「できない」に向き合った先にあった成長

今回の物語の主人公は現在中学2年生の高橋結愛(たかはしゆうあ)さん。結愛さんは中学2年生の6月に8スターズを達成した。
そんな結愛さんの8スターズ獲得までの道のりやバスケットにどう向き合っているのか、そしてこれからの目標などを伺った。

壁にぶつかったからこそ、挑戦できた

ERUTLUCには練習会で取り組んでいる7項目の技能検定がある。この技能検定は自主練習の延長として、子どもたちが主体的に取り組みながらなりうる最高の自分を目指していくことをねらいとしており、技能検定はそれぞれ初級者向けの7級から高難度の1級までで構成される。それぞれの級の内容をすべてをクリアするとその級の星をもらうことができるシステムで、この7つの星に、ある条件を達成すると獲得できる幻の星を加えた8つの星を揃えると、『8スターズクラブメンバー』に認定され表彰されるものである。

はじめに、この8スターズを獲得する条件の一つである技能検定について結愛さんに伺った。

「得意だったのはテニスボールです。ミニバス時代から似たようなメニューに自主練で取り組んできた経験があったので、テニスボールの課題は比較的スムーズにクリアできました。
苦手だったものはコーディネーション・レイアップレイヤー2です。2つのボールを同時にコントロールするのが本当に難しくて、クリアするまで時間がかかりました。」

小学6年生から検定カードに取り組み始め、中学生用の6号球・リングの高さでのクリア条件も難易度を押し上げていた。

うまくいかないときほど気持ちを切り替える工夫をしていたと語る結愛さん。

「あと何回やってできなかったら、別の項目に行こうと、自分の中でルールを決めることで、気持ちが折れすぎないようにしていました。」

また、中1までに終わることを目標に母親と話し合いながら逆算し、月に最低2項目を終わらせることを目安に進めていったと語る。
途中でペースが落ちた分、完了時期は少し後ろ倒しになったものの、計画的に取り組む姿勢は最後まで崩れなかった。

母・麻衣子(まいこ)さんは、結愛さんの変化をこう語る。
「もともと目標に向かって考えながら取り組めるタイプではありました。でも、今までは“できないこと”があっても、バスケ自体はできていたんです。技能検定カードでは、網羅的なスキルの中にどうしても避けられない苦手分野がありました。それを無視せず、努力を重ねてクリアできた経験は、彼女にとって大きな成長だったと思います。」

小学生の時にはできないことから逃げる選択もできた。
しかし今は、努力しなければ超えられない環境の中で、逃げずにチャレンジすることができた。

技能検定カードは、技術だけでなく、向き合う力・続ける力を育てる時間だった。
その積み重ねは、これからのバスケットボール人生の大きな土台になっていくだろう。

行動に移した“その一歩”

8スターズクラブメンバーに認定されるための条件には、技能検定の他にもう1つある。それはエルトラックの練習会に通う子どもたちに配られる冊子『子どものスポーツのすすめ』に書かれている内容をアウトプットすることだ。

エルトラックでは、学んだことをインプット(知ったり、学ぶこと)したり、アウトプットしたりする(誰かに話す)ことを大切にしている。『子どものスポーツのすすめ』はスポーツをする選手としてだけではなく、これから社会への貢献や活躍に向けて成長していく子どもたちが大人になっても必要になる考え方を学ぶことができる。その内容をアウトプットすることを通じて、結愛さんが印象に残っている話や学びになった話は何だったかを伺った。

この冊子には、これから成長するために大事な考え方や物事の捉え方など、様々なことが書かれている。話を聞くだけでなく、誰かに話すことでより深く理解し、身に付けることができる。

結愛さんに一番印象に残っている話を聞いてみた。

「印象に残っている話は『コンフォートゾーンから出よう』という話です。この話を聞いて、同級生と一緒にやるのって、安心領域なんだなって気づきました。」

『コンフォートゾーンから出よう』という話は、恐怖や不安を感じる場所、いわゆる「恐怖領域」に踏み出すことで、その先にあるラーニングゾーン、成長領域へとつながっていく話である。

結愛さんは中学1年生の頃、無意識のうちに同級生と組むことが多かったという。年上の選手と組むことに対して、怖さや不安があり、どこか距離を置いてしまっていた。
しかし、この冊子を読んだとき、その行動が安心していられる場所にとどまっていただけ”なのだと理解し、それがすごく腑に落ちて、印象に残っているとのことだ。
そして、中学1年生の終わり頃から、そして2年生になった今、意識的に上級生と組む場面が増えていった。

「正直、自分のできなさをすごく思い知らされます。」

それでも逃げずに挑戦する。コンフォートゾーンから一歩踏み出したことで、課題がより明確になり、自分と向き合う時間が増えていった。

結愛さんにとって『スポーツのすすめ』は、小学生時代にあった「逃げちゃえ」という気持ちを、少しずつ変えてくれる存在だったという。
文章として目に入ってくるからこそ、自分の弱さや当てはまる部分を客観的に見つめることができる。さらに、それを言葉にして保護者に伝えアウトプットする機会があることで、「変えようとする意識」がより強く芽生えていった。

母・麻衣子(まいこ)さんは
「技術以上に大きいのは、壁にぶつかったときの向き合い方を学べたことです。行動しない選択もできる中で、あえて行動する。その先に、自分のやりたいことが広がっていく。『スポーツのすすめ』の内容は、まさに心技体の「心」に響くものでした。弱さを自覚し、それを変えることで得られる成長を、本人自身が実感でき、ここに入って、本当に良かったと思っています。」

仲間から受ける、良い影響

ここからは結愛さんがエルトラックと出会ったきっかけ、そして結愛さんが通うクラブでの思い出や学んだことについてまとめていく。
はじめに、結愛さんがエルトラックのクラブ(H4H)に通い始めるようになったきっかけを語ってくれた。

H4Hを知ったきっかけは、ミニバスの先輩の存在です。中学校でどのチームでプレーするかを考えていた時期、一つ上の先輩がH4Hに所属していて、その話を聞く中で興味を持ちました。トライアウトを受けようと決めた理由は、全員が声を出して、選手自身で雰囲気を作っているところが体験練習で感じてすごくいいなって思いました。」

その空気感が、ここで挑戦したいという気持ちを後押しした。

クラブチームに参加し、多くのことを学んだという結愛さん。果たしてどんな変化があったのだろうか。

「2年間で、最も大きな変化はディフェンスへの意識です。小学生の頃から苦手で、正直好きではなかったです。でも、H4Hでは高いレベルのディフェンスが当たり前に求められるので、「ついていきたい」と思い、フットワーク練習にも真剣に向き合うようになりました。」

また、H4Hのメンバーはやりたくないことや、きつい練習にも率先しているとのこと。周りの取り組む姿を見て、影響を受け、自然と自分の気持ちを切り替えられるようになったと結愛さんは語る

「日々の積み重ねが、少しずつ自信につながっている。自分より上手な選手が多いからこそ、自分の強みを発揮したいです。」

バスケの先にある、大きな夢

まずは、バスケットボール選手としての結愛さんについてせまる。
自分自身のプレーについて尋ねると、結愛さんは迷いなくこう答えた。

「得意なのは、インサイドのディフェンスと力強いプレーです。」

ゴール下で身体を張るディフェンス、当たり負けしないフィジカル。これまで積み重ねてきた経験が、プレーの随所に表れている。
今後、どんなプレーを身につけていきたいか聞くと、

「ドライブする時に、ディフェンスを見て判断することです。 それと、1線のプレッシャーのかけ方や距離感は、まだまだ直していきたいです。」

得意なことに甘えず、できていない部分から目を背けない。その姿勢こそが、彼女の成長を支えているのだろう。

さらに、憧れるバスケットボール選手について尋ねると、名前を挙げたのは、高田真希選手。

「センターポジションでありながら、 外からのドライブ、3ポイントシュートにも積極的にチャレンジする。インサイドだけじゃなく、いろんなことができるのがすごいなって思います。」

そして将来、どんな選手になりたいか聞くことができた。
その答えもまた、明確だった。

「一緒に出ている5人の中で、どこのポジションでもできる選手。誰からでも得点を取ってくれるようなオールラウンダーになりたいです。」

チームの状況に応じて役割を変えられる存在。
それは、彼女自身が目指す選手像と重なっている。

母・麻衣子(まいこ)さんからみても
「目標を立てること・達成すること・失敗して、次に活かすこと。それは、スポーツに真剣に向き合わなければ得られない経験だと思います。そのすべてが、今しかできない大切な経験だと感じている。」

そして、バスケットボールに限らず、将来の夢についても語ってくれた。

「将来は小児医師になりたいです。そこにたどり着くためには努力しなきゃいけないって思います。」

バスケットボールと勉強の両立は、決して簡単ではない。
それでも、高い目標があるからこそ、困難は“当たり前のもの”として受け止めている結愛さん。

これからどんなふうに成長してほしいかを尋ねると母・麻衣子(まいこ)さんは
「自分でやりたいって決めたことを、最後までやり遂げてほしい。苦手なことから逃げずに向き合うこと。そして、何かあった時も「出た出た」と笑えるくらい、楽しんでほしい。」

困難に出会ったときこそ、これまで積み上げてきた経験を信じて頑張ってほしい。
バスケットボール選手として、そして一人の人として、この先どんな成長を見せてくれるのかとても楽しみだ。

最後にメッセージ

最後に結愛さんからお世話になった方々へ 、8スターズ獲得を目指す後輩たちへ、それぞれにメッセージをいただいた。

H4Hのコーチ陣へ

「1年生の頃から自分の苦手なところをずっと指摘し続けてくださったおかげで技術面であったりとか精神面の成長ができていると思います。ありがとうございます。
そしてクラブとしてはあと1年半の活動にはなるんですけどその中でもその後でもそのたくさん成長するために頑張ります。」

8スターズ目指している後輩たちへ

「自分が取得したいという目標を決めたからにはそこをクリアするべく多大な努力をしてでもやり遂げてほしいと思います。」

PROFILE

名前:高橋 結愛(タカハシ ユウア)

生年月日:2011年5月23日生まれ

出身:千葉県浦安市

TEXT_宮野 結音

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