あの物語も相乗効果を生み出すお話だった
お互いが得意な面を発揮し、苦手な部分を補い合う。
一人ならば生み出せなかったことが、互いに力を合わせれば生み出すことができるという相乗効果。
この相乗効果、実は自然界のいたるところで見られ、私たち自身も経験をしています。
例えば「2つの植物の成長」「木材からできている建築物」「雁のV字型飛行」「楽器」「合唱」などが身近でわかりやすいと思います。
また、みなさんご存知のレオ・レオニ作「スイミー」という物語も、相乗効果を理解するためにはわかりやすいでしょう。
まず、「2つの植物の成長」では、2つの植物を近づけて植えると、根は重なり合い、土壌を肥やし、それぞれを別に育てるよりもよく成長します。
また、建築物は一本一本の木材を重ね合わせてできています。
丈夫な建築物は相乗効果で生まれる力を利用しています。
木材一本一本で支えられる重量の和より、重ね合わせたときの方が支えられる重量ははるかに大きくなるのです。
動物の例としては、V字に編隊を組んで空を飛ぶ雁の群れを見たことがあるでしょうか。
ある科学者の研究によると、あのV字飛行には理由があるそうです。
- 編隊で飛ぶと単独で飛ぶよりも71%遠くまで行ける。前方の雁が羽ばたくときに後続の鳥に上昇気流を作り出す。
- 先頭の雁疲れるとV字型編隊の後尾に回り、別の雁と交代する。
- 後ろの雁はガーガー鳴いて、前の雁を励ます。
- 群れの一羽が脱落すると、2羽の雁が援助と保護のために付き添って地上に降りる。この2羽は脱落した雁が回復するまであるいは死ぬまで付き添い、その後、新しい群れに加わるか、独自の編隊をつくって元のグループに追いつく。
いかがでしょうか。
このように動物や植物がお互いに助け合って生きている生態系が相乗効果の最も大きな体現といってよいでしょう。
小さな赤い魚の兄弟たちに混ざって暮らしていた、真っ黒な魚「スイミー」の物語では、
スイミーが広い海の中、大きな魚から襲われて兄弟たちを失い、それから見たことのない景色や知らない珍しい生き物たちに出会いながら強く賢く成長していきます。
そして、スイミーは大きな魚におびえる赤い魚の兄弟たちと出会い、みんなで力を合わせて自分たちよりはるかに大きな魚を追い出しました。
真っ黒な自分の特徴を生かして、スイミーは成し遂げたのです。
一人では成し遂げられないことを、それぞれの個性を使ってみんなの力で成し遂げたという、私も大好きな物語です。
植物や動物だけではなく、私たち人間も経験してきているはずです。
オーケストラやバンドでは、一人ひとりの力を合わせることによって素晴らしいパワーを発揮します。
また、合唱で一人ひとりの声から生まれるハーモニーや力強さは一人では生み出せないものです。
その時の達成感や充実感、気持ち良さは、一人で演奏や歌唱をしたときとは比べ物にならないほどのものでしょう。
その感動が相乗効果の偉大なところです。
この世界では一人で成し遂げられることはないといってもいいぐらい、多くの相乗効果が生まれているのです。
そして、重要なのはみんなそれぞれが明確な個性を持っており、その違いがあって初めて大きな成果に結びつくということです。
高いチームワークを発揮するためには、信頼関係のある中で、目的に向かって主体的に行動し、お互いの利益を考え支え合うという準備ができたチームが成し遂げることができます。
一人の個性はチームの中で発揮することでより大きなパワーとなるでしょう。