ミニバスのゾーンディフェンス禁止について その2

鈴木良和のブログ


皆さんこんにちは!

前回のブログ、ミニバスでのゾーンディフェンス禁止というルールについて取り上げましたが、様々な反響を頂きました。

今回は、ゾーンディフェンス禁止というルールについて批判的な意見について、詳しく取り上げてみたいと思います。

批判的意見の多くは、下記のような内容です。

①どうやってゾーンとマンツーマンを判別するのか?

→判別が難しいのだから、ルールにするべきではない。

②判別する審判やオフィシャルの育成はどうするのか?

→判別する人材が十分にいないと大会ごとに不公平が出たりするから、ルールにすべきではない。

③ゾーンディフェンスを指導したら、人を守ることを覚えられないというが、ゾーンでは個を守る力は伸ばせないのか?

→ゾーンでも個を伸ばせるし、ゾーンだからこそ学べることもあるんだから、禁止にするべきではない。

④そんなことどうでもいい。そんな議論しているよりもやることがあるだろう。

→だからゾーン禁止のルールなんて設定しなくても良い。

といった具合です。

これらは④以外はすべて正論だと思います。

①については、確かにマッチアップゾーンとマンツーマンの識別をどうするか、マンツーマンのヘルプボジションなどのポジショニングやスイッチディフェンスをゾーンとどう区別するかといったところは、グレーゾーンが大きくなりそうです。

厳密に識別することは難しいですし、ディフェンスの3秒ルールやスイッチ禁止など、何か極端な手段に出る必要が出てくるかもしれません。

そこにはまた新しい抵抗や、②の問題へとつながっていくと思います。

②もルールを細かくすればするほど、徹底するために育成が困難になってしまうので問題です。

③に関しても、ゾーンを指導しながらマンツーマンの要素を指導することは可能だと思います。逆もしかりです。

④に関してだけは、論点がずれてしまってます。

この件よりも重要度が高い問題は確かにあるかもしれませんが、そのこととこの問題が重要度として低いこととがイコールではありません。

力学としては非常に大きな変更です。

特に大きな母集団をマネジメントする場合、重要なもの一つだけを決定するまでに他の事の意思決定を遅らせることは、大きな損失につながります。

あらゆることを、可能な限り素早く決定し、行動に移していくことが重要なので、他に大事なことがあったとしても同時進行で進めるべき問題になります。

むしろ、これまで先送りにしすぎた議論です。

話がそれましたが、

①、②、③が正論であるならば、ゾーン禁止というルールに反対意見で良いのでは?と思われたかもしれません。

しかし、それでも賛成の立場は覆りません。

ゾーン禁止というルールは、ルールを施行してしまえばそれ自体でもうすでに意味を為してしまうからです。

たとえゾーンとマンツーマンの明確なラインが示せてなかったとしても、審判やオフィシャルの育成が不十分だったとしても、ゾーン禁止にはルールとして設定する意味があります。

再度書きますが、ルールを設定するということは、論理ではなく力学で捉えるべきです。

このゾーン禁止というルールが採用される一番の意味は、「淘汰」だと思います。

ルールがなかった頃に比べれば、

「安易なエリアゾーンしか指導しない」

「マンツーマンが指導できない」

指導者がマンツーマンを指導せざるを得なくなるというのが一番の意味であり、効果ではないでしょうか。

ルールは、破られます。

ルールを破るからには、マンツーマンらしいゾーンをするしかなくなります。

単なるエリアゾーンでごまかしてきたチームは、辱めにあうわけです。

なので、極論で言えば、ズルしてゾーン的な要素をマンツーマンに入れてくるような巧妙なチームが出てくるリスクは織り込み済みでルールを施行すれば良いのだと思います。

ゾーンがミニバス現場で悪者になる一番の理由は、育成の妨げになるという点です。

妨げになる理由は、安易なエリアゾーンが、ディフェンスの能力も伸ばさずオフェンスの成功体験も減らすからです。

つまりゾーン禁止というルールの一番の意味、目的は、ゾーンをきっちり禁止することよりもむしろ、「安易なエリアゾーンの駆逐」にあるのだと考えています。

これまでは、ゾーン禁止というルールがなかったため、指導経験の少ないコーチなどはより簡単に形になり、結果が出やすいゾーンディフェンスを採用しがちでした。

勝敗に直結するペイントエリア内の失点を手厚く簡単に守れるため、力がなくてもゴール下を固めてしまえば、相手が外のシュートを外してくれれば何とかゲームを成立させることができたのです。

これからは、ゾーン禁止という力学があるため、誰から見ても明らかなゾーンを使って勝利したら、「ルール違反のチーム」というレッテルを貼られます。

この力学に、ルール設定の意味があると思うのです。

もし、それでもゾーン禁止のルールを否定したい方がいたら、実は一つだけ否定的立場を肯定する方法があります。

それは、全国すべてのチームに優秀で指導力の高い指導者がいること。

これが担保されているなら、ルールでゾーンを禁止する意味はないでしょう。

残念ながらそれは不可能だから、多くの子どもたちのために、ルールを設定する意味があるのだと思います。

ただ、ここでもう一つ重要な論点になるのは、「能力差を埋める」というゾーンの効用です。

10人が試合に出なければならないミニバスのルールだと、少子化や子どもたちのスポーツ離れ、過疎化などでメンバーがなかなか集まらないチームだと低学年の選手たちも試合に出さなければなりません。

そうなると、ゾーンを禁止になってしまったら、その低学年の選手たちのところでどんどん失点してしまい、ゲームが大差になってしまう、もしくは低学年の子達がバスケを好きになれないかもしれないといったリスクが出てきます。

もちろん、マンツーマンで上級生を守ることやヘルプのポジショニンングなどを低学年に指導徹底することは困難です。

それでもやはり、この論点の土台にも勝利重視の観点が残っています。

そもそも、勝利に対する価値をそこまで重視しないのであれば、低学年が出て、マンツーマンで負けてしまっても「ゾーンなら勝てたのに」とはならないかもしれません。

バスケは接戦の方が面白い、という観点だけが、低学年問題についてゾーンを肯定化する唯一の意味でしょうか。

スペインのある地域では、ミニバスでは得点を累計せずに、ピリオドごとの勝敗でテニスのようにセット数で勝ち負けを競っています。

そういったルールを採用することで、低学年が出て戦うピリオドだけ負けのリスクが高くなるため、そこで大差で負けてしまっても他で挽回が出来ますし、大差がついてしまいゲームがつまらなくなるというリスクも軽減できると思います。

10人が試合に出るというルール自体は意味も価値もあるルールだと思うので、現代の実情に合った形にルールを上手に変えていけばよいのだと思います。

以上、ゾーンディフェンス禁止というルールについての僕の考えでした。

皆様からの様々なご意見、ご提案、参考になりました。ご協力ありがとうございました(^^)


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