『自分らしい努力』で輝く未来へ

今回の主人公は8スターズを獲得した現在中学3年生の氷室 琴愛(ひむろ ことあ)さんだ。今年中に獲得することを目指して努力をしてきた琴愛さん。バスケットボールが大好きで常に楽しそうに向き合っている。そんな琴愛さんのこれまでの頑張りと将来に向けての熱い想いがたくさん詰まった記事になっている。

努力の先にある目標

ERUTLUCには練習会で取り組んでいる7項目の技能検定がある。この技能検定は自主練習の延長として、子どもたちが主体的に取り組みながらなりうる最高の自分を目指していくことをねらいとしており、技能検定はそれぞれ初級者向けの7級から高難度の1級までで構成される。それぞれの級の内容をすべてをクリアするとその級の星をもらうことができるシステムで、この7つの星に、ある条件を達成すると獲得できる幻の星を加えた8つの星を揃えると、『8スターズクラブメンバー』に認定され表彰されるものである。

はじめに、この8スターズを獲得する条件の一つである技能検定について琴愛さんに伺った。

技能検定で得意だったのはコーディネーションレイアップです。苦手なものはテニスボールドリブルでした。ただ1番最後まで残っていたのは柔軟の股関節チェックでした。

体幹の1級の内容は、ボール4つの上に、それぞれ手足の4点を乗せ、ボールに乗った状態でプッシュアップを行うという、バランス能力や体幹など、総合的な基礎能力が求められるものになっている。私たちはこのトレーニングを「ギャノンプッシュアップ」と呼んでいる。この項目には、これまで8スターズを獲得してきた多くの選手も苦戦をしてきた項目の1つである。

毎日の積み重ねが必要となる技能検定。琴愛さんは技能検定を達成するまでに1年間かかったという。1年間同じ目標に向かって取り組み続けることはそう簡単なことではない。長い時間をかけて取り組んだ琴愛さんのエピソードについてせまる。

自分なりに成功だと思えた場面があったけど、それが伝わらず、合格にならないときもありました。その時にどうすれば自分の努力や結果を伝えられるのか考えて練習をしていたことが1番記憶に残っています。そうやって考えて練習をしてきた経験は私にとって、大きな財産になると思います。

何度も挑戦し、何度も失敗を重ねることもあったという。それでも、自分なりに試行錯誤を重ね、時には周囲の人に支えられながら、達成したいという強い思いで努力を続けてきた。そんな琴愛さんの原動力は、一体どこから生まれているのだろうか? 

どうしても終わらせたいという強い気持ちがあったので、自分で決めたその日に必ず1つは達成してから帰ると決めて頑張っていました。特に、以前所属していた別のスクール『自由学園教室』を辞める際に、何かしら目標を達成してから辞めようと決めていて、それが自分の中で大きなモチベーションとなっていたと思います。

どうしても終わらせたいという強い気持ちをもち、自分で決めた日に必ず1つは達成してから帰ると決めて取り組んできた琴愛さん。その姿勢は、目標を諦めずに努力を続ける力の大切さを教えてくれている。このことをやりこなしてきた琴愛さんの責任感や自己成長への意識の高さがこの記事からも伝わってくるだろう。この経験は、これからの人生でも大きな糧となり、さらなる成長の原動力となるのではないでしょうか。これからどのような道を切り拓いていくのか、とても楽しみである。

学びを行動に変える力

8スターズクラブメンバーに認定されるための条件には、技能検定の他にもう1つある。それはエルトラックの練習会に通う子どもたちに配られる冊子『子どものスポーツのすすめ』に書かれている内容をアウトプットすることだ。

エルトラックでは、学んだことをインプット(知ったり、学ぶこと)したり、アウトプットしたりする(誰かに話す)ことを大切にしている。『子どものスポーツのすすめ』はスポーツをする選手としてだけではなく、これから社会への貢献や活躍に向けて成長していく子どもたちが大人になっても必要になる考え方を学ぶことができる。その内容をアウトプットすることを通じて、理解を深める狙いだ。琴愛さんが印象に残っている話や学びになった話は何だったかを伺った。

印象に残っている話は『言いたいだけと伝えたいの違い』と『コーチ銀行と信頼残高』という話です。この話が自分の中ですごく響いたなと感じています。

この2つの話で印象に残っている部分は何か伺った。

『言いたいだけと伝えたいの違い』という話で印象に残っている部分は、『コミュニケーションには色々なパターンがあるという話』という文章で最初はそんなにパターンがあるとは思っていませんでした。でも、冊子には様々な方法が書かれていて、普段の生活では、自分はどうなっているのか考えさせてくれる話だったなと思います。

2つ目の『コーチ銀行と信頼残高』の話は学校生活で特に大事だなと思うことがあり、担任の先生やその他の先生とかにどうやったら信頼残高がアップするか考えて行動するきっかけになったので印象に残っています。

『言いたいだけと伝えたいの違い』という目的をしっかり持ち、言いたいだけのコミュニケーションではなく、相手にどういう風に伝えていくか工夫するコミュニケーションが大切であるという内容である。

『コーチ銀行と信頼残高』という話は信頼を銀行に例え、その信頼を貯めたり減らしたりするなかで「信頼」を「銀行」に例えて見える化している。良い行い(約束を守る、助けるなど)は信頼を増やし、悪い行い(嘘をつく、約束を破るなど)は信頼を減らす。日頃の行動がその信頼残高につながっている琴愛さんはこの話を聞いて先生やコーチなどに信頼してもらえるためにはどのように行動していけばいいか考えるきっかけになったのだろう。

これらの話を含め、この『子どものスポーツのすすめ』を通して、琴愛さんの行動に変化が現れたという。それは一体何だろうか。何を学び、どう行動に移したのだろうか。

部活動では自分が中心となってやることが多く、先輩とも仲が良く、よくコミュニケーションがとれていました。ですが、世代交代した後は上手くコミュニケーションが取れてないことがありました。具体的には、伝えたいけど相手には伝わってないということがよくあり、その時は「これは言いたいだけなんだ」と認識して、言い方などを変えていくことができました。
最初は余計なことを言ってしまったり、先輩からもう少し言い方を変えた方が良いといわれたりしながらアドバイスをもらい、言い過ぎたときはしっかり謝ってやっていくことができました。また、コーチや学校の先生にどうやったら信頼してもらえるか考え、行動に移していきました。

伝えたいことが相手にうまく伝わらない経験は誰にでもあるだろう。しかし、その壁を乗り越えた琴愛さんは、言い方や伝え方を工夫しながら少しずつ信頼を築いていったのではないだろうか。そうやって、自分の行動を振り返り、謝罪や改善を恐れずに実行する強さをもてている琴愛さんは、周りの人から信頼され、応援される選手になっていくのだろう。また、周囲の仲間にも良い影響を与え、コミュニケーションを通じてチーム全体を成長させる存在へと変わっていくに違いない。

「困ったことがあった時に、『スポーツのすすめ』からヒントや答えを探して行動に移していきました。この本は、自分が困った時に味方でいてくれるような存在です。」

挑戦の先に見えたもの 信頼とポジティブの力

ここからは琴愛さんがエルトラックと出会ったきっかけ、そして琴愛さんが通うスクールでの思い出や学んだことについてまとめていく。

はじめに、琴愛さんがエルトラックの練習会に通い始めるようになったきっかけを琴愛さんが語ってくれた。

中学生で活躍することを目標に、中学1年生から本格的に部活動に入りました。しかし、さらに基礎をしっかり学びたいと思い、最初は別の所に通っていました。その後、通っていたところが無くなってしまったタイミングで、兄の同級生から自由学園教室での活動を紹介してもらい、申し込んで参加することにしました。また、CPMにも途中から参加していて、今はCPMでの活動を続けています。

その中で楽しかった思い出について琴愛さんに伺った。

最初は信頼を築けていなかったため練習で緊張することが多かったですが、回数を重ねるごとに信頼関係が深まり、プレーが選手同士で合った時が1番楽しかったです。

練習会で初めて会う人が多い中、コミュニケーションをとって新しい選手と友達になったり、一緒にプレーをして上手くいったりした時が一番楽しかったと語ってくれた琴愛さん。初めての選手とどういう風にコミュニケーションをとってどんな風に練習をしていくか考える経験は琴愛さんにとって刺激のある時間だったのではないだろうか。

そんな琴愛さんがこれまで学びになったこと、得られたものは何なのだろうか。そして、その学んだことが琴愛さんに、どのような変化をもたらしたのだろうか。

クラブチームと部活動ではレベルの違いがあり、時には自分にできないことがある中で、自分が失敗したときにはチームメイトに任せ、次に何をすべきかを考えられるようになったと思います。部活動のときは、自分がダメでも「自分がなんとかしなければ」という気持ちが強かったですが、クラブチームでは仲間に任せられる環境があり、そうすることで自分は他の方法でチームに貢献する。お互いに助け合うことの大切さを学びました。

同じスポーツをしていくなかで、お互いに信頼をし合える関係は、とても重要なことだろう。その大切さに気づくことが大変で、頼り合うことはさらに難しい。だが、琴愛さんは自らどうすべきか考え、行動に移し、信頼を獲得してきたのではないだろうか。その行動も、自分自身ではなく、相手にとってどうか、仲間にとってという相手への思いを大切に過ごしてきていたのではないか。そのことがインタビューを通じてすごく伝わり、それが琴愛さんの魅力なのだろう。

また、人として成長したことの一つは、さらにポジティブな性格になれたことです。もともと自分はポジティブな性格でしたが、その気持ちがより強くなりました。以前は、ランメニューで走っていない子を見て「ずるいな」と感じることもありましたが、今ではそのような状況でも『その子の分まで自分が走ってやろう』という前向きな気持ちを持てるようになりました。

クラブチームでの経験では『チームで信頼し合うこと』の大切さを学び、仲間に任せるときは安心して任せ、自分がその場で何をすべきか考え、行動することでチームに貢献する力を身につけていったのでしょう。また、人としてポジティブな性格にさらに磨きをかけていると語ってくれた琴愛さん。周囲にも良い影響を与えていくことは間違いないだろう。

近い憧れから学ぶ強さ 琴愛さんが挑む再現性の高いバスケ

ここまでのインタビューを通して琴愛さんのこれまでの取り組みや学んだことについて、伺うことができた。中学生にあがり、新しい環境で取り組んでいる琴愛さん。バスケットボールが大好きで、それに対する情熱がとてもある琴愛さんが今後どんな目標を描き、どういったキャリアを歩んでいきたいのか伺った。
まず、現状の琴愛さんについてこう答えた。

得意なプレーはドライブです。ボールをもらう動きなどを変えてドライブ、最後のフィニッシュもバリエーション多く相手を倒すのが得意です。これからの課題はディフェンスだと感じています。まだ足が追いつかないことが多いと感じます。もっと脚力あげて自分よりも速い選手についていけるような選手になりたいと思います。

琴愛さんは自分の得意なプレーを『キャッチからのドライブ』と語ってくれた。ボールをもらう動き方を自由に変えて戦うことが得意だという。そんな琴愛さんが課題と感じている点としては、オンボールディフェンスで自分よりも速い選手に対して脚力で勝てるように特訓の日々を送っているとのことだ。そんな琴愛さんの憧れる人とは一体誰なのだろうか。 また、その人のどこに憧れているのだろうか。

憧れの選手は竹内みや(桜花学園高等学校所属)、満生小珀(京都精華学園高等学校所属)選手です。2人とも3ポイントやドライブの精度が高くてかっこいいなと思います。両選手を憧れにしているのは再現性が理由です。B.LEAGUEやNBAの選手だと再現するのが難しいので近い年代のプレーヤーを参考にして頑張ろうと思ってます。

憧れの選手の努力を超えていけるような熱いメッセージを語ってくれた琴愛さん。近い年代の人から多くのプレーを学び、それを自分で再現性を高く意識して取り組んでいるとのこと。そうやって様々な選手を参考にどんどん壁を乗り越えていってもらいたい。

最後に、琴愛さんのこれからの目標について伺った 。

高校一年生からスタメンで活躍したいというのがあるので、3ポイントの確立を上げていって課題のディフェンスも克服して活躍できるような選手になっていきたいです。また、人として憧れをもってもらえるような選手になりたいです。そのためにも、周りの人が困っているときに前向きな言葉をかけてあげるような人になっていきたいと思います。

次のステージである高校に焦点を置き、練習をしているという琴愛さん。自分の苦手なことにチャレンジしていき、自分が誰かの憧れになる為、困っているチームメイトなどいればそれを救えるような存在になる為に奮闘していくことになるだろう。決して楽な道のりではないと思うがそれでも磨きがかかったポジティブな性格を武器に挑戦していく琴愛さんを応援していきたい。

最後にメッセージ

最後に琴愛さんからお世話になった方々へ 、それぞれにメッセージをもらった。

・高篠コーチへ

いつもありがとうございます。自分のプレーがうまくいかなかったときに、いつも話を聞いてくださり、心の整理をする時間を与えてくれたことに感謝しています。最後の握手をせずに帰ろうとした時も『気持ちの整理しなくて大丈夫なの?』と気にかけてくださり、そのやさしさに励まされました。練習後の自主練も手伝っていただき、常にサポートしていただいたおかげで成長できました。厳しい時もありましたがそれも全て私をより良くするためだと感じています。ふざける時は一緒に楽しんでいただき、いつも温かいご指導をありがとうございました。

・元夢コーチへ

自分のために一生懸命怒ってくれてありがとうございます!そうやって言ってもらえたことが糧に変わっていて、良かったなと思っています。

PROFILE

名前:氷室 琴愛(ヒムロ コトア)

生年月日:2009年08月12日生まれ

出身:埼玉県新座市

TEXT_宮野 結音

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