どういう場面でも自分だけじゃなくて周りの人のことを考えながら

8スターズを達成した選手は、「8スターズ獲得」という1つの目標を達成し、それぞれが次なる目標へ進んでいる。
皆、新たな目標を前に様々な課題に立ち向かっていることだろう。

今回は、8スターズを獲得し次なるステージへ進んでいる選手のその後をインタビューした。

23番目の8スターズ達成者となったのは、現在高校1年生の古内瑚夏(フルウチコナツ)さん。

中学3年生の卒業前3月に8スターズを達成し、エルトラックの殿堂入り選手の1人となった。

小学校から始めたバスケットボールを高校に進学した現在も続けている。
中学卒業までにたくさんの努力を積み重ねてきた成果を8スターズクラブ達成という形あるもので示し、新たなステージへと進んでいった。

瑚夏さんは現在多くの課題に直面しているというが、それをどのようにして乗り越えているのか、そして、努力の積み重ねで手に入れたものは何か、軌跡を辿っていく。

なりたい自分に近づくために

当時中学3年生だった時の瑚夏さんの目標は、

「強豪校に行き、そこで自分を出して強みを発揮すること。自分の強みは45度からの左ドライブで、これからはキックアウトからの3ポイントシュートを強みにしたい。」

そう掲げていた。

「スリーポイントシュート率の高いシューターになりたい」と自分のなりたい姿をイメージし、次のステージに向けて意欲を燃やしていた。

瑚夏さんは目標に掲げていた高校に見事進学し、現在その高校のバスケットボール部に所属。毎日多くの仲間とバスケットに熱を入れた日々を過ごしている。
瑚夏さんと同級生であるバスケ部1年生の部員数は、プレーヤーで16名。
その中でも瑚夏さんと同じポジションのプレーヤーが半数ほどいるとのことで、とても競争率が高い中で奮闘している。

バスケットボールはコートに立てるプレイヤーが5人、ベンチ入りできるプレイヤーは15人。
上級生のプレイヤー数も多いため、ベンチメンバーに入ることも容易なことではないという。

しかし、瑚夏さんはそんな状況でも立ち向かおうとしている様子が伺えた。

「大変だけど、これからやっていけるのか?とは思いません。チームの中でも3つのチームに分かれていて、チームを落とされてメンタルが落ちることもあります。
それでも、私のモットーは”できるまでやればできる”だからそれを支えに頑張っています。」

瑚夏さんの揺るぎない意志を感じ、インタビューをしたこちら側も身が引き締まる思いだ。
瑚夏さんの強さや意志はどこからきているのかその原点に迫っていこうと思う。

チームでプレーするために大切なこと

瑚夏さんがバスケットボールを始めたのは小学2年生の時。エルトラックのスクールには小学3年生の7月から通い始めた。

「個人だけじゃなくて、チームでも考えられるようにと思って通うことを決めました。」

そうスクールに通い始めた当時を母・由香里(ユカリ)さんと振り返っていた。

”チームで考えられるように”と目的を持ってスクールに通い始めた瑚夏さん。
チームにとって大切なことはなにか、どうすればいいチームワークが築けるか、幼いながらに自分なりの答えを探し求めていた。

スクールで週1回だけ会う仲間達との練習を重ねて、

「ハイタッチをすることでお互い笑顔になったり、チームで一体感が出て楽しくできたりするので、とても大切なことだと感じました。チームでも実践して、いい雰囲気で練習や試合ができました。」

練習を重ねていくごとに、瑚夏さんはチームにとって大切なことを自分なりに見つけていった。

エルトラックの練習では、練習を共にする仲間同士、コーチ達とハイタッチをするという文化がある。
1つのプレー後やメニューの終わりなどに良い練習をしたお互いを称えるのだ。お互いに目を合わせ、手を合わせることで”自分だけ”でプレーしているのではなく、”私たち”でプレーしている意識が芽生えてくる。

この”私たちが”という考え方がチームワークを高めるための重要事項であり、瑚夏さんはそれを体現してチームの士気を高めていった。
ムードメーカー的な存在で笑顔でチームを盛り上げる瑚夏さんの姿が今にも目に浮かんでくる。

人を思う選手の周りには仲間が集う

チームを思い、笑顔が似合う瑚夏さんも思い通りにいかず落ち込むこともあり、高校進学後の部活動では多くの課題に晒される日々だという。

「できないことが多すぎて、メンタルがやられます…」

と少し弱気な発言だった。

しかし、瑚夏さんは簡単に挫けることはなかった。

「落ち込んだ時には誰かにそのことを言って、できなかったことを友達と『しよ』って言って練習しています。最近だと、練習前に2時間くらい時間があって、その時間みんなは休んだりしているけど私は友達と練習しています。できないことが多くて気持ちが下がるけれど、モットーは”できるまでやればできる”だからそれで頑張っています。」

目標にしていた高校の部活動に所属し、そう簡単に諦められるはずはなく、積み重なるできないことにも立ち向かっている。
この困難に立ち向かう強さの源には支えてくれる仲間の存在があった。
自分が苦しいとき、どうしようもないときにそれを分かち合ったり支えてくれる仲間の存在はとても大きなものだ。チームを大切にする瑚夏さんだからこそ、周りにはそんな仲間が集まるのだろう。

「”できるまでやればできる”という自分のモットーが支えになっています。あとは、キツいときに一緒に練習する1年生の仲間がいるのが私の支えです。」

自分が支えてもらっている言葉や存在を再確認し、これからもどんな困難があっても乗り越えていくのであろう。

中学3年生のときにインタビューさせてもらった際、バスケのプレー中に意識していることとして、

「仲間のことを理解するように意識してプレーしています。相手のことを理解して、自分も理解してもらうことでいいチームプレーができると思っています。」

と答えた。

相手を理解するという心構えが自ら相手に働きかける行動につながっており、この働きかけによって周りの仲間の信頼を得ているのであろう。

また、瑚夏さんは、

「どういう場面でも自分だけじゃなくて周りの人のことを考えながらプレーする。」

と、自分のなりたい姿を話してくれた。

”チームを良くしたい””もっと活躍したい”そう思うことは誰にでもできる。しかし、思うだけではそうなってくれない。
瑚夏さんはその思いを実現するための手段を見つけ、それを行動に移していた。
仲間を理解しようとする働きかけは仲間からの信頼につながる。そして、自分が行き詰まったときにそれが自分を支えてくれるものとなるのだ。

結果を生み出すためにひとつひとつ積み重ねること

前述でも繰り返しでてきた”できるまでやればできる”という瑚夏さんのモットー。
ともに頑張れる仲間と、このモットーが揺るぎない信念と強い意志を支えているのだろう。

できないことに遭うと、はじめは誰でも”もうやりたくない””本当にできるようになるのか”と思うものである。瑚夏さんもエルトラックのスクールに通い始めてから、多くの”できない”を経験してきていた。

「新しいことが多くて、はじめはできないことが多かったです。」

そう通い始めた頃の様子を教えてくれた。

ERUTLUCのスクールでは、毎週の練習の中で「子どものスポーツのすすめ」という冊子を読み進めていく。
瑚夏さんも小学生の頃から通っていたスクールで何度もこの冊子を読んでいた。

その中のあるエピソードが瑚夏さんの心に響いたという。

『ガチョウと黄金の卵』のイソップ物語を聞いたことがあるだろうか。
簡単にその物語を紹介する。

「ある貧しい農夫が、飼っていたガチョウの巣の中に黄金の卵を発見した。
疑って市場まで持っていったが、それは純金の卵で、翌日も同じことが起きた。来る日も来る日もガチョウの巣から新しい黄金の卵を発見し、やがて農夫は大金持ちになった。
ところが、農夫は富が増すにつれて欲が出て、1日1個しか生まれない黄金の卵が待ちきれず、ついにガチョウを殺し、腹の中の卵を全部一気に手に入れようと決めた。
いざガチョウの腹を開けてみると、中は空っぽだった。
黄金の卵を手に入れることができなくなったことに加えて、それを手に入れる手段さえも農夫はなくしてしまった。
黄金の卵を生み出してくれるガチョウを殺してしまったのだった。」

スポーツ選手として、とても大事なことを教えてくれる物語だ。

この物語を聞いて、

「体を動かすのがあまり上手ではなかったです。でも、目の前のことをひとつひとつできるように頑張るとできるようになっていきました。急にはできるわけじゃなくて、コツコツ取り組むことが大切だと思います。」

と、すぐに結果は出なくても目の前のことに一生懸命取り組むことの大切さを努力家の瑚夏さんが教えてくれた。

”これは苦手だ””できるようになるだろうか”と自分の可能性を疑ったときには、この瑚夏さんのエピソードを思い出してもらいたい。
きっと挑戦する勇気をもらえるだろう。

自分の欲しい結果を手に入れるためには、それを生み出す資源を大事に育てていく。自分自身の身体、考え方、仲間、信頼関係など、目には見えないものだが大事に育てていくことでそれが未来の自分をつくっているのだ。

瑚夏さんはエルトラックのスクール以外でもバスケットボール活動をしていて、エルトラックにもたくさんのコーチがいるが、それ以外の環境でもいろいろなコーチや大人と出会っている。

現在はまた新たに競争率の高い環境で次々と出てくる課題と向き合っている最中だ。

今まで積み重ねてきたことが今の瑚夏さんを支えていることから、”これはしてきてよかった”と思うことを聞いてみた。

「いろんなプレーや戦略を知っていて、監督に考え方は良いと言われます。それはいろんなところでやってきたから、いろんな考え方をもてたからだと思って、やってきてよかったと思っています。」

と様々な環境だからこそ学ぶことができたということを振り返った。
異なる環境でいろいろな仲間、大人に出会い、影響を受けながらバスケットボールに取り組むことで柔軟な考え方を身につけていった。

続けて、普段の練習でどのようなことを心掛けているのかを聞いた。

「全部のメニューを言われたことをちゃんと考えながらやるようにしています。」

この考え方ができるのも、「相手を理解する」という瑚夏さんの心掛けからつながっている。
ただ言われたことだけをやるのではなく、理解してから取り組むという心がけはより質の高い練習をするのには必要不可欠である。
瑚夏さんは仲間からの信頼だけでなくコーチや保護者の方からの信頼も得ていくに違いない。

さいごに

瑚夏さんが自分の目指していた高校に進学して大好きなバスケットボールに夢中になれるのも、家族の協力なしには成し得ないことだ。

母・由香里(ユカリ)さんの

「私は、応援して、見守るだけです。」

この言葉がとても印象深かった。
瑚夏さんの頑張りを陰で支える、強い母の愛情を感じた。

私たちもこれからの瑚夏さんの頑張りを応援し続けていきたい。

お世話になったコーチ達へメッセージ

新しい技術を教えてくれたり、基礎のところや応用、いろんな技術を教えてくれてありがとうございました。

PROFILE

名前:古内 瑚夏(フルウチコナツ)

生年月日:2007年2月15日生まれ

出身:神奈川県川崎市

TEXT_萱沼 美穂

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