著『社会システム理論』(Soziale Systeme=社会の諸システム)を発表。社会システム理論にオートポイエーシス概念を導入した。

 

鈴木:「オートポイエーシスについて簡単に説明します。子どもは、出会った色んな人からの影響で、価値観を形成していく。それは、こういう風に生きなさいとか、こうあるべきであるって教わること以上に、身近な大人の模倣や、手本とした学び、そしてそこから道徳心などが養われていく。

同じ兄弟で、親が同じように教育してても、違った子に育つのはそもそもその子たちが出会う担任の先生が違ったり、出会う友達が違ったり、漫画やアニメのヒーローと出会うタイミングが違ったり、色んな影響が違うから、同じ影響を親から受けてても自己生成してて違っていくということです。」

 

渡邊さんインタビュー画像06

地域コミュニティの役割を果たしたい

 

鈴木:「子育てする上で、何を学ばせるかっていうことよりも誰に出会わせるかっていうことが、すごく大きいんだろうなって思ったわけですよ。だからそれは、僕らもそういう役割でいたいなって思っていたんですよね。」
藤原氏の子どもたちが、塾の先生に大きな影響を受けたように。

鈴木:「昔でいう兄弟とかおじいちゃんおばあちゃんがいたとか、近所づきあいが強かったとかっていう頃にあったようなコミュニティとしての機能を、僕たちはバスケットボールを教えるスクールっていう中で、子どもたちとか親御さんに提供しているんじゃないかっていうのをすごく思うようになったんです。」

 

鈴木:「僕たちはコミュニティーの役割機能を果たしていきたいっていうのをスタッフにも常に話しています。『僕たちは身近な大人としてどういう姿を見せるかが何を教えるかより大事だ。』って。技術論をどんなに正確に高尚にしゃべれてもそもそも人としてどうあるかっていう姿がイマイチだったらやっぱり価値はない。」

 

藤原氏のお子さんたちにとっての塾の先生との話が、鈴木が考えるコミュニティーの価値ととても繋がったようだ。家とも学校とも違うコミュニティーの価値を改めて実感する。

 

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恩師と言えるような存在の人に出会えるか

 

藤原氏:「今の鈴木さんの話を聞いて、僕が一番初めにピンと来るのは何かというと恩師という言葉なんですよ。やっぱり人って、生きていく中でできれば幸せに生きていく願いを持つ中で、恩師と出会えるかどうかってすごく僕は大きいことじゃないかなと思ってるんですね。」

 

第6回の対談で、藤原氏の三男がお世話になった塾の先生は、実は藤原氏自身もその先生の生徒だったそうだ。30年近く塾の先生をやっていて、その塾にお子さんを3人とも入れたそうだ。まさに、親が子どもに誰と出会わせるか、という話と繋がる。

 

藤原氏:「三男は言った通り、勉強はあまり得意でなかったけど、その先生は自発性を重視してくれる先生だったので、見守ってくれていた感じですね。ただ、例の高校2年生の覚醒のタイミングでは、先生も全力でサポートしてくれたので、彼は覚醒しました。どのタイミングでそれが訪れるかは人によって違うし、先生に出会ったことによってインスパイアされる子もいる。あるいはそれがERUTLUCさんとの出会いがそのような機会になったりする場合もあるわけですよね。

人はやっぱり社会に出てからも、人との関わりの中で生きていくってことがあった時に、どんな風に関わって行くかとういことが大切ですよね。なので、若い頃だったらどんな人に出会えるか、どんな集団にいるのかということはやっぱその子の人生にとって、すごく大きな意味があるという風に僕は思いますね。」

 

▶︎第1回 出会い 〜バスケのコーチがなんで『ザ・ゴール』読んでるの!?〜
▶︎第2回 理念の深堀り 〜バスケットを普及してもらいたいという人たちがたくさんいるのならば、その思いを受け取って〜
▶︎第3回 長男がバスケを始めるまで 〜親としてすごく大事にしたかったことを伝えるために〜
▶︎第4回 次男のバスケットとの関わり方 〜子どもたちにとって、夢中になれることの価値とスポーツがもたらすもの〜 
▶︎第5回 あの時の言葉が今つながる 〜スポーツから社会性を学ぶという大きな価値〜 
▶︎第6回 家庭でも学校でもない場での大人との出会い 〜夢中になるきっかけ作り〜 
▶︎第7回 かつての地域コミュニティの役割になれたら 〜シュートやドリブルが上手くなること以上に大切な価値〜 
▶︎第8回 情報社会において、言葉尻だけではなくて 〜経験が積み重なってこそ成長の礎になる〜
▶︎第9回 プロジェクトをより価値のあるものにするために 〜子どもだけでなく、ご両親にも子育ての助けになる情報が届けば〜
▶︎第10回 子どもを育てるご家庭にむけて 〜コミュニティは子どもたちだけのためでなく〜
▶︎第11回 より価値のある活動を 〜選んでよかった、応援してよかったと思ってもらえる「場」にむけて〜

 

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