大事な場面で活躍できる選手になる

今回の主人公は中学2年生の金子未來(かねこみらい)さんである。

お兄さんの影響を受けてはじめたバスケット。バスケットへの情熱はとても熱いことをインタビューを通じて感じることができた。そんな未來さんの8スターズクラブ受賞のエピソードやバスケットに対する向き合い方をまとめた。

身近なライバルに負けないために

 8スターズを獲得するには数々の技能検定をクリアする必要がある。その中にはクリアが難しいものもあり、これまで獲得してきた選手たちもその壁を乗り越えてきた。未來さんもその一人で、当時のエピソードを伺うことができた。

検定ではコーディネーションレイアップが得意でした。特にノーマルレイアップが得意で、他の項目も練習無しですぐにクリアできていました。検定を練習するのは楽しかったです。小学校5,6年生のときに、練習会でよく取り組んでいて、そこでクリアしていました。

苦手なのはテニスボールドリブルでした。ドリブルがもともと苦手で、それに加えて同時にテニスボールもキャッチしないといけなかったので大変でした。他にも体幹が強い方ではないので、特に1級のボールに乗った状態でプッシュアップをしないといけない項目は苦戦しました。

練習会でたくさん練習し、クリアしていた未來さん。苦手なものはなかなかクリアできなかったとおっしゃっていた。未來さんは、なかなかクリアできないその困難をどう乗り越えていったのだろうか。

練習会では自主練習ができる時間があって、そこで練習をたくさん行い、できるまでやっていました。他にも地元で体育館を借りて、練習がない日も自主練習をやってました。その原動力になったのが兄の存在です。兄は中学生の時に検定を終わらせていて、負けたくないという想いがあったので頑張ることができたと思います。途中で嫌になることもあったのですが、兄より早く検定を終わらせたかったので頑張りました。」

未來さんのお兄さんは8スターズ達成選手の金子聖那(せな)さんである。聖那さんは中学3年生のときに8スターズを達成した選手で、目標に向かって勤勉に打ち込み続ける兄の背中が未來さんには映っていたのだろう。

「時には兄に相談をして、見本を見せてもらいながら教えてもらっていました。ライバルであり、先生のような兄とは普段ケンカも多いけど、バスケットを通して良い影響を与えてくれる存在です。

身近にいた兄の存在が未來さんに良い影響を与え、目標として原動力にしていたとのことであった。

兄に負けないよう、多くの時間を費やし、努力を積み重ねてきたのだろう。その積み重ねは形となって、8スターズクラブ受賞につながっている。

ちょっとしたプラスがバスケットの大きな糧に

8スターズクラブの検定には技能検定の他に『子どものスポーツのすすめ』のアウトプットがある。これは、冊子に書かれていることを読み、その理解度をあげるためにアウトプットするという取り組みだ。この中で印象に残っているお話はないか、聞いてみた。

『+αの話』が一番印象に残っています。例えば、漢字を練習するときに『5回やってくること』と言われることがあると思います。そこでその回数だけするのではなくそれより多く課題を自分に出して、いつかの成長のためにプラスアルファに取り組んでいくことが大切だということが書かれています。これから、自分もなにかするときには決まった回数だけでなく、それより多く行うようにしようと思うようになりました。

『+αの話』と聞いて自分のバスケットの向き合い方が変わったとおっしゃっていた。それに加えて、この話が心の底から大切だと思ったきっかけがあったようだ。それは一体何だったのだろうか。

この話につながるなと思ったことがあって、それは小学5年生のときでした。その時はヘルプで入った試合で、普通なら年齢的にも出られないのですが、兄がいたのもあり、入らせてもらって試合に出ることになりました。その試合の終盤、3点差で負けていたところで自分にボールが回ってきて、ラスト2秒でシュートを打ちました。それが入って、周りの選手やコーチも一緒に喜んでくれました。実はそのときに、『+αの話』からシュートを多く打つことを意識して行っていて、それが結果に出たんだと感じました。それから、『+αの話』を大切にするようにしています。

未來さんのお話からも『+αの話』を聞いて実践したこと、その実践が成功として返ってきたことを聞くことができ、このお話の大切さを改めて感じることができた。このことがきっかけでシュートも大好きになり、毎日練習するようになったという。これはバスケットボールという競技に関わる全ての選手に向けて活力になるお話であろう。

検定の取り組みの様子を近くで見ていた母・真紀さんからの未來さんの様子を聞くことができた。

体幹とテニスボールに苦戦していました。私が見ているところではあまりやっていなかったのですが、CPMで受かってきたりしてたので、見えないところでやっていたのではないのかなと思います。自主練習のとき、基本は一緒に体育館に行って、検定カードをもってやっていたのですが、兄とは違ってあまり関わらず、本人がしたいようにできるように声掛けを少なめにしていました。私から声をかけてやる子でもなかったですし、シュートが好きすぎてずっと打っていると思いきや、検定に急に戻っていたりしていました。兄がCPMに行っているときは見学として一緒に行くことが多かったです。その当時はまだ同級生がいない時期だったので、一人で自主練習をすることが多かったと思います。やると決めたらずっとやる力をもっているので、それは本当にすごいなと思います。

新しい環境と新しい出会いが溢れる場所

ここからは未來さんとERUTLUCの出会いを聞いていく。

始めはバスケットを始めたきっかけを伺った。

バスケットは兄の影響で始めました。当時兄は4年生、僕は1年生だったので、兄が練習している横でひっそりと練習をしていました。

それで、いつものように兄と一緒についていっていました。5年生の時は自由学園教室へ通っていました。5年生の時に、兄の通うクラブチーム(CPM)で一緒に試合へ出してもらう機会がありました。その後、コーチにCPMのトライアウトがあると聞いてチャレンジし、今はCPMに所属しています。

CPMというクラブチームはERUTLUCが運営しているクラブチームの一つで、埼玉県を拠点にU13〜15までのカテゴリーをもつクラブチームである。「なりうる最高の自分をめざす」を理念とし活動をしている。

兄とともに始めたバスケットを頑張ってきた未來さん。そこでたくさんの学びと経験をしたという。いったいどんな経験をしたのだろうか。

CPMでの練習会に、卒業生や年上の方などが練習に来てくださることが多いのですが、その時に、すごいプレーをたくさん見て、本当に学びになったことが多かったです。僕もそのプレーをみて刺激をもらい、頑張ろうと思っていました。」

「ウォーミングアップの時からさらっとすごいプレーをしていたり、ダンクも見せてくれたり、驚かされることばかりでそのプレーや立ち振る舞いを見て、自分も頑張ろうと感化されました。

と、これまでのCPM出身の卒業生や、卒業後様々な場所で活躍している選手など、未來さんにとっては近しくもあり、しかし遠くも思える選手達が憧れの存在として目標になっている。

そんな選手達との出会いの場として、もっと頑張ろうと活力をもらい、バスケのプレーの面ではもちろんだが、人としての魅力も学ぶきっかけになっている。その学びを誇りにもってこれから進んでいってほしい。

得意なことを活かし、仲間とともにチームとしてプレーする

最後に未來さんのこれからについて話を聞いていこうと思う。始めは未來さんのバスケットでの様子を聞いてみた。

得意なプレーはシュートです。本当に大好きで特にフリーで打つスリーポイントシュートをよく練習しています。飽きなければ2、3時間はそのままシュートを練習することもあります。試合中でもよく外から打つことが多く、決まったときはすごく嬉しいので、もっとうまくなっていきたいです。

未來さんのシュートに対する熱い思いは驚くほどである。好きだからといっても、2〜3時間1つのことをやり続けることは簡単ではない。その長い時間をやり続けることのできる未來さんの情熱はこれからの成長につながっているのであろう。

これからもっと成長するために、リバウンドが課題なので、それを克服していきたいと思っています。まず、試合中にリバウンドへ行く回数が少ないのでもっと飛び込むようにしたほうがいいなと思っています。母さんが動画をとってくれていて、シュートフォームを見るために動画を見始めたら、リバウンドも課題であることに気づき、その部分を直して、もっとチームに貢献できるプレーを増やしたいです。

どちらの話もチームのために頑張りたいという思いが強く感じられた。そう思える背景には何があるか。未來さんの心の奥に秘めた思いはいったい何なのだろうか。

リバウンドは、仲間のシュートがリングからこぼれてしまったボールを取ることでもう一度チャンスが生まれるし、攻めることもできると思っています。

僕がいつもシュートを打つと仲間がリバウンドを取ってくれているように、僕も仲間のボールを取っていきたいと思います。

他にもボールを運ぶことやディフェンスなど、全員で協力してプレーしなければ点数に繋がらないと思っています。だからこそ、チームのために貢献できるリバウンドを克服して成長していきたいです。

自分のプレーは仲間の協力があってこそのプレーであり、だからこそ自分に回ってくる役目をしっかりこなしたいという思いが強く感じられた。

それはバスケットボールの選手としての大切な原則、大事にすべきものを心にとめて過ごしているからこそできることであろう。

その原則を大切に、これからもチームのために『私たちが』できることを考え、プレーしていってほしい。

壁を乗り越え、期待に応えられる強い選手に

次に、未來さんの将来の目標とどんな選手になっていきたいのか、今後について伺った。

全国大会に出場して活躍できるような選手になりたいです。そのためにも大事な場面でのシュートを決めきれるや任される期待に応えられるような選手になりたいです。

『チームのためにプレーをしたい』と考えて行動できる選手はそう多くはない。その中でも、期待に応えたいと思うことのできる未來さんの背景には一体何があるのだろうか。未來さんの心の内側に迫る。

最近、『+αの話』でも話した試合の最後のシュートを決めたときと同じ状況がありました。

その時もラスト数秒で2点差の状況で自分にボールを集めようとしてくれることが何回かありました。ですが、なかなかうまく行かずに悔しい思いをもっていました。

期待されていることが嬉しい反面、応えられない後悔や反省があります。そういった場面でもチームが逆転して勝てるように自分もやりきりたいので、そのシュートをしっかり決めて、期待に応えられる選手になりたいです。

最後の場面で自分にボールがくるようになることは緊張するけど、決める自信があります。

やらないで失敗するのと常に挑戦するのとでは、挑戦したほうがより成長すると思うので、しっかりやって終わりたいという思いからそう考えるようになりました。

期待を背負うことはとても勇気のいることであり、誰しもできることではない。

その期待に押しつぶされてうまく行かず、悩む場合が多い。そんな中でも、未來さんはその期待に応えたい、やりきりたいという強い思いをもち、日々の練習に励んでいる。

母・真紀さんからも今後の未來さんについてお話を伺った。

まず、2,3時間シュートやってても飽きないくらい打ち込みを徹底していて、そのシュートに対するひたむきさや好きなことに対する思いの強さはすごいなと思っています。

今は見えている世界が狭く、それを広げるための試合の見学は感染症拡大の影響で行けてないので、将来に向けた準備ができていないように思います。

ですので、これから視野を広げられるような体験を通じて、将来にむけての想像をしていってほしいと思います。回り道してもいいので自分が信じた道に進んで行ってほしいし、一歩ずつ段階を踏んで成長してほしいです。それが、途中でやっぱりこっちだったと違う道を選んでいってもいいので、自分で新しい道を選んで進んでいけるように将来を考えて決めて、成長していってほしいです。

これからの成長がとても楽しみな未來さん。しかし、2022年後半、未來さんにとって悩ましい岐路に立たされる。

それは一体何なのだろうか。

実はバスケット人生で初めての怪我に悩まされていました。5月27日、練習中に左足を骨折しました。左足首と尾骨と脛骨の間の骨をくっつけなければいけなくて、人生初のバスケットからの離脱にとても悔しかったです。その当時は早く戻れるように、治すことに専念していました。

復帰したら課題にあげていたリバウンドや苦手なドリブルの克服を頑張って行い、得意なシュートも磨いて、期待に応えられる選手になっていきたいと思っていました。

人生初の離脱はバスケットに関わらず、スポーツを行うすべての人にとって大きな悩みであるだろう。その壁を乗り越え、ターニングポイントとして更に強い選手になり、これからの未来さんの成長につながる。

このインタビューから半年、未來さんは怪我を乗り越え、今は大好きなバスケットに打ち込んでいる。この半年の未來さんの様子を伺った。

怪我に悩まされていた時に、インタビューをさせていただきました。そのインタビューをきっかけに焦らず治して復帰を目指すという気持ちをもち、リハビリに取り組んでいました。固定もしていたのですが、その取り外しやリハビリ通院も夏に終わる見込みで練習や試合に少しずつ出られるようになってきたところで実はまた怪我をしてしまいました。

その当時は、また怪我で骨折と診断されて、バスケができなくなると思うと不安が大きかったです。ですが、足の怪我と違ったことは、走れたことです。手首から肘の手前までギプス固定でしたが、足は動かせたので落ち込むことなくリハビリに励むことができました。

選手にとって怪我は気持ちが下がってしまうものだ。その怪我を短い期間に2度もするという経験は、未來さんにとってとても悔しく、辛いことだっただろう。その怪我をどう乗り越えていったのだろうか。

CPMでの練習中はコーチたちが別メニューで練習を見てくれました。正直、途中でまたリハビリかぁと思う日もありましたが、身体の使い方を教えてもらいながら、『今が大事。後からきっと結果がついてくる』と信じて乗り切りました。今後はリハビリで取り組んでいた身体のトレーニングで特にストレッチの継続を行い、身体を柔らかくして、怪我の回避やパフォーマンスがあがるように毎日続けていきたいです。

完全復帰まで4ヶ月かかりました。今までやっていたことが急にできなくなるのは本当に辛かったけど、怪我をして気づいた部分もたくさんありました。両親、チームメイト、コーチ、沢山の人に感謝をしてバスケを楽しんで続けていきたいです。

この半年、2度の怪我に悩まされながらも、逃げることなく復帰するという目標に向かって取り組んだ未來さんの志の強さは、バスケットに対する情熱へと変わり、より成長する糧になっているだろう。

最後にメッセージ

中田コーチ、元夢コーチ、航太郎コーチ、結音コーチ、慈コーチ

日々のトレーニングやいろいろなスキルを教えてもらっていて、自分の成長につながっています。なので、すごく感謝しています。いつもありがとうございます。

これから検定を頑張る後輩たちにもメッセージを頂きました。

たくさん失敗しても大丈夫なのでめげずにやっていってほしいです。頑張ってください。

PROFILE

名前:金子 未來(カネコミライ)

生年月日:2008年8月5日生まれ

出身:東京都東久留米市

TEXT_藤田 麗奈

最近の記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
PAGE TOP