第347号 イソップ物語から学ぶ
アリとキリギリス
北風と太陽
うさぎとカメ
金の卵を産むガチョウ
どれも一度は聞いたことがある有名なお話ですね。
どんなお話か覚えていますか?
今日はこの中の「金の卵を産むガチョウ」のお話を紹介します。
この物語を紹介するのも、スポーツと関係する、ある原則を上手に表しているのです。
その原則は、ひとつの価値観につながり、習慣にしていかなければならない側面でもあります。
では、ここからお話の紹介です。
——————–
ある貧しい農夫が、飼っていたガチョウの巣の中にキラキラと輝く黄金の卵を見つけました。
最初は誰かのいたずらだろうと思って捨てようとしましたが、考え直し、念のために市場まで持っていくことにしました。
すると、その卵は純金でした。
農夫はこの幸運を信じられませんでした。
そして、翌日も同じことが起きました。
来る日も来る日も農夫は目を覚ますや否や、ガチョウの巣に走っていき、新しい黄金の卵を発見しました。
やがて、農夫は大金持ちになりました。
ところが、富が増すにつれて欲が出て、農夫はせっかちになっていきました。
一日一個しか産まれない黄金の卵が待ちきれず、ついにガチョウを殺し、腹の中の卵を全部一気に手に入れようと決めました。
いざ、ガチョウの腹の中を開けてみると、中は空っぽでした。
黄金の卵はもちろんなく、そのうえ黄金の卵を手に入れる資源さえも、農夫は失くしてしまったのです。
農夫は、黄金の卵を産み出してくれるガチョウを殺してしまったのです。
————————
黄金の卵は目標を達成することや結果を出すことであり、ガチョウはその結果や目標を達成するための資源となるものです。
農夫は結果を追い求めるあまりに、その結果を生み出す大切な資源であるものを失ってしまいました。
結局、資源をないがしろにしたことで結果を生み出すことができなくなってしまいました。
スポーツ選手として成功するということには2つの側面があります。
その2つは
「目標を達成すること、結果を手に入れること」と
「結果を手に入れるために使う資源、あるいは能力」です。
金の卵が「目標を達成すること、結果を手に入れること」を表し、
ガチョウが「結果を手に入れるために使う資源、あるいは能力」を表しています。
成功するためには、この2つの側面のバランスをとれていることが重要となります。
まず、目標を達成する、結果を出すためには、それを達成するために必要な状態を作ることが大切となります。
その達成するための資源の例えが、「ガチョウ」です。
ガチョウの世話をおろそかにして、黄金の卵ばかりを追い求める生活をしていくと、やがては黄金の卵を産み出してくれるガチョウという資源を失ってしまうことになるでしょう。
逆に、ガチョウの世話ばかりして黄金の卵のことを全く考えなければ、自分自身も生活できなくなり、ガチョウを育てる資力を失ってしまいます。
バスケットボールで言い換えると、
結果を残すために練習は一生懸命やるものの、その練習の資源となる身体に必要なケアを疎かにしてしまうような状態です。
使った筋肉へのケアをしないと怪我をしやすい身体になってしまいますし、バランスの良い食事をしっかり摂っていなければ、練習に全力の状態で取り組むことができない身体になってしまうでしょう。
また、バスケットボールばかりして、自分の知性を磨いたり、心や考え方を磨いていかないと、コーチから言われたことが理解できなかったり、周りと協力できないような人間になってしまうでしょう。
このように、結果を残すことや上手になること、そのために必要な能力を高めること、状態を作ることのバランスがスポーツ選手にとってもとても重要になるのです。
こういったバランスをP/PCバランス(performance/performance capability balance)と呼びます。
これは、スポーツ選手にとっての原則の一つです。
一流選手になるためには、一生懸命練習し、ストレッチや睡眠、食事など身体のケアにも意識を高くして全力で練習を続けられるような身体を作ること、体調を整えることにも全力を尽くし、これらをバランスよく取り組んでいくことが必要なのです。