『リーグ戦形式』~日本とヨーロッパのスポーツ環境の違い①-3~

鈴木良和のブログ


今回も日本とヨーロッパのスポーツ環境の違いについてお話していきたいと思います。

※写真はドイツに勉強に行った時の一コマ

今回のテーマは「試合環境」についてです。

ヨーロッパの育成年代の多くは「リーグ戦形式」と「トーナメント形式」が混在している環境のようです。

日本の中学生年代の大会はというと、

(秋)新人戦・・・地区大会から県大会までトーナメント形式・県大会までで終了

(春)春季大会・・・地区大会から県大会までトーナメント形式・県大会までで終了

(夏)総体・・・地区大会から全国大会までトーナメント形式・ブロック大会・全国大会まであり

このように、バスケットボールの現場においては、すべての公式な大会がトーナメント形式しかありません。

僕の知る範囲での話なので、全国には地区大会ではリーグ戦を行っているところもあるかもしれません。

しかし、そのリーグ戦もおそらくトーナメントの上位進出を決めるための形式で、一定期間を通して同じチームと数回戦うような形ではないと思います。

■リーグ戦形式のメリット

では、ヨーロッパの育成環境でとり入れられているリーグ戦形式というのはどんなメリットがあるのでしょうか?

成長可能性がある選手があちこちに点在しているような状況の育成年代にとって、トーナメント形式しかないというのは、早熟型が多いチーム、将来の可能性より、現段階での能力が高いメンバーが極端に経験を高めていくようなシステムになってしまいます。

練習試合と公式戦では成長・経験の質が違いますから、4ピリオドのバスケットボールという競技を審判がついた状況でしっかりと経験できる機会が、勝っても負けてもたくさんの選手に提供できるというのがリーグ戦のメリットです。

②拮抗したゲームを増やせる

一般的にリーグ戦を行う際には、レベル分けされたリーグがいくつか用意されていて、各チームはそのレベルに合ったリーグに登録します。

そのため、100点ゲームのような極端な力の差があるゲームが少なくなります。

バスケットボールは僅差の競り合いの中にもっとも成長のチャンスが生まれます。

拮抗したレベルでリーグを行うことで、今はまだ未熟なチームでも将来に向けて経験を積みやすいですし、おそらくバスケの楽しさ、醍醐味を感じる機会が増えるのではないかと思います。

少なくとも、新人戦、春の大会、夏の総体とすべて一回戦で100点ゲームで負けて引退するような環境は、普及に適しているとは思いません。

③若い指導者の成長を促せる

ヨーロッパの指導者の方々とミーティングをしているときに聞いた言葉です。

「トーナメントは、老練な指導者が勝ちやすい。トーナメントしかない環境では、老練なコーチがなお経験を積んでいき、若いコーチは経験を積む機会を失い続ける」

コーチも試合の中で成長します。

リーグ戦形式の試合は、若く未熟な指導者が敗戦から学び、修正し、成長する機会を増やすことになります。

それは選手達にとっても同じで、負けても次がありなおかつ同じチームと再戦することが決まっていれば、修正・改善をしてその成果を確認しやすくなります。

その過程が「ゲーム感」を養う土壌になると思います。

■トーナメント形式がなくなれば良いという話ではない

ヨーロッパでもトーナメント形式の大会もあります。

やはり、世界大会やオリンピックがトーナメント形式である以上、競技力向上には一発勝負の緊張感、ピーキング、様々な要素が欠かせません。

さらに、ブロックや全国で強豪同士戦う事にも大きな意味があると思います。

ジュニア期の年代でこうして遠方同士が集まってリーグ戦を行うことは様々な負担が大きくなるため、やはりブロック大会や全国大会はトーナメント形式でマネジメントするのが正解なのだと思います。

このリーグ戦形式とトーナメント形式の良い面を最大化し、悪い面を補い合うように大会を組み立てて行けば、育成年代にとってもっとも理想的な競技環境が作っていけるのかもしれません。

■なぜ、日本のジュニア期の現場にはトーナメント形式の大会しかないのか

リーグ戦はマネジメントが大変だからだと思います。

試合数は多くなりますし、会場の確保なども大変です。

日本のチームは勤勉なので、一度試合に出かけたら何試合も経験して帰ってきたいと考えます。

スペインで見たリーグ戦は、その会場でU-12やU-15、U-18の試合など様々な年代の試合が組まれているので、同じチームが一日に複数試合することはありませんでした。

一試合だけして帰るのが当たり前のようで、トップチームやナショナルレベルでも一日に複数試合を戦うことは無いことを考えれば、その一試合にピークを合わせ、その一試合で力を出しきる訓練をしているとも言えます。

もしくは、欧米の子ども達は負けず嫌いで、一試合戦ったら二試合目が出来るほど余裕が残っていないのかもしれません・・・。

この理由は定かではありませんし、ここに関しては一日に何試合も行うメリットもあると思うので一概には答えを出すことはできません。

少なくとも日本でリーグ戦形式が浸透する過程では、一日に一試合だけ集中して戦い、あとの時間は家に帰って家庭との時間、もしくは友達との時間、もしくは自主練などに充てるような試合スタイルを浸透させていかなければならないと思います。

■日本でもチャレンジは始まりつつある

現在、ジュニア期にリーグ戦形式を広めていこうと、EURO BBA LEAGUEというリーグ戦が都内を中心に開催されています。

トーステンロイブル氏のユーロバスケットボールアカデミーという活動の名前を冠に、ヨーロッパスタイルのリーグ戦形式を日本でトライしています。

※EURO BASKETBALL ACADEMYのヨーロッパツアーの一コマ

ERUTLUCももちろん運営を応援しており、我々が指導を担当しているヨーロッパスタイルのクラブチームもリーグ戦に参戦しています。

U-14の試合に小学生が参戦していたり、部活を引退した中学三年生たちがU-15として試合をしていたり、非常に面白い環境になっています。

これから全国でこういった動きが加速してくるはずです。

日本が世界に近づくために、ますますアクションを起こしていきたいと思います!!

次回は、試合、大会でのルール設定の違いについてご紹介したいと思います。

ヨーロッパの育成環境はルールを柔軟に変更し、子ども達の育成を促しています!!


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