『練習環境(人材面)』~日本とヨーロッパのスポーツ環境の違い②-1~

鈴木良和のブログ


僕が見てきたヨーロッパのクラブチームが、ヨーロッパのすべてではないので一概には言えませんが、僕が見た中ではヨーロッパの練習環境と日本の練習環境には大きな違いがありました。

その違いのうちヨーロッパだからこそ意味があることや、ヨーロッパだからこそできることもあるのですが、日本が真似るべき点もたくさんあると感じました。

そのいくつかをお話ししたいと思います。

まずは人材面から。

スペインのケースですが、どうやら主要なトップクラブの下部組織は

・年代ごとにチームを分けており、12歳から18歳まで、各学年12名ずつでチームを作っている

・各年代12人の練習を2名のスタッフで見る

・フィジカルコーチが複数名いて、年代に合わせてトレーニングを施す

・フィジオテラピストと呼ばれるマッサージなど身体のケアを行うスタッフがいる

・ドクターがいて、医学的なサポートもされている

・栄養士もいて、トップに行けそうな選手には食事サポートなども行っている

これだけの条件で長期にわたり育成された選手が日本にいるでしょうか?

もちろん、ヨーロッパのすべてのクラブチームがこんなに充実した状況なわけでは無いのですが、少なくともヨーロッパにはこういった環境で選手を育成する場があるわけです。

しかも、そこには将来性を買われた有望な選手達が集められ、ポテンシャルを最大限に引き出される練習が継続的にトレーニングされていきます。

選手の素質×指導の質×練習環境×経験でその選手の可能性が引き上げられていくとすると、ヨーロッパは良い選手ほどいい指導者の下で良い環境で良い経験が積めるようになっています。

しかし、日本ではどうでしょうか?

素質がある選手が指導者のいないチームで練習していたり、怪我をしても適切な処置がされなかったり、あまり質の高い経験がつめなかったり、

このような環境が多いのかもしません。

■アメリカは篩(ふるい)にかけて残った選手が上がっていく育成環境

■ヨーロッパはピラミッド型でより良い選手をより上へ上へと上げていく育成環境(高いところまであげてもらうほど良い環境になっている)

■日本は、神経衰弱のような感じで、たまたま選手の質と環境の質が当たった時だけ選手が育つような育成環境

これが、僕がアメリカの話を聞き、ヨーロッパを見て回りながら感じた育成年代の違いです。

ジュベントゥではメディカルチェックは1人のドクターの診療所で1年に一回行っており、エストゥディアンティスの場合はクラブの施設が学校の中にあり、その中に診療所もあってそこがクラブのかかりつけドクターになっているそうです。

スペインのクラブの選手たちは育成年代から医学的なサポート体制がある中で練習しています。

余談ですが、ジュベントゥでは身体測定を3ヶ月に1回行っているそうです。

クラブやスクールのスタッフはクラブのOBが多いそうで、その方がクラブの理念なども浸透させやすいと言っていました。

・組織は人なり

・偉大な組織の特徴は、理念の徹底と企業文化の浸透こういったビジネス界で言われるような組織論からすると、ヨーロッパのクラブ環境の方が、日本の育成環境よりも優れていると感じました。

皆さんはどうお感じになりますか?

日本にも、すばらしい指導者、先生方がいらっしゃいます。

しかし、せっかくその先生がそこに組織文化を作り上げても、異動があるためまた一から組織を作り直さなければならないというケースがたくさんあります。

また、その先生が作り上げた組織文化は、次の先生が文化の継承をしているわけではないため、多くの場合失われます。

そうやって、作られては壊されるの繰り返しで、人が育まれる環境が熟成しないシステムになっているのではないでしょうか?

ただ、日本のすべてのチームをヨーロッパのトップクラブのような環境にしなければならないというわけではありません。

それは難しいと思います。

やはり、その地域その地域に優秀な選手が自然と集まるような旗艦クラブがあり、そこに優秀な指導者とトレーナーやドクターがいて、継続的に質の高い練習環境を提供していくことが長期的な選手育成につながるのではないかと思います。

次回は、競争環境の違いについて考えてみたいと思います。


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