信頼関係のレベルでコミュニケーションが変わる
相乗効果を発揮するためには、お互いの信頼関係の土台がとても大切になります。
しかし、その信頼度の高さによってコミュニケーションの質が変わってきます。
相乗効果が期待できるコミュニケーションとはどういったものでしょうか。
最もレベルの低い、信頼関係が全くない無い状態のコミュニケーションです。
自分の立場を守ることに重点を置いて、失敗や敗戦の原因を他のチームメイトのせいにしたり、誰かができていないこと、やっていなかったことを告げ口したりするような状態です。
あらゆる状況を前もって想定し、問題が起きたときの対応策をすべて明確にして逃げ道を確保しようとするものです。
こうしたコミュニケーションはWinーLose やLoseーWinの結果しか生み出さず、効果的ではありません。
効果的ではないどころか、さらに強く自分の立場を防衛しなければならない状況をつくり出す悪循環に陥ってしまうだけです。
お互いにさらに強く自分を守る状況を作らなければならなくなるため、チーム内でグループ化が進んだり、内部分裂などにも陥ります。
これは、ある程度成熟した人が普段接するレベルのコミュニケーションです。
お互いに対する尊敬はあるが、難しい衝突を避けたいがために、丁寧に話し合うものの、感情移入には至らりません。
例えば、練習中にお手本をお互いに譲り合うような精神状態のコミュニケーションです。
「私より〇〇さんの方がうまいから、〇〇さんにやってもらった方が良いと思います。」
といった具合に、人をけなしたり、悪口を言い合うようなことはないものの、相乗効果的な関係にはなっていない状況です。
「私たち、結構頑張ってるよね」
「〇〇さんはこういうのもできるし、練習も頑張ってるし」
このようにお互いを認め合っているようで、実はどこかで妥協をしている状況です。
この状態のコミュニケーションは、自立状態に近づいており、人をコントロールしようとはしていないものの、相互依存に近づくための効果的なコミュニケーションにはなっていません。
新しい創造的な可能性を、それだけで実現することはできません。
1+1=1、もしくは1.5にしかならないコミュニケーションです。
双方の当事者が譲り合ってしまうことになるのです。
1+1=3もしくはそれ以上になるためには、選手達がお互いに自分の立場を守ることを優先して、防衛的なコミュニケーションを行なっていたり、感情移入には至らず、要らぬ衝突を避けた打算的なコミュニケーションを行なっているうちは、最も強いチームワークにはなれません。
選手同士が高い信頼に基づいてチームの目標や目的を理解するようコミュニケーションをすることで、WinーWinの関係は成り立ち、チームはより高いレベルへと進化していくのだと思います。
それが、「相乗効果的コミュニケーションです」
練習での問題点などをいい方向へ議論したり、お互いをより良くするためのアイディアを考えたりすることができるのは、それぞれに信頼関係という土台があるからです。
こういった「相乗効果的コミュニケーション」を行えるようになると、チームはそれぞれが個別に何かをやるよりもはるかに大きな成果を上げることができるのです。
相乗効果的なコミュニケーションを選手同士が行えるようにするためには、選手一人ひとりが人のせいにしない、目的を持っている、大事なことを優先できるという習慣を持っていることが必要になります。
私たちバスケットボールの家庭教師の指導員は、練習の終了後に「フィードバック」といって、その日の練習についてコーチ達で話し合います。
練習での問題点はどこか、より良い練習にするための改善点、より良い練習にするためのアイディアを考えたりします。
「より多くの子どもたちになりうる最高の自分を目指すための環境を提供する」
「チームスポーツだからこそできること、教育に貢献する」
「世界で最もビジョナリーなコーチチームを作る」
という理念を掲げ、全指導員共通の目的のもと活動を行っているからこそ、その目的に向かうにあたって妥協をする選択肢はありません。
妥協をする「尊敬的コミュニケーション」ではより良い案が生まれないことを知っているからです。
指導員は7つの習慣の精神を学び、それを実践することで1+1=3の相乗効果を発揮することができることを知っています。
Win-Winの関係を築くためには信頼関係のもと他責と妥協は許さず、さらなる向上のため、子どもたちの成長のためより良いものを創造していく必要があるのです。
「今日の練習は選手もコーチもとても頑張っていたからよかった」というように、お互いの練習を称賛し合うことは大切です。
しかし、妥協を選ばずより良い練習について検討していかなければ、選手もコーチも成長が止まってしまうのです。
「学ぶことをやめたら教えることをやめなければならない」
サッカーの元フランス代表ロジェ・ルメール監督の言葉です。
この言葉は指導者として深く胸に刻んでおく必要があるでしょう。
相乗効果的コミュニケーションが難しい…
そう思っている人がいれば、
自分が成したい目的は何なのか。
相手のことを信頼し切れているのか。
自分を開示して、相手を理解しようとしているか。
自分の立場を守ろうとしていないか。
など、相乗効果的コミュニケーションをする上での土台を振り返ってみると、何か足枷になっているものが見つかるかもしれません。
お互いの目的がはっきりしていないままでは、相乗効果的コミュニケーションができるとは思いません。
理解して理解されている関係になれていないような、信頼できな人に対して、良いコミュニケーションを取れるとは思いません。
お互いの目的を知り、それを尊重することができるからこそ相乗効果的コミュニケーションが可能となり、お互いが高め合っていくことができるのではないでしょうか。
もしかしたら、チームの中でそれぞれ目的が違うことがあるかもしれません。
Aさんは優勝を目指している。
しかし一方ではバスケが楽しくできれば良い。
そんなときにはどうしたら良いでしょうか。
相乗効果的コミュニケーションは不可能でしょうか。
お互いの目的を考えてみましょう。
その目的を理解し信頼関係を築くことができれば、お互いの目的に向かうための相乗効果的コミュニケーションができるのではないでしょうか。
お互いの考えを尊重し合って試行錯誤することで、一人では考えもできなかった奇跡の第3案に出会うことができるのです。
それぞれの思いがある中、一人一人の選手がお互いに信頼される人間になることが重要です。
関係のない選手はいません。
チームで戦う以上、全員がそのチームという船の乗組員です。
全員がチームという船を遠く目的地へ進めるために役割を担うことができます。
選手同士が信頼し合えるようになることはとても大変なことですが、その困難な道を乗り越えることで、相乗効果的コミュニケーションによる強力なチームワークを手に入れることができるのです。