これまでの感謝を プレーや行動に込めて

今回の主人公は、小学6年生の加藤佑志朗(かとう ゆうしろう)さん。

目標を決め、心の葛藤と戦いながらクリアを重ねて8スターズクラブメンバーの一員となった。

最初に合格を貰った7級のレイアップシュートが4年生の11月だったので、5年生の11月中に全て合格し、1年で8スターズを取ると目標を決めて取り組みました。目標を達成できて嬉しかったです。

と、目標を達成した佑志朗さんのこれまでの努力とこれからの希望がたっぷり詰まった記事となっている。

応援で強くなった、8スターズを獲得したいという想い

まず、8スターズメンバーになるまでの軌跡をたどっていく。8スターズを獲得するには、体幹やカップリングスキップといったコーディネーション能力の内容が多数用意されている技能検定を全て合格することと、物事の向き合い方や考え方がまとめられている冊子「子どものスポーツのすすめ」のアウトプットを行うこと、この2つのクリアが条件となる。はじめに、技能検定の取り組みについて佑志朗さんに話を伺った。

得意だったのはカップリングスキップの1級、2級でした。上半身と下半身を違う動きで動かすことが楽しくて、あっという間にクリアしていました。今でもたまにやっていて、常にできるようにしています。他のものも全体的には楽しく取り組めていたので、早くクリアしていました。

普段からカップリングスキップの動きを楽しく取り組んでいた佑志朗さんは、楽しく取り組むことができたからこそスムーズにクリアをしていった。しかし、クリアに苦戦したものがあったようだ。

テニスボールドリブルの2級で苦戦しました。ドリブルはできるんですけど、テニスボールをキャッチするのが難しくて時間がかかってしまいました。

テニスボールを使用したドリブルスキルのクリアには時間がかかったようだ。なかなかクリアできない中、佑志朗さんはどのように乗り越えていったのだろうか。

テニスボールドリブルの時、全然できなくて嫌になっていました。テニスボールの場合、クリアするのに決まった回数があるのですが、僕はよく最後の一回で失敗して悔しい思いをたくさんしました。それで嫌になっていて、そのことをお母さんに伝えると『決められた回数より多く数えたら。』と言ってくれて、そのようにやっていたらいつのまにかできるようになりました。いつも6回目で失敗をしていて焦っていたので、10回と多く数えて、取り組むようにしていました。

苦戦している時に、身近にいる家族に伝えることで励みになり、そこから頑張れていたと語る佑志朗さん。そして、声に出して悩みを打ち明けることで新たな方法や気づきを得られ、それを活かして取り組むことができた。そういった、状況を変える1つの出来事が佑志朗さんに希望をもたらし、合格まで進んでいく活力と変わっていったのだろう。

技能検定の練習は体育館を借りたり、家の前でおこなったりしていました。確認は、練習会で直接見てもらったり、動画を撮影したものをコーチ陣に見てもらってたりしていました。テニスボールドリブルの他にもレイアップの2ボールにも苦戦をして、この項目の1級を見た時に『やる前からできない』と、無理だと思っていたんですけど、お母さんと一緒に練習したら意外とできました。

このことについて、母・まみさんは

体育館でチャレンジする事が出来ず『難しいからできない』と泣いてしまいましたが、翌日気持ちを切り替えて家の前で何度かチャレンジしてみたらコツをつかんだのか、そんなに時間はかからずやれたと思います。

誰しも、できないこと、難しいことに直面するとできるのか不安になったり、挑戦が怖くなったりするだろう。そのような気持ちになった時に、佑志朗さんは身近にいる人からの励ましを力にかえながら、自分で気持ちを切り替えて取り組んでいった。その気持ちの変化には、佑志朗さんの想いのほかに、周りにいる人の想いも重なり、より強い想いとなって佑志朗さんの背中を押してくれたことだろう。そんな「応援される」という状況が選手を力強くしていくのだろう。

新たな景色を見ることができるように

次は、8スターズ獲得のもう1つの条件である「子どものスポーツのすすめ」のアウトプットをする取り組みの中で、印象に残った話を伺った。

印象に残っている話は2つあります。1つは『サーカスの象』です。この話は、子どもの頃の象が頑丈な柱やロープに繋がれ、逃げられないことを知り、自分が逃げられないと思いこんでしまう話なのです。もう1つは『理解されてから理解される』です。この話は、自分の生活によく結びつけることができるなと思い、印象に残っています。

それぞれ、2つのお話を通して、佑志朗さんが実際に普段の生活で活きたと思う場面があったようだ。それは一体なんだろうか。そして、そこから何を得たのだろうか。

『サーカスの象』の話のように、自分もできないと思いこんでしまうことがあって、技能検定でもやる前からできないと思うことがありました。今でもたまに思ってしまいます。そんな時に、お母さんに話して、『できない』と言ったら、お母さんは励ましてくれるので、切り替えてやることができています。

また、『理解してから理解される』に関して、この話でいう周りに伝える側になることがあって、なんで話を聞かないのかな、自分勝手な人だなと思い込むことがあったんですが、この話を読んで、自分で気づいて、相手のことを思いながら気をつけて伝えるようにしています。チームの練習で縦パスでつなぐ場面でそれができない人がいた時に、そのことを相手に伝える時、きつく言うこともあったんですが、今は相手がなんで出せないのかを聞いてから、きつく言わないで相手がやろうと思えるように伝えるよう気をつけています。

佑志朗さんにとって、悩んでいた時に『子どものスポーツのすすめ』の2つの話と出逢い、実生活と結びつき、実際に行動を変えて取り組んできたことが新しい世界を見ることにつながっているのだろう。行動したことによって、もっとこうしたほうがいい、どうすればいいのかと考えるようになっている佑志朗さんは、これからもっと新しい世界を見て成長していくに違いない。

8スターズ獲得までの取り組みを近くで見守られていた母・まみさんからは

とにかく自分に自信をもてなくて、本人もやればできると思いますし、私もそう思っているのですが、まずやり始めるというところに行くまでに時間がかかってしまうので、それを『できる』と後ろから言い続けて協力していきました。

検定を通して、分からないことをコーチに積極的に聞きに行けるようになったと思います。また、すでにクリアをしていた友達に聞いて、自分から行動できるようになったと思います。はじめは恥ずかしくて、入ってから半年ぐらいはみんながやっているのを見ていることが多かったですが、徐々にやってみるようになって、達成していくと本人も嬉しそうでした。そこからもっとやりたいと行動に移して取り組むようになったと思います。恥ずかしがり屋なのか、自分からなかなか行動できなかったのですが、達成していくことが変わるきっかけになったと思います。

勇気を出して、挑戦する。これまでもこれからも

ここからは佑志朗さんがエルトラックの練習会に通い始めたきっかけやそこで学んだことなどを伺った。

バスケットボールを始めたのは小学1年生の途中からでした。エルトラックを知ったきっかけは、同じチームだった当時中学生の大好きな先輩が練習会に通っていて、興味をもって体験に行きました。初めての体験のときから楽しかったのを今でも覚えています。ただ、知っている人が1人もいなくて、不安な気持ちでいっぱいでした。

身近なエルトラックに関わっている人のおかげで佑志朗さんもエルトラックとの出会いがあった。楽しいと感じながらも集団の中に入っていくことが不安だったと言っていた佑志朗さんだが、どのように乗り越えていったのだろうか。

入会をして最初の練習会の時に同じ学年の子に話しかけたら仲良くなることができて、今ではその子は自分のライバルであり、いい仲間です。仲間ができてから練習も毎回楽しく取り組むことができています。エルトラックの練習では、まずシュートをしっかり狙って、そこから相手との駆け引きをすることを学びました。前の僕のプレーは、いつもパスが最初で、ぜんぜんシュートを狙うことをしなかったです。今では、空いていたら迷わずシュートを打つようにしています。シュートを狙うことが自信に変わっています。駆け引きはゴール下の駆け引きがすごく印象に残っていて、中に入った後にすぐ止められて止まっちゃう時にどうすればいいかを教わって、それが印象に残っています。

今では良きライバルであり、仲間である友との出会いによって不安な気持ちがなくなり、楽しいと思うようになったという。不安な気持ちを抱えた中、声をかけるというのはとても勇気のいることだったろう。今ではシュートについて磨きをかけながら大切な仲間との練習に励んでいる。

佑志朗さんはエルトラックの練習会での学びがとても活きていると話していた。どのようなことを学んだり、得たりしているのだろうか。

今は2つの練習会に通っていて、それぞれ特徴がある中で練習ができています。一つの練習会の方には学校の友だちやライバルがいて、その2人がいたからみんなとも仲良くなれて、意見が言い合える仲間です。そういう仲間の大切さやそこにいる選手たちと協力し、切磋琢磨して、日々の練習に取り組むチームの一員としての大切さを得ることができました。

もう一つの練習会には自分より身長が大きい子がたくさんいて、押し合いの練習があるんですが、負けてしまうのでコーチに協力してもらいながら勝負をして楽しかった思い出があります。

それぞれでの会場での特徴を自分なりに理解し、その場で最大限努力をし、もっと上手になるべく努力を続けている。その観察力はこれからどのような場面においても活きていくだろう。

エルトラックで習ったことをチームに持ち帰ってやってみて、それで成功したときが楽しくて、エルトラックに入ってよかったと思います。実際にやったことはパスの部分で、最初は味方を見てパスを出していたんですが、ディフェンスを見て、相手の不利な状況や裏を見てパスを出すといいと教わって、それからはディフェンスを見てパスをすることをチームで発揮しています。

練習会に向かうときの車の中で、まずはチャレンジしないと変わらないからチャレンジしようとお母さんはいつも背中を押してくれます。チャレンジした上でできないことを練習するように意識をもつようにしていて、練習会ではできるだけチャレンジするようにしています。練習会が終わったら、何をしたか思い出して、今後の場面で活かそうとしています。

どの場面でもチャレンジしようとする気持ちがもてている佑志朗さん。挑戦した分だけ、結果や成果が見えてくる。そこからまたさらに次の挑戦へ進んでいく。そうやって、ひとつずつ階段を上がるように成長をしていくのだろう。インタビューを通じて、佑志朗さんの誠実にバスケットに向き合っていることが伝わってきた。

エルトラックと関わりをもったことによる変化について、母・まみさんからは

エルトラックに入れてよかったなと思うのは、集団の中に入っていくのが苦手で、習い事に通っていても知っている子がいなかったり、仲のいい子がいないと通えない子だったんです。4つ上の兄がいて、基本は兄と一緒に入ることがほとんどでした。本当に1人で入っていったのはこれが初めてでした。最初に体験に行った時も、楽しいんですけど涙が出てきてしまって、知っている子がいなくて不安でいっぱいだったと思います。

やめてもいいからと通い始め、そこで勇気を出して声をかけた友達が答えてくれて、親としては集団の中に自分で入っていけたというのがすごいことだと思います。

そして、上手な子も多い中、そこで影響されて、自分もそれをやってみようと最初から勝つつもりで臨むということが見えたかなと思います。失敗するのが怖いというのがあるので、失敗してもいいんだよということを知っていてほしいです。チャレンジできる環境であって、コーチ陣からも失敗してもいいと言ってくれるので安心してできるのだと思います。

チームのためにリーダーシップを活かして

最後に、佑志朗さんのこれからの目標や将来の夢についてまとめていく。まずはバスケットボール選手としてのプレー面や目標についてだ。

得意なプレーはトップで周りに指示出して、チームの特性を活かそうとしたり、相手が気づかないうちにノーマークをつくったりすることです。

オフェンスの駆け引きに課題があると思います。他の人を動かしていくことが多かったので、自分で駆け引きして攻めることや、相手が上手な人のときでも、そこで自分で攻めれるように意識しています。練習で、お母さんにディフェンスとして立ってもらい、いろいろな技を練習して、そこで使えそうだなと思うものを練習や試合で使おうとしています。

まるで試合をコートの上で指揮するように、試合の中でチームのためにプレーしたいと考えている。そう思っている背景には一体何があるのだろうか。

憧れている選手は、川崎ブレイブサンダースの藤井祐眞選手と横浜ビー・コルセアーズの河村勇輝選手です。自分はオフェンスよりディフェンスが得意で、藤井選手のしつこいディフェンスと周りの気持ちを盛り上げる姿をみて、自分もそういうふうになりたいと思っています。また、自分はガードになりたいと思っていて、河村選手の自分で行くときとパスを出す時の判断が本当に早くて、どうやったらああなるのかを考えています。自分もガードになりたいと思っているので尊敬しています。そんな選手たちのように、自分も活躍できるよううまくなりたいです。

自分の目指すロールモデルの活躍に、佑志朗さんももっと頑張ろうと活力に変えているのだろう。そのような選手の背中を追って、なりうる最高の自分になるために、佑志朗さんはこれからバスケットボールと向き合っていく。

まず声を出して、リーダーシップを発揮して、周りを盛り上げられる選手になりたいです。チームでも練習会でも意識してやっていきたいと思います。このことはバスケットだけでなく、日常でも活きると思っていて、学校でも役立てていきたいです。学校でも掃除の時間で声をかけて、先生に褒められるぐらい掃除の時間をしっかり過ごすことができました。」と、コート上だけでなく、学校を含めた日常生活全体でなりたい自分のために努力をしていきたいと語っていた佑志朗さん。その強い決心は、きっとこれからの進む道を照らす後押しとなるだろう。

もらった夢や希望を次なる世代へ届けたい

ここからは佑志朗さんの将来の夢について伺った。

2つあるんですけど、1つ目はコーチになりたいです。そして、2つ目は自分がプロ選手になって、未来の子どもたちのために楽しくバスケットをできる環境を増やしたいです。

と、2つの夢を語ってくれた。どちらも、未来の子どもたちのために貢献したいという想いがとても伝わる内容である。小学生にして、そう思うようになったきっかけは一体なんだろうか。

水野コーチや和輝コーチに出会って、自分がチャレンジできるようになって変わっていったことを自覚しています。そうやって挑戦できない子に自分もいろんなことを教えてあげて、うまくしてあげたいと思っています。2つ目の方は、テレビで他のスポーツについて取り上げられているのを見た時に、世界中には道具が揃わない中でもスポーツをしている子どもたちがいるのを知って、そういう子たちが十分にバスケットができるように、楽しくスポーツと向き合えるようにしたいと思います。

普段関わる影響力の大きいコーチとの出会い、それによって変わった自分。そういった1つ1つの出来事が佑志朗さんに希望を与え、その希望を次の世代に与える立場になりたいという。その『したい』という想いこそが、佑志朗さんを夢へ近づける糧であり、きっと夢に向かって進んでいくのだろう。また、自分の見えている世界だけでなく、見えない場所にも関心を向け、そこでの気づきを活かし、貢献したいと思うその精神は、佑志朗さんを応援したいという周りからの支援につながることだろう。

これからの佑志朗さんの夢を心から応援したい。

母・まみさんからは

これから夢にむかってどう過ごしていくのか、子どものスポーツのすすめにも書いてあるようなことも理解して、周りにいい影響を与えられるような人になってほしいです。もうちょっと積極的に挑戦できるような姿をみせてくれると嬉しいなと思います。コーチになりたいというのは前から聞いていましたが、もう1つの夢は初めて聞いて驚いています。いい出会いがあったからこそ、具体的な夢に変わっていて、それを行動に移して、成長していってほしいなと思います。

最後にメッセージ

最後にこれから8スターズ獲得を目指す選手たちへのメッセージとお世話になった方々への気持ちのこもった言葉を頂いた。

8スターズ獲得を目指す選手たちへ

大変だったけど、諦めないでやっていれば8スターズになれるから、検定頑張ってください。

水野コーチへ

小さなことでもいつも褒めてくれて自分のやる気に繋がりました。これからもよろしくお願いします。

竜一コーチ

いちばん大切なシュートを狙うことを教えてもらいました。自分はシュートが苦手だったけど、自信に変わりました。ありがとうございます。

和輝コーチ

いつも練習のプラスαを教えてくれて、新しい気づきを教えてくれてありがとうございます。和輝コーチに教えてもらったことができるようにしたいです。

お父さん・お母さん

いつも応援してくれてありがとう。くじけそうなとき背中を押してくれてありがとう。自分の力でロープを引きちぎります。これからもよろしくお願いします。

PROFILE

名前:加藤 佑志朗(カトウ ユウシロウ)

生年月日:2011年08月19日生まれ

出身:千葉県千葉市

TEXT_藤田 麗奈

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