JUNIOR BASKETBALL SUMMIT 2019 レポート【第五弾】

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第3部「世界選手権を経て感じた、育成年代のコーチングの問題提起-実戦編」

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ディスカッション:U15年代で取り組んでおきたいこと

【期待値の高いシュートを打つために】

アルゼンチンの育成資料から考えると、マンツーマンディフェンスを前提にU15からヘルプ&ローテーションの指導が始まります。

ここで重要となる要素は、「アドバンテージを見つけ続ける」ことです。

オフェンスの最終的な目的は、期待値が高いシュートを打てることです。

ゴール下のショットやフリースローが期待値の高いシュートと言えるので、それらに持っていくためにはペイントへのアタックが重要となります。

ディフェンスがヘルプ&ローテーションで対応してくることより、オフェンスではより期待値の高いシュートが打てるように、1対1を中心にしてオフボールスクリーンも含めて指導していきます。

アドバンテージを見つけて期待値の高いシュートを打つためのポイント
  1. クローズアウトを見つける
  2. クローズアウトが生まれる状況というのは期待値が高いシュートを打てる可能性が高くなります。
  3. ギャップを見つける
  4. そのクローズアウトを生み出すためにはディフェンスとディフェンスの間であるギャップが広い場所を攻め込んでいくとディフェンスが大きく動くため、クローズアウトが生まれやすい。
  5. ミスマッチを見つける

U15年代において4アウト1インを使って、オフボールスクリーンを取り入れながらどうやってアドバンテージをつくるか、または広げるかということに取り組んでいきます。
ドリル案
「3ユニットトランジション」

ユニット1:ポイントガード
  1. リバウンダーからボールをもらう
  2. 【パターン1】サイドライン側に位置していたらミドルラインに向かってボールをもらいにいく。

    【パターン2】真ん中に位置していたらサイドに広がりボールをもらう(ボールサイド)

  3. ドリブルプッシュ
ユニット2:2番3番ポジション

両ウイングを走る

ユニット3:4番5番ポジション

・リバウンドを取った4番5番はガードへアウトレットパスを出し、トレーラーへ(4番5番のうち、遅れている方がトレーラーへ)

・リバウンドを取っていない方の4番5番プレイヤーは攻め込むリングに向かって走る(4番5番のうち、先行できる方がリングへ向かう)


【内容】
  1. ユニット1のプレーヤーからユニット2へパス
  2. ドライブ&キックアウト
  3. ローテーションディフェンスに来たところを隣スペースへエクストラパス
  4. 3Pショットかセカンドドライブを選択する
ウイングドライブ
リムランナーへパス
ドライブキックアウト

【ディフェンスをつけて】

※ポイントガードはパスが出せなかったらドリブルプッシュから1対1をする。

※クローズアウトをつくり出し、そこから期待値の高いシュートへつなげる。

3ユニットトランジションの良いところ

役割が決まっていることで判断基準がシンプルになり、それに伴ってプレーの速度も速くなる。

つまり、考える速度はプレーの速度に等しい。

【3ユニットトランジションドリル指導のポイント】
打てるし抜ける状況がある場合

この状況では、抜く選択をするのを育成年代ではお勧めしたいです。

育成年代ではトランジションのなかでディフェンスが完璧なポジショニングをとれることは稀で、空いてたら打つという判断であればほとんどが打ててしまうということもリスクとして考えています。この年代の運動経験としては、ペイントに侵入してからのフィニッシュ、判断の経験値を積むことは価値が高いと考えています。

ただし、24秒の残り時間が少ない状況では、抜ける、打てる状態であれば打つ判断ができるとよいでしょう。

規律は教える

その規律の中で判断する要素を残します。

U14~15どうやって規律を整えて、判断を促していくかが重要となるでしょう。

判断の強度を上げる

それぞれの役割は基本的に守るが、誰かが遅れていたり早かったりしたらスペースを整えるためにポジションを入れ替えて対応できるようにします。

スピード感がある中での判断をトレーニングする

セットプレーからアドバンテージを作って攻めることより、よりスピードのある中でアドバンテージを作り出しスピーディーに判断していくトレーニングを育成年代でやっておく必要があります。

ディフェンスに役割を持たせる

リムランナー:ペリメータへ入られないようにチェック・ザ・カッターをする

ウイング:簡単にボールを前に進ませたくないので出来る限りディナイで牽制する

ポイントガード:時間をかけさせたいのでたくさんターンさせる

トレーラー:自分のマークがボールより後ろにいればポイントガードに時間をかけさせるように邪魔をする。


ディフェンスの強度が上がることでより判断の強度も上がり、ゲームライクなドリルになっていきます。

1から全て教えるとなると時間が足りない

全体で解決できていることは指導する必要はなく、その中で課題を抽出し、その課題を分解して取り組んでいくのが良いでしょう。

だからこそ、U12までにどのようなことを積み上げていくかが大切であり、U13、14と積み上げていく内容が大切となります。

育成年代の環境で考えなければならないこと
問題となっているのは、U15を指導するコーチが13、14もまとめて指導していくという環境の中で、その積み上げが大切な年代で積み上がっていないこと。


ディスカッション:アンネセサリーヘルプとオフボールスクリーン

【不必要なヘルプをしない】

オフェンスはより期待値の高いシュートを打つためにアドバンテージを見つけようとします。

そして、ディフェンスはアドバンテージを作らせないように守ろうとします。

ディフェンスではボールマンが抜かれてこなければヘルプディフェンスをする必要がありません。

しかし、ボールマンが抜かれてしまえば、期待値の高いシュートを防ぐためにもヘルプが必要となり得ます。

ここで、ディフェンスではそのヘルプが必要なのか、不必要なのかを判断する力が必要となるでしょう。

まず、ディフェンスのポジションは自分がマークしているプレーヤーの位置やボールマンの位置によって決めます。

ボールマンが抜かれてこないのであれば不必要にボールマンに寄る必要はありません。ヘルプができるように考え、準備をしておく必要はあります。

ヘルプが不必要と判断する、このことを「アンネセサリーヘルプ」と呼びます。

育成年代では、「アンネセサリーヘルプをしない」つまり、「不必要なヘルプをしない」判断力を身につける必要がある。

このように、ディフェンスの質が上がってくることによってオフェンスの強度も上がり、
オフェンスはそのような強いディフェンスに対してもアドバンテージを作れるようになるとよいでしょう。

ドリル案
アンネセサリーヘルプの判断5対5

【内容】
  1. ウイングへエントリーし、ウイングプレーヤーはミドルドライブ。
  2. ウイングプレーヤーのディフェンスはボディアップでペイントエリアへ侵入されないように防ぐ。
  3. ライブの5対5へ(トランジションゲーム)

※ウイングの1on1の部分でオフェンスやディフェンスに負荷をかけることで、抜かれやすさ、止められやすさをコントロールすると、ヘルプの判断力を磨くことができる。

※ヘルプする必要があるという判断と同じだけ、ヘルプする必要がないという判断も重要。

※ヘルプによる必要がないのにボールによってしまうと、相手にアドバンテージができてしまうことを理解する。

アンネセサリーヘルプ

アンネセサリーヘルプの判断基準

ヘルプが必要か不必要かは、抜かれてから判断しては遅い。

能力差と状況で推測、判断していく。

この推測、判断の経験を積み上げ、磨きをかけていくことが必要とされる。

オフェンスの指導点

ボールマンがアドバンテージを作れても、オフボールが重なっていたり適切なスペーシングをとれていないと、ディフェンスは2人を1人で守れてしまいます。

アドバンテージを作り続けるためには、オフボールのスペーシングが非常に重要となる。


【強度の高いディフェンスからアドバンテージをつくりだすオフボールスクリーン】

育成年代ではもっとも優先すべきなのは、ボールマン1対1です。

しかし、強度の高いディフェンスによってできないという状況が出てくるでしょう。

そこで、次に優先されるのは、オフボールマンが自力でディフェンスとのアドバンテージをつくり出すことになります。

では、

・ウイングのディフェンスのインテンシティが高くてボールをもらえない

・リムランナーがバンプされている

そのような厳しい状況でオフボールマンが自力でもらえないといった、より強度の高いディフェンスにあったときにどうすればよいのでしょう。

そこで、「オフボールマンが他力で」アドバンテージをつくり出すことをしていきます。

ドリル案
オフボールスクリーンからボールミート(スタッガードスクリーン)

【内容】

・スクリーナー

コーチ①ゴールの真下

コーチ②ウイング3pラインより一歩内側

※立ち位置、体の角度を工夫してぶつかるようにする

※体の向きを変えた時に3pラインをまたぐようにする

※ダイブはユーザーと逆の方向に動きスペースをとる


・ユーザー

ウイングからスクリーナー2人を使ってボールをもらう

スタッガードスクリーン

【1つ目のディフェンスルール】

後ろからついていき(シャドウ/フォロー)、パスコースに入ってディナイができるようにする。

※パサーの動き※

パスのスペースをつくるために逆サイドへドリブルしながらチャンスを伺う

※レシーバー※

①内側へアタックする(カール)

①大周りをして(ワイドカール)キャッチandショットを狙う

※フォローしているディフェンスを見る

※スクリーナーのダイブへのパスも思考に入れる

カール

【ディフェンスが遅れている場合】

ディフェンスが1人目のスクリーナーにかかって遅れているようなら、2人目のスクリーナーはもう一歩手前へ位置を変えてスクリーンをして、さらにディフェンスを遅らせる。

カールすると遅れてきたディフェンスにとって守りやすくなってしまうため、ストレートに出てディフェンスの状況によってプレーを選択する。

※パサーはボールマンのドライブに対してドリフトやドラッグを選択してグッドスペーシングを保つ。

スクリーナー一歩手前

【2つ目のディフェンスルール】

先廻りをして、スクリーナーの内側に入る。(チート)


・ユーザーの動き

フレアをしてボールから遠ざかる


・パサーの動き

レシーバーとのスペーシングを保ちながらパスの距離を詰める

チート


【戦術の作り方】

育成年代で戦術をデザインする時に「どこでアドバンテージをつくるか」ということを考えていきます。

選手の身体的特徴や能力の特徴によって変えていくとよいでしょう。

ただ、ここではミスマッチを期待しない設定にします。

また、1対1のアドバンテージを作ることを目的としてオフボールスクリーンを採用します。

ドリル案
スタッガードスクリーン5対5

【内容】
  1. ボールマン:ドリブルプッシュ
  2. ユーザー:オフボールサイドのウイングランナー
  3. セカンドスクリーナー:ボールサイドウイングランナー
  4. ファーストスクリーナー:リムランナー
スタッガードスクリーン基本

【スタッガードスクリーンの派生】

フロッピーアクション(左右でスタッガードスクリーン)

ファーストスクリーン:2番3番がゴール下でスクリーンを掛け合う(ここではボールサイド側がスクリーナーとなる)

セカンドスクリーン:リムランナー、トレーラー

フロッピーアクション

【その他アイディア】

UCLAカット:ポストがパサーにスクリーン、パサーはスクリーンを使ってボールサイドカット

マッカビアクション:トレーラーがトップでボールをレシーブしたときに、ぺリメーターの選手がバックカットをしてスペースを整える。

※そもそもウイングプレイヤーにディナイをしてない時にはバックカットをしてもアドバンテージは生まれないので、ここでオフボールスクリーンを使ってアドバンテージをつくりだす。

その他アイディア

【ローポストエントリーのスペーシングの基本】

  • 2ガードポジション
  • オフボールサイドウイング
  • オフボールサイドコーナー

ローポストプレイヤーが4人のディフェンスが見えて、どこからトラップに来られても、クローズアウトを作ることができる。

ローポストエントリースペーシング

【戦術について考えておきたいこと】

上のカテゴリで採用している戦術、トレンドをそのまま取り入れるのではなく、
それらを理解し、その年代に合わせた規律の中でやっていくのがよいでしょう。

オフボールスクリーンが入ってくると、戦術的な選択肢はどんどん拡がっていきます。

その選択肢をどこまで規律を整えて選手たちの選択肢に入れてやっていくかを考える必要があります。

選択肢が広いことが目的ではなく、使っている戦術の中でディフェンスを見てアドバンテージを見つけられているか、ディフェンスを見て自分のプレーを選べるかが大切です。

【育成年代のコーチングで大切にしていきたいこと】

U15までに積み上げてきたことがU16から上のカテゴリーでの成長を左右します。

U16以降には、アルゼンチンの育成計画を参考にするとやるべきことがとても多くあります。

U16以降を担当するコーチの指導力は、U15以下でやるべきことを徹底するためにとても重要だということです。U16以降の短い期間でもレベル高く戦術的に指導できる環境を整えていくことによって、U15までに個々のレベルアップに集中できるのです。

選手育成は断片的にではなく、年代を超えて縦断的に計画していく必要があります。U15までに個のレベルアップよりも戦術が優先されるような環境であったならば、U16以降でも戦術的な内容以上に個々のスキルに割く時間を多くする必要がでてくるかもしれません。

そのカテゴリーの時に勝てばいいという考え方ではなく、前後のカテゴリーで連携して選手を育成する環境を整えていくことがとても重要になってくるのです。

遂行力でレベルアップを評価すること

選手の課題解決能力を磨いていくこと

選手のリーダーシップオーナーシップを育てていくこと

まとめとなりますが、この3つが今回のイベントで強調したかったポイントです。これらを大事にしながら、育成年代のコーチングを深めていきたいと考えています。

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