
今回の主人公は小学5年生の上田莉愛(うえだ りあ)さん。8スターズ獲得を目指して練習に励んだ選手である。
「難しい内容がたくさんあって、最初はちょっと難しくて取れないかなとか思っていたけれど
やっていく中でどんどんできてきて、結果的に8スターズを取れて嬉しかったです。」
そう語ってくれた莉愛さんのこれまでの頑張りと将来に向けた想いがたっぷり詰まった記事になっている。
1人では達成できなかった
ERUTLUCは『より多くの子ども達がなりうる最高の自分を目指せる環境を提供する』ことを理念に活動している。
ERUTLUCには練習会で取り組んでいる7項目の技能検定がある。この技能検定は自主練習の延長として、子どもたちが主体的に取り組みながらなりうる最高の自分を目指していくことをねらいとしており、技能検定はそれぞれ初級者向けの7級から高難度の1級までで構成される。それぞれの級の内容をすべてをクリアするとその級の星をもらうことができるシステムで、この7つの星に、ある条件を達成すると獲得できる幻の星を加えた8つの星を揃えると、『8スターズクラブメンバー』に認定され表彰されるものである。
はじめに、この8スターズを獲得する条件の一つである技能検定について莉愛さんに伺った。
「得意だったものはノーマルレイアップでした。レイアップのシリーズは全体的にクリアしやすかったです。苦手だったものは体幹です。特に1級に苦戦しました。」
1級の内容は、ボール4つの上に、それぞれ手足の4点を乗せ、ボールに乗った状態でプッシュアップを行うという、バランス能力や体幹など、総合的な基礎能力が求められるものになっている。私たちはこのトレーニングを”ギャノンプッシュアップ”と呼んでいる。これにはこれまで8スターズを獲得してきた多くの選手も苦戦をしてきた。

技能検定の練習エピソードを莉愛さんに伺った。
「ボールの上に手足を乗せることが、そもそもバランスが取れなくてボールの上から落ちてしまったり、あともうちょっとで出来そうなところで失敗したりしていました。その度に悔しいなと思いながら練習していました。技能検定の練習は主に自主練でやっていて、その時に私のお父さんに撮影をしてもらって、その映像を練習会のコーチやSufu(スポーツ動画練習サイト)を使って見てもらっていました。ギャノンプッシュアップの時はお父さんに手伝ってもらって、ボールを支えてもらったり、足の場所をどこに置くのか考えながらアドバイスを貰ったりしてやっていました。」
積極的に時間を見つけて技能検定の練習に励んでいた莉愛さん。周りの人からの意見も取り入れ、自分には何ができていて、何がまだ達成できていないのか考え、計画的に取り組んでいた様子が伺える。その遂行力が莉愛さんが長い期間をかけて掴んだ8スターズ獲得へとつながっているのだろう。
そんな莉愛さんは技能検定を練習しながら嫌になった時期もあったという。その時にどう向き合っていたのだろうか。
「技能検定を練習しながら、自分の苦手なものが入ってきて、最初に見たときに難しくてできないだろうなと思っていました。無理だなと思っていたけれど、練習していたらクリアしていけました。」
技能検定の練習の中で、壁にぶつかることもあったのだろう。途中で難しいかなと思い、その葛藤に苦しんでいた莉愛さん。その葛藤を乗り越えた莉愛さんの背景には一体何があったのだろうか。
「周りにいる友達はどんどんクリアしていっているけど、自分はまだ全然クリアできていなくて、そこに追いつくために頑張ろうと練習していました。映像を撮影して提出することもあったのですが、その時はお父さんに撮影をしてもらっていました。その時もあとちょっとで出来るというところで失敗して悔しい思いをたくさんしてきました。失敗した時はお父さんからもアドバイスをもらって意識して練習したり、撮影したりして、協力してやっていたと思います。」
莉愛さんの周りにいる仲間や家族からの刺激が莉愛さんにとって、頑張れる活力に変わっていたのだろう。周りにいる人の存在が莉愛さんをより強くしていたのではないだろうか。
「獲得するのに2年間ぐらいかかって、やっとの獲得でした。時間があるときには体育館を借りて、その時に一緒に練習していた子と協力をして練習していました。今ではいい思い出です。」
1人でできることは限られている。だからこそ、仲間と協力をして取り組むことで1人では成し遂げられなかったことが達成できていく。莉愛さんの中にある競争力が成功へと導いていたのだろう。そんな環境や仲間の存在が莉愛さんの目標達成の活力に、莉愛さんの達成したいという想いの強さになっていたのではないだろうか。
壁にぶつかっても乗り越えるための考え方
8スターズクラブメンバーに認定されるための条件には、技能検定の他にもう1つある。それはエルトラックの練習会に通う子どもたちに配られる冊子『子どものスポーツのすすめ』に書かれている内容をアウトプットすることだ。
エルトラックでは、学んだことをインプット(知ったり、学ぶこと)したり、アウトプットしたりする(誰かに話す)ことを大切にしている。『子どものスポーツのすすめ』はスポーツをする選手としてだけではなく、これから社会への貢献や活躍に向けて成長していく子どもたちが大人になっても必要になる考え方を学ぶことができる。その内容をアウトプットすることを通じて、莉愛さんが印象に残っている話や学びになった話は何だったかを伺った。
「印象に残った話は『マインドセット』というお話です。このお話の中に困まったマインドセットと成長マインドセットと出てくるのですが、そこの困難に立ち向かう時にはどういう考え方をするかというところで、諦めるのではなく、辛抱すると書いてあるところが印象に残っています。」
マインドセットとは『困まったマインドセット』と『成長マインドセット』の2つがあり、スポーツ選手としてどちらのマインドセットの方が成長できるかがまとめられている。技術・知識の習得、努力の仕方など、その状況に応じてどのようなマインドセットでいることが成長へつながっているのかを学ぶことができる。
この話を聞いて莉愛さんの行動に変化が現れたという。一体どんな変化なのだろうか。
「シュートがなかなか入らなかったり、自分の思う通りに良いプレーができなかったりして、そこの壁にぶつかることがあっても諦めるのではなく、その壁を乗り越えるって意識をして行動に変えていました。」

成長マインドセットを意識して取り入れて実行に移し、自分の中で行動が変わったと認識できている莉愛さんの意識はとてもすばらしいものだ。なかなか自分の意識の変化から行動の変化を感じ取ることは簡単ではないだろう。
何事も取り組んでいる先で必ず壁にぶつかる。ぶつかっても、どうすれば達成できるのかを考えて行動していくことが成長に繋がり、成功につながっていくのだろう。その学びを『子どものスポーツのすすめ』から取り入れている。そんな学びの1冊になっていることは、我々にとっても嬉しいことだ。
8スターズクラブ受賞までの取り組みを近くで見ていた父・幸路(ゆきのり)さんは
「5年生になってから体育館を借りて本格的に練習するようになっていたと思います。練習会に通う先輩で、5年生で先に獲得している子もいて、その子を目標に目指して頑張ってほしいと思っていました。それで、その目標を達成していたので、本人も頑張ったと思います。」
様々な発見を自分の力に変える
ここからは莉愛さんとエルトラックとの出会い、そして練習会について話を伺った。莉愛さんがどのようにエルトラックと出会い、どのようなことを学んでいったのだろうか。
まず莉愛さんがエルトラックとの関わりをもったきっかけを聞いた。
「お友達に誘われて体験に行きました。最初は入るか入らないか迷っていて、体験の日から2ヶ月ぐらい経ったところで、チームの先輩がそのスクールに通っていると教えてくれて、一緒にだったら入ろうかなと思って入りました。」
そこから千葉金曜教室に通い始めた莉愛さん。そこでの思い出を伺った。
「その練習会で出会った友達との時間が思い出です。その友達と助け合って練習会でも一緒にやっていて、それがすごく印象に残っています。練習会で一緒にやっている子と試合会場で会ったり、戦ったりできて、中にはその試合の時に上手だなと思っていた子が同じ練習会に通うようになったこともありました。」
様々な仲間との出会いが莉愛さんにとって大きな出来事だったのだろう。普段のチームでの活動ではライバルになる人が、練習会では仲間として切磋琢磨して練習に取り組み、お互いに成長していっている。そんな出会いの場所として莉愛さんに貢献している。そんな莉愛さんが練習会で意識して行っていることを伺った。
「練習会で月ごとにテーマがあって、その中でいろいろなことを教えてもらうんですが、それを実際に試合の中でできるように意識して練習しています。1on1での相手の抜き方とかシュートの仕方などを、これまで教えてもらって、それは上手くできたこともありました。」

ここでの学びを普段のチームに活かせるように、週に1回の練習会で意識を高くして取り組んでいるという。目的があるからこそ、練習したことを吸収して実行できるところまで変化が現れているのではないだろうか。
そんな新しい出会いや刺激のある場所で、莉愛さんが学んだもの、得たものは一体なんだろうか。
「インサイドでのプレーについてすごく学ぶことができました。ミニバスを初めて最初はインサイドでのプレーの経験がなかったので、練習会で練習できて良かったなと思います。特に、プレーのスタイルがアウトサイドでプレーしているときと変わったり、相手へのフェイクの仕方も変わったりするので、相手を見てプレーを選択することの大切さを学べました。」
普段プレーしない内容を自分ごとに捉え、やってみようという積極性はすばらしいものだ。できることに満足せず、さらなる成長に向かって日々を過ごしているのだろう。そんな莉愛さんの成長がこれから楽しみである。
練習会での様子や変化に関して父・幸路(ゆきのり)さんは、
「ドライブ力が高まったと思います。本人はそれ以外のことを取り上げて話していますが、総じてバスケットボールをする上での必要な技術がすごく成長したのかなと思います。相手を見てプレーをするということ、無理なシュートをすることがなくなりました。自分も一緒に自主練習を手伝うこともあって、その時に相手としてやっているので感じるのですが、相手をよく見てるなっていう感じがしましたね。無理やり行きたい方へドライブしてしまうとか、不必要にゴール下まで行ってしまってブロックされるみたいなシチュエーションではなく、相手を見て、そのようなプレーをしなくなってきたっていうところは良い変化だと思います。そうなったのは千葉金曜練習会のおかげだと思っております。」
自分の目指す目標に向かって走り続ける
最後は莉愛さんのこれから、未来に向けての目標や頑張りたいことを伺った。次の4月から6年生になる莉愛さん。小学校生活最後の1年間をどう過ごし、次のステージに向かってどのような目標があるのか、莉愛さんの想いについて迫る。まずは、バスケットボール選手としての莉愛さんの思いを伺った。
「得意なプレーはドライブからのジャンプシュートかなと思います。課題としては、まだドリブルが弱いときもあるので、強くドリブルをつくことを意識していきたいです。そして、力強いプレーやドライブにつなげていきたいです。」
莉愛さんの強みになっているドライブ。それをもっと強みにしていきたいからこその課題なのだろう。続いて憧れの選手について伺った。
「あこがれの選手は町田瑠唯選手(Wリーグ、富士通レッドウェーブ所属)です。相手が油断するとシュートを打ったり、鋭いドライブをしたり、そこから相手が自分に寄ってきた時にフェイクしながらパスしたりするプレーがすごく上手だなって思っていて、憧れています。あと、渡嘉敷来夢選手(Wリーグ、JXサンフラワーズ所属)にも憧れています。存在感があって、チームに必要とされるプレーをしていて、私もそんな選手になりたいです。」

憧れの選手のプレーが莉愛さんにとって目指したいプレースタイルであり、それを習得できるように日々の練習を一生懸命行っているのだろう。そんな莉愛さんが目指すバスケットボール選手像とはいったい何だろうか。
「ボールを持った時に外からシュートを決められたり、中にドライブしてゴール下付近でシュートを決められたり、外も中もどっちでも得点できるような選手になりたいです。そして、選手としてみんなから信頼されて認めてもらえるような選手になりたいです。」
バスケットボール選手としてコートの中でも外でも、頼られる選手を目指している莉愛さん。普段からその意識をもって、練習に励んでいるのだろう。言葉の力は偉大であり、何を目指しているか、それを習慣として取り組み続けることができるか、それが成長するうえで必要な要素の1つである。そのことを理解し、日頃の生活に意識をして取り組んでいる莉愛さんなら、目指す選手像に向かって1つ1つ階段を登っていくのではないだろうか。
最後に莉愛さんの今後の目標、将来の夢について伺った。
「将来は憧れの選手に会えるようにプロ選手を目指したいです。そのために今、所属しているところで活躍をしてみんなから信頼されて頼られるような選手を目指していきたいです。」
莉愛さんの将来について父・幸路(ゆきのり)さんは
「バスケットボールができるような環境で、ずっとこの先も続けてもらって、プロになる・ならないよりも、大人になってもずっとバスケが好きでいてほしいなと思います。色々なところでバスケをやってもらいたいかなっていう想いもあります。小学校1年生から始めて、ここまで努力したものは続けていってほしいです。」
幼い頃の経験は、これから成長していく過程できっと大切な糧となって莉愛さんに返ってくるだろう。思った結果が出なくて悔しい思いをしたり、目指していたものを達成し嬉しい気持ちになったり、色々な経験が莉愛さんの強み、糧になる。そうなるように、これからの時間を有意義に過ごしていってほしい。
最後にメッセージ
最後に莉愛さんからお世話になった方々へのメッセージ、8スターズクラブを目指す後輩たちへのメッセージを頂いた。
・関わったコーチたちへ
「私に色々な技術を教えてくれてありがとうございます。おかげで8スターズを取ることができました。とても感謝しています。これからもよろしくお願いします。」
・8スターズクラブを目指す後輩たちへ
「技能検定ではたくさん難しいことがあるけど、諦めずに最後まで、8スターズが取れるまで頑張って欲しいと思います。」

名前:上田 莉愛(ウエダ リア)
生年月日:2012年08月02日生まれ
出身:千葉県千葉市