第2部「課題解決能力の向上ーU12で推奨したい技術と戦術-実戦編」
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- 第一弾「世界選手権を経て感じた、育成年代のコーチングの問題提起」
- 第二弾「課題解決能力の向上ーU12で推奨したい技術と戦術」
- 第四弾「世界選手権を経て感じた、育成年代のコーチングの問題提起-講義編」
- 第五弾「世界選手権を経て感じた、育成年代のコーチングの問題提起-実戦編」
- 保護者講習会「U12からU15年代の子どもたちに最も重要な環境は何か」
- 特別講習アルバルク東京アカデミーマネージャー兼U15ヘッドコーチ塩野竜太コーチによる「育成年代のコーチング論」
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ディスカッション:「スペーシングの重要性―5アウトスペーシング―」
ドリル案
「オールコートトランジションゲーム」
【内容】
- 5on5の形で行う。
- ゴールの下で2チーム入り乱れて小さな円を描きながらグルグル走る。
- ボールを出す人が、ゴールボードにボールを当ててリバウンドする状況を作る。
- リバウンドをする。リバウンドを取ったチームがオフェンス。もう片方のチームはディフェンス。(トランジション)
- リバウンダーがボールを取ったら、オフェンスの残りの選手は、逆サイドのゴールへ走る。
- リバウンダーは、そのままドリブルプッシュをする。
- 残りの選手のうち、ゴールに一番近い2人がコーナーへ走る。
- 残り2人はウイングへ走る。
- ドリブルプッシュをしているリバウンダーは、そのまま自分でフィニッシュorキックアウトを選択してシュートまで向かう。
「オールコートトランジションゲーム」ドリルのポイント
- ランナーは、トランジションの段階で自分が自分のディフェンスよりも前にいる時だけ、ゴールに向かって走る。
- 自分よりも前の位置に自分のディフェンスがいる場合は、そのディフェンスから離れるようにして走っていく。
- ウィングに向かう選手は、先行してコーナーに向かった2人にディフェンスが付いていき、かつ、自分のディフェンスが自身の位置より後ろであれば、ゴールに向かって走る。
- ペイントエリアに入ってシュートを決めきることを優先する。(1on1で勝負する)
- ペイントエリアに近くもなければ、3Pにもならないような位置(ロング2P)でのシュートを打つのを避ける。
【育成年代から意識させたい、しておきたいこと】
U12の段階からなんとなくゆっくりボールを運んだり、プレーさせるようなことをしないようにします。
以下のようなことを指導者は意識させ、選手は意識することが大切となります。
- 速い展開の中で判断し、考えながら走る。
- 試合では、ポゼッション数(攻撃回数)が多くなる方が、子どもたちの経験数も増える
- フロアバランス、各選手のポジションニングを考えながら走る。
- 積極的に1対1にチャレンジし、力を発揮する。
- ヘルプが来なかったら自分で決めきる。ヘルプが来ても、決めきりたい。決めきれないと判断したら、キックアウト。*する。
*ボールマンがドライブしてヘルプディフェンスを収縮させたすきに、アウトサイドにパスを出すプレー。
育成年代であれば、キックアウトさせるよりも自分で決めきらせることを優先したい。
【ジェームズ・ハーデン VS 八村塁から学べ】
NBAプレーヤーのジェームズ・ハーデン選手と八村塁選手がマッチアップした時の映像を見えもらいました。
このマッチアップは、オフェンスのハーデン選手が、ディフェンスの八村選手を抜き去りシュートを決めたのですが、ここにハーデン選手のスキルの質の高さがみてとれました。
「何故、ハーデン選手は何度も八村選手にボディアップされた(身体でコンタクトされて止められた)のに、八村選手を抜き去れたのか?」
この時ハーデン選手のプレーは、ぶつからないようにと、八村選手を避けるようなことはしていません。
ハーデン選手は一度目のボディアップのあとにすかさずチェンジして再度アタックしてぶつかっていきました。この二度目のボディアップで八村選手は体勢を崩してしまいます。そのときに、八村選手が再度体勢を整える前には、ハーデン選手は八村選手を抜き去っていたのです。
ここで、何がポイントなのでしょうか?
ポイント
コンタクトを求めるような直線的なアタック
ハーデン選手のフットワークの速さ(地面を蹴る足の入れ替えが速い=コンタクトに負けてない。コンタクトの後でも姿勢が崩れない)
コラム
5アウトオフェンスにおいて、自分についているディフェンスを避けようとすると、隣の味方選手との距離が近くなってしまう。
自身がボールマンでアタックする時、相手選手を避けようと外に広がる選手は、5アウトオフェンスではあまり良い選手にはなれない。
5アウトオフェンスにおいては、とにかく直線的にアタックできるようになるのが大事である。
ドリル案
「1on1でのコンタクトからのディレクションチェンジフットワーク」
【パターン1】オンサイドフットストップ
- ドリブルを突いている側の足(オンサイドフット)が前に来た時に、ディフェンスにボディアップされてコンタクトする。
- コンタクトした際、オンサイドフットを入れ替え、左右の足の向きをドライブの方向を変える。
【パターン2】クロスフットストップ
- オフェンスのドリブルを突いている側と逆の足(クロスフット)が前に来た時に、ディフェンスにボディアップされてコンタクトする。
- オフェンスは、クロスフットでディフェンスとコンタクトした際、そのままの状態だと進む方向を上手く変えられないので、瞬間足を床から離してクロスフットをドライブの方向に入れ替えて加速する。
工程1でディフェンスとの間合いはゼロになっているので、方向転換の際はレッグスルーで行えるとなお良い。
【1on1練習ではコンタクトを沢山経験する】
ディフェンスはオフェンスの選手に、
「どういうコンタクトが良いコンタクトか」
を気づかせる必要があるでしょう。
その為には、ディフェンスはコンタクトを怖がってはいけません。
一方、オフェンスは、ディフェンスとのコンタクトによって、どういうフットワークを駆使してディフェンスを抜き去れるかを工夫しながら練習をすることが大切になります。
ぶつかることによって、ディフェンスの体勢が崩れた時、オフェンスの選手は有利な立場になります。
しかし、そういった経験は、1on1でぶつかってコンタクトした選手しか、アドバンテージに気付くことはできないでしょう。
例えば、ディフェンスはリーガルガーディングポジション以外でオフェンスの選手を止めたら、全部ファウルをとられてしまいます。
すなわち、ディフェンスにとって、コンタクトを恐れずに加速してくるオフェンスを正確に止めるというのはとても難しいことなのです。
このように、相手がされたら嫌なこと、不利になることを練習では覚えて経験を積んでいくのがよいでしょう。
その為にも1on1の練習では、オフェンスはたくさんディフェンスへぶつかっていく必要があるのです。
ポイント
コンタクトを恐れず、コンタクトする経験をたくさん積む
【練習をより良くするのは誰か?】
練習をより良いものにする責任を選手に持たせることが重要です。
では、練習をより良くする為には何が必要なのでしょうか?
今回は以下の2つを強調しました。
- 「こうした方がより良い練習になると思う」というアイデアを想起する力
- リーダーシップを発揮する
練習をより良くするためには、リーダーシップを発揮する選手が大勢いることが理想です。
ただ、リーダーシップを発揮するためにはそもそも周りに伝えたいというアイデア、考えがあることが前提になるのです。
ポイント
より良い練習にするのは選手自身
リーダーシップマインドを持って練習に臨む
【指導者は選手の学びの機会を奪わないようにする】
指導者の役割は選手に課題を与え、選手自身が課題を解決できるように導いていくことです。
その為、練習の運び方や練習中の発想のさせ方を工夫し、選手自身に
- 「練習はもっと自分たちで良くしていいんだ」
- 「自分が思いついたことを行動に起こしていいんだ」
と思わせることが必要となります。
仮に選手自身が考え、行った工夫で失敗をしたとしても、それ自体が選手自身の学びになるでしょう。
一方で、指導者が与えたものだけをやっているような選手だとしたらどうでしょうか。
指導者がやらせたことに対して失敗をしても、それはやらされた上での失敗なので、主体的な学びにならないでしょう。
ただし、現代の子供達は、練習をより良くするためのアイデアを考えても、自分の中だけで完結させてしまい、外に発信することが少ないように思います。
そこで、指導者は、選手自身が思ったこと、考えたことを周囲、仲間に対して口に出して発信できるように導いていく必要があります。
ここで、「選手自身のアイデアが上手くいくことなのか?」という疑問が湧くかもしれないが、そこは、指導者が選手を信じなければなりません。
何故ならば、選手を信じてやらせてみた指導者しか、その選手の限界を知ることはできないからです。
もし、指導者が「この選手はここまでしかできない」と勝手に選手の限界を決めつけてしまい、助け舟を出してしまうと、指導者は選手の限界を知る機会を失うと共に、選手自身も自ら考えて練習、プレーをする機会を失っていってしまいます。
勿論、選手自身のアイデアで行動しても、結果選手が成長しないのであればそれは指導者の責任となります。選手達が成長するように、考えられるように、様々なきっかけを作っていくのが指導者の使命となります。
ポイント
指導者は選手を信じ、きっかけを作り、選手自身に考えさせ、チャレンジさせる。
【スペーシング技術を磨く(1)】
ドリル案
【パターン1】「ボディブロードリル2on2」
【内容】
- 両ウイングにオフェンスはそれぞれ立ち、ディフェンスはボールマンプレッシャーとヘルプポジションに準備する
- ボールマンの選手はゴールに向かって、ミドルドライブをする。
- ヘルプディフェンスの選手はミドルを突破されないようにヘルプする。
- オフェンスの選手はドライブコースを阻まれたら、キックアウトして仲間にパスし、ヘルプディフェンスはクローズアウトする。
- キックアウトして仲間にパスした選手は、パスした方と逆サイドの3Pラインまで戻る(スペースを開ける)。
- 1〜4を繰り返していく。
なお、工程4の選手がキックアウト後に3Pラインまで戻ることをリロケートという。
「ボディブロー2on2」ドリルのポイント
オフェンス側が1〜4までの工程を繰り返していくと、ディフェンスにはボディーブローのように効いてくる。
オフェンスは、相手ディフェンスの反応を見て、二人のディフェンスの間を割ってペイントエリアに侵入することを狙う。
【パターン2】「ドライブキックアウト3on3」
【内容】
- ボールマンは、ディフェンスに対してコンタクトを恐れずギャップ*に向かってアタックする。
- ディフェンスはギャップを狭めて阻止する。この時にディフェンスと味方オフェンスの間にクローズアウトが生まれる。
- ボールマンは隣にいる味方選手にキックアウト(ボールをパス)。
- 1〜3を繰り返す。
*ディフェンスとディフェンスの間
「ドライブキックアウト3on3」ドリルのポイント
- クローズアウト*が起こったとき、キックアウトのパスを受ける選手は、味方ドライブには近づかない。そして、パスをもらえる場所を確保する。この時ディフェンスにパスを阻止されないアングルを作っておくことが大切。
- 3人のスペーシングが大切なので、3人目の選手(ボールマンでも、ボールマンからパスをもらう選手でもない選手)も隣の選手とのスペーシングを意識しながらポジショニングしていく。
*ディフェンスがオフェンスに近づいていくこと
ここの2つのドリルは、味方選手とのスペーシングを維持したまま、どのように攻めたらいいかを選手に気付かせることが目的となります。
5アウトオフェンスの場合、隣の味方選手に近付くようなドライブをすると、選手同士の距離が近くなりすぎて、上手くスペーシングが整わなくなることがあります。
スペーシングを崩さないことを考えると、ボールマンはディフェンスに向かって直線的にドライブして攻めていく必要があります。
ボールマンが直線的に攻めると、ボディアップしたディフェンスと1on1になるシチュエーションが生まれるのです。
その状況において、スペーシングを崩さないでディフェンスを抜くにはどうすれば良いのでしょうか?
ここではフットワークを活かす必要があるのです。
しかし、ここで指導者は注意しなければなりません。
この場面で選手が今まで練習したフットワークをなかなか使わなかったとしても、「さっき練習したフットワークを使わなくてどうする!」と、指摘してはいけません。
何故ならば、スキルは言われて発揮するものではなく、自然と出る状態になることが良いからです。その状態になる為には、指導者は選手自身が気付き、練習したことを発揮するまで待たなければならないのです。
ここで、練習をどう工夫して設定していくかが重要だということに気づくことができるでしょう。
【スペーシング技術を磨く(2)】
「ギャップを作る3on3、5on5」
【内容】
3on3、5on5の形式で行う。以下は3on3の形式の内容。
- 1組目のオフェンスの選手がゴール下からパスを出すので、パスを貰うために、2組目のオフェンスの選手は3Pラインの外に出てパスを受ける。
- 3組目のオフェンスの選手はパスを貰うために、1でパスを受けた選手の5m先くらい(3Pラインの外側)に移動してパスを受ける。
- 1組目のオフェンスの選手は、2でパスを受けた選手からパスを貰うために、同じく移動しパスを受ける。
- ボールがウィングポジションまできた時に2組目のオフェンスの選手は、パス&ランでゴールに向かって走る。
- この時点でボールマンは、1on1やパス&ランをした選手にパスをするかなど自身で選択してシュートまで持っていく。
※5on5の場合、3on3バージョンの工程が1回分増える。
※5on5の場合、1組目のオフェンスは4組目のドライブ方向によって走る方向を決める。
「ギャップを作る3on3、5on5」ドリルのポイント
- 1例として上記ドリルの工程4のときに、選手がパス&ランをすると、選手同士のスペースが大きく開く。それと同時にギャップも大きく開く。このようにこのドリルではどうやってギャップを作るかを考える。
- 選手は中途半端に1on1をしたりするのではなく、1on1をすると決めたら最後までやり切るようにすることも重要。
【ディフェンスがオフェンスの練習の質を上げる】
オフェンスの今やっていることが、ダメなオフェンスであることを教えてあげるのがディフェンスの役割(その逆もまた然り)です。
試合で失敗してしまうかもしれないことを、練習の段階で失敗できれば、練習の中でその失敗を修正することができます。
そうなれば、そのオフェンス役の選手は試合で失敗しなくなるということです。
その為、上記に挙げた「ギャップを作る3on3、5on5」ドリルにおいては、ディフェンス側も容赦無くパスカットをしていきます。
もし、弱いパスが通ってしまうと、強いパスを出すことの必要性がなく弱いパスのまま練習が進みます。そして、いざという時強いパスが出せなくなってしまいます。
また、ディフェンスのあたりが弱いと簡単にパスが通ります。しかし、そのスタンダードで練習していたオフェンスでは、強いディフェンスにプレッシャーをかけられたときに対応できなないのです。
あたりの強いディフェンスにプレッシャーをかけられることで、パスの正確性が求められますし、パスが出せない状況でバックカットという選択肢が生まれます。
その為、中途半端なパスや質の低い弱いパスを許さず、ディフェンスはオフェンス側にプレッシャーをかけ、オフェンスの姿勢を崩しにいくようにしていきます。
【スペーシングを維持するバックカット】
5アウトオフェンスは、味方選手同士が近いので、4アウト1インオフェンスや3アウト2インオフェンスなどよりもペリメーター(アウトサイドの選手)のスペーシングが難しくなります。
その為、5アウトオフェンスでは、隣の味方選手との距離が非常に大事となります。
5アウトオフェンスでスペーシングを維持することを考えるとなると、ここでは2つのパターンを挙げていきます。
<パターン1>
ボールマンがドライブにいった際、オフボールマンはドライブから離れるようにスペーシングを保つ。そうすると、コーナーに近い選手は、よりコートの端に押し出されやすくなってしまう。
この状態であれば、コーナーに押し出された選手がバックカットをする。
<パターン2>
ボールマンがドライブにいったが、1回目のドライブでは上手くいかず、リドライブする過程で急激に隣の味方選手との距離が近くなってしまうケースがある。
その際は、ボールマンとの距離が近くなってしまった、隣の選手がバックカットをする。
ポイント
5アウトでは特にバックカットの判断が重要。チームで判断基準を用意し、オフボールでのバックカットをタイミングよく行うことでスペーシングが整う。
【5アウトオフェンスの機能上の注意点】
5アウトオフェンスは広がってスペーシングしている為、オフェンスリバウンドに行きにくくなります。
しかし、そのような状況でもオフェンスリバウンドへ行くようにした方が良いでしょう。それは、チームとしてディフェンスリバウンドのレベルアップにつながるからです。
オフェンスリバウンドでは、ディフェンスにボックスアウトをされると諦めてしまう選手が多いように感じますが、実はボックスアウトには弱い方向があるのです。
下図のように、人間には押された時に強い方向と弱い方向があります。
バスケットボールポジションを取っている場合、横方向の押しには強いですが、前後の方向の押しには弱いのです。
故に、背中を向けてボックスアウトされても後ろからの押しには弱いので、押し込むことができ、オフェンスリバウンドが取れる可能性ができるのです。
その為、5アウトオフェンスのリバウンドシーンでボックスアウトされても、ボックスアウトをしているディフェンスに対して、諦めずにコンタクトし続けることが大事なのです。
もし仮に、オフェンスバウンドが取れなくても、相手ディフェンスとの位置が近いので、トランジションに対応ができます。
最も最悪なケースは、オフェンスリバウンドに行かず、ディフェンスから遠い位置にいる状態でトランジションが発生し、一番後ろから追いかけることになるケースです。
ポイント
ボックスアウトを崩しにいくという姿勢で、オフェンスリバウンドを取りに行く。それが、ディフェンスのボックスアウトのレベルアップにつながる。
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