藤原氏:「きっと、子どもたちにとっての目に見えない財産になる」
バスケットボールを教えながら、子どもたちが社会に出た時にでもきちんと生きていけるようになって欲しいと、藤原氏は自身の指導を振り返りながら語った。
必要な考え方、取り組み方、そういうものをスポーツを通して身に付けさせてあげられることは、その子にとって大切な価値であり、それが一生懸命なものであるか、熱中できるものであればあるほど、DNAに刻まれると思うとのことだ。
第4回では、藤原氏の次男のバスケットボールの関わり方と、その過程から夢中になれるものがあることの価値についての対談となった。
バスケットの楽しみかたのバランス
藤原氏の次男は、「お兄ちゃんがやるならやらない、お兄ちゃんがやらないならやる!」というお子さんだったそうだ。なので、お兄ちゃんが最初厳しそうでやらない、といったチームに「ぼくは入る!」と言った。当時保育園生だった。
藤原氏:「次男に、『君は入れないから。』って言ったら、そのチームのコーチが『特別に入っていいぞ』って言ってくれて。その監督は、息子が入れば、僕も自動的についてくるだろう、コーチをやってくれるだろうという狙いがあったようです。まんまとそれにはまって、20年ぐらいそこから先ずーっとバスケットのコーチに携わることに!!」
そこから次男のバスケットが始まる。
とはいえ、幼い子にとって、週3回の練習は少しずつ負担になってきて、次第に「行きたくない」と言うようになってきた。
藤原氏:「だけどラッキーだったのは、厳しいクラブも行くけどお兄ちゃんと一緒にエミネクロスに通ってたんですよ。小学校入る前からそっちで癒されてたと思います。それでバスケットを続けられましたね。」
それを聞いて、鈴木氏が、自身の運営するバスケットボールスクールに通う子どもたちの姿を重ねる。
鈴木氏「うちの生徒にも、癒しを求めて来る子がいますね。
それはこっちが良くてこっちが悪いという事ではなくて、厳しくて一生懸命なところと、自分の思うとおりにワーッとやれるところと、こういう楽しみ方のバランスってのも子どもたちには大事なのかもしれないですね。」
勝利だけでなく、自分たちで主体的にやれることに価値がある
話は、スポーツがもたらす価値について移行する。藤原氏の次男は、やめるとか、行きたくないと言っていた時期が通り過ぎて、自分たちが中心的にバスケットボールをやる時代が来て、変化を見せる。
藤原氏:「そうすると、勝てる事ばっかりじゃないと言うか、むしろ上の子達が少なかったので負け続けるんですよね。でも彼らは自分のバスケットボールを真剣にやれる機会がたくさん増えたので、むしろ負けたことが嫌だとかそういう事じゃなくて、自分がバスケを一生懸命できることが喜びにいつの間にか変わっていったんだろうなって気がするんですね。」
鈴木氏:「子ども達って、勝てるチームだから楽しいのではなくて、むしろ負けてたとしてもそうやって、
自分たちで主体的にやれるっていう事に価値があるんですね。」
夢中なものだからこそ刻まれるもの・スポーツがもたらすもの
藤原氏:「子どもたちの人生も、良い事ばっかり起きないわけですよ。例えば楽器で言えば、どうしてもここのコードが上手に弾けないってこともあれば、バスケットボールでどうしてもランニングシュートが入らないとかいう出来事に出くわす訳じゃないですか。
その時にそれをどういう風に考えるかっていうところがものすごく重要だと思ってたんですね。
シュートが入らないっていうのは、誰にとっても起きる事ですよね。
その時に『こんちくしょう!』と思ってやる子もいるけど教わって出来なかったらもう諦めて座っちゃうっていう子も世の中にはいますよね。でもどっちの出来事でもいいんですよ。
出来事から何を伝えられるか。社会にこの子が出てった時に、本当にその子がきちんと一人で生きていけるような子にしていくためには、そこに何か考え方とか、そういうものを身に付けさせてあげられること。
そう言う事は、その子にとってはすごい価値だと僕は思うんです。
これが一生懸命取り組んでいるものや、熱中できるものであればあるほど、DNAに刻まれるわけですよ。
小さい頃であればあるほど、これは子どもたちにとっての目に見えない財産にきっとなるなっていうのは、当時から薄々思ってましたね。」
スポーツが子どもたちにもたらすものの価値、それこそ夢中になっていればいるほど、その影響力は大きいものだ。次回は、スポーツを通して学ぶ社会性についての対談に進む。