部活を引退してから新しい環境である高校進学までに「8スターズを取りたい」と検定に取り組み、やり切りたいと決心。
そして見事有言実行したその1人が今回の主人公である山形 楓(やまがた かえで)さんだ。
8スターズの能力検定を限られた時間の中で獲得するのはそう簡単なことではないだろう。その困難を乗り越え、目標の達成を成し遂げた活力はどこから現れていたのだろうか。
彼女の8スターズ獲得までの物語をここにまとめていこうと思う。
中学の部活引退から卒業までに、8スターズを獲る
ここから、楓さんが8スターズを達成しようとする物語がスタートする。
始めに技能検定のエピソードを伺うことができた。
「得意なものはテニスボールでした。小学校の頃からバスケットボールでドリブルをしながらテニスボールを投げたりキャッチしたりしていて、慣れていたと思います。コロナで長い休校があったときも家の前で自主練をしていたので、中3で部活を引退した後にはスムーズにクリアすることができました。壁に当ててレッグスルーをしながら跳ね返りを予測するのは少し難しかったですが他のものに比べて比較的早くクリアしていきました。」
普段からハンドリングを鍛えるものを積み重ねていっていたからこそ、スムーズにクリアすることができたのであろう。しかし、苦戦したものもあったようだ。
「苦手だったのは体幹やストレッチのところです。元々体が固くて苦労しました。
同じスクールの子に柔らかくなるストレッチを教えてもらってそこから積み重ねてやっていたらできるようになり、合格したときは嬉しかったです。
ですが、部活を引退して卒業までに残りの検定をクリアしようと取り組んでいたけど中々クリアできずにいて、どうしようと悩むこともありました。」
と、苦手な体幹で諦めそうになったこともあったようだ。
その苦しい状態から、楓さんを後押ししたものは何だったのだろうか。そこからどのように取り組んでいったのだろうか。
「なかなか、クリアできなくて悩んでいる時に、当時6歳の妹が身体が柔らかくて難なくクリアしたんです。それを見て悔しいなと思い、そこから負けてられないと奮い立たされました。」
身近にいた妹の存在が楓さんに活力を与え、そこからさらに頑張ろうという熱い闘志があったからこそ、限られた時間の中での8スターズ獲得につながったのであろう。
「なかなか一気にクリアすることはできなくて、家では勉強で忙しい時もあったから、1日1日の中で一つでも多くクリアできるように練習に取り組んでいました。休校中で体育館での練習ができない時期は、エルトラックで出している技能検定の動画を見て、それを参考にしながら外で練習していました。」
思うように練習ができなかった時期での挑戦。そこに合わせて楓さんは勉強も一生懸命行うというまさしく文武両道で過ごしてきたこの期間。
ここには強い想いあったからこそ達成できたのだろう。8スターズクラブ獲得を達成できた楓さんの行動力を学びたい。
努力の原動力。そして、目指すものへ進む強い決心
8スターズクラブの認定には技能検定の他に、「子どものスポーツのすすめ」のアウトプットを行う。そのアウトプットの中で印象に残っている話を伺うことができた。
それは、「中国の竹の奇跡」というお話で、要約すると『竹が5年目に25m一気に伸びた』という話だ。
「今もし自分が成長の実感がなかったとしても、今は土の中で根を伸ばして土台を作ってるところだと思って努力を続けていきたいと思うようになりました。
例えば、スリーポイントシュートの練習で入ったり入らなかったりが続いて安定しない時があり、すぐには入るようにならないかもしれないけれど、続けていればできるようになると信じています。
フィニッシュについても、なかなか確実性が上がらないのですが、スクールでやっているコンタクトの仕方を参考に練習していけば、いつか入るようになると思っているので、頑張っていきたいです。」
と、努力を続けることの大切さを実感したきっかけになったという。
楓さんは続けて、
「実際に埼玉教室の先輩が練習メニューの終わりと始まりの間に走って行動をして、一回でも多く練習しようと努力している姿を見て、自分も真似しようと思い、そこから意識高く練習できるようになりました。」
練習の取り組み方に対する意識の変化が生まれたことも話してくれた。
この話のように、土台を積み重ね、将来なりたい自分の姿に近づいていく楓さんに期待したい。
「他にも冊子の内容は練習に行くまでの車の中で、弟や妹へアウトプットしたり、練習でコーチが話してくれたことは、母に話の内容を共有したりしていました。
弟が心の一時停止ボタンを覚えて、イライラした時に『心の一時停止ボタン』と言って自分のイライラを抑えることができるようになっていて嬉しかったのでこのお話も印象に残っています。」
と、取り組みに対して実際に行動してくれている姿を見て、アウトプットすることの良さや必要性を感じ、楽しみながら進めていくことができたとのことである。
8スターズの取り組みについて父・英世(ひでよ)さんは
「冊子の『コンディション』の話で、なりうる最高の自分になる為には準備とか環境も大事だと書いてあり、小学校の頃は練習会に行くのがギリギリになっていたことがありましたが、今は早めに準備をして、30分前には会場に着くようになりました。体操も自分でしっかりしてから練習に臨むようになったと思います。
急に動くと股関節が痛くなったり、突き指をすることがあったのですが、しっかり準備をするようになってからはそのようなこともありません。準備の大切さに気付き、継続していくうちにそのほうが上手くいくことに気づいたのだと思います。」
『子どものスポーツのすすめ』のアウトプットに取り組むことで、積み上げることの大切さや準備をすることの重要性を学んだ楓さん。さらには家族の中でもいい影響が見られ、その中でも学んだことから行動に移していくことの重要さを感じたことだろう。
受け身ではなく、自ら動くことの重要性
話を変え、楓さんにエルトラックのスクールに参加するきっかけを聞いた。
「札幌にいる時から鈴木良和コーチの『バスケットボールの教科書』などエルトラックの本を読んで練習していたのですが、父の転勤で埼玉にきたので、エルトラックの埼玉教室に通うことができました。」
「はじめは、自分に自信がなく、パスしてほしいと言われたらパスしか考えられなかったり、シュートを打とうと考えたらシュートしかできなかったり、発言も手を上げずに待ってしまうところもありました。」
ハキハキと話す彼女からは想像もつかないが、スクールに通う前はなかなか前に出られなかったそうだ。
エルトラックのスクールに参加して、練習に取り組む姿勢や自分の考え方など、変わるきっかけになったと語っている。きっかけとして楓さんの背中を押すものはなんだったのだろうか。
「代表チームに関わる鈴木コーチに教えてもらって、その指導のもとで全力でプレーすることができたりとか、コーチたちが色んな技に挑戦したりすることを褒めてくれました。それが私にとって、すごく嬉しくて自信を持つことができました。そこからはチャレンジするようになったし、自分がやればそれだけ成長できるんだなと確信できるようになりました。」
チャレンジすること、全力でやろうとすることへの階段を登り、新しい景色が見え、できることへの喜びや達成感を味わうことができた楓さん。
そこで得たものが楓さんの成長へと繋がっていくのであろう。
また、
「THCUスクールでは初期メンバーが2人しかいない中、みっちり練習でき充実していました。
一番印象に残っているのは鈴木コーチが話してくださった『人間ルールとミミズルール』です。
言われる前に動くのか、言われてから動くのかについての話ですが、THCUでコーチに言われなくても自分たちで意識を高く練習するっていうのを学んでからは、一回一回の練習をより良く、そして数多くできるよう自分で意識して練習しています。仲間に対しても、男子女子関係なく声をかけたり、盛り上げるようにしたりなど意識して取り組んでいました。コーチの説明の時は一番に走って見やすいところで聞くようにしています。」
自ら動くことの大切さを理解してから、自分の行動に移し、徹底することができている楓さん。その強い想いややると決めたことをやり通す力は楓さんの強さに変わっている。その強さは、やがて自信や糧に変わり、楓さんの背中を押すものになるだろう。
自分の中でどう考えて、意識できるか
これらの経験を通して楓さんが一番学んだことは『上手くなるのは自分次第』ということである。
「練習メニューに関係なく、自分がどれだけ限られた時間で密度濃く、工夫して練習することが大切だということを学んで、練習を自分で発展させるように意識しています。また、エルトラックでの練習を通して、積極的にやった方が自分のレベルアップにつながることが分かってから、より積極的ににやるようになりました。」
「レイアップの練習一つでも普通に打つのではなくフェイクを入れてかわす練習をしています。レッグスルー10を最初はかなり苦戦してレベル3くらいまでしかできなかったのですが、そこで諦めずに自分ならできると思って頑張ったら全部クリアできました。さらに課題を出していただいてレベル12までクリアしました。」と話した。
『レッグスルー10』とはレッグスルーの練習メニューの一つで、レベル1から10までの難易度がある。そのメニューはもともとレベル10までしか無いところ、楓さんはさらにレベルアップしたメニューを自ら聞き、チャレンジしたとのことだ。
自らクリアしたものよりも更に難しいものにチャレンジし、やろうとする姿は他の選手にとっても良い影響を与える行動であり、その行動を自分から進んで行えているのは、とてもすばらしいことだと思う。
こう考えられるようになったきっかけに1つの言葉があると話してくれた。
「『やればできる』という言葉に出会ってから、考え方が変わりました。」
その言葉は楓さんにとって、どんな影響を与えたのだろうか。
「挑戦しなければ自分が成長する可能性すらゼロになってしまうから、挑戦することは選手にとって大事だし、自分がレベルアップするには必要なことだと思います。そのことを分かってからは、相手が強くても、技が難しくてもそれに挑戦していきたいと思うようになりました。今後色んな壁にぶつかったとしても諦めずに努力を続けていきたいです。」
と、できなかったことに向き合い、少しずつ乗り越えていった楓さんだからこそ語れる熱い思いを感じることができた。
何事も、はじめから諦めるのではなく自分の中でどう捉えて向き合うかが大切であり、できると信じて練習をしていればできるようになった楓さんの実体験から、他の選手にとっても希望となる話を聞くことができた。
これは、私達にとって学びの深いものであり、参考にしていきたい。
さらなる成長を。もっと上手くなりたい
中学校を卒業し、高校生になる楓さんにこれからの将来に向けての話を伺った。
「まず高校生に向けて、文武両道で、限られた時間の中でもバスケと勉強どちらも全力で取り組める人になりたいです。そして、バスケットではBリーグの齋藤拓実選手がする、ドライブからのアシストやシュート、ディープスリーを決めきる選手になり、ディフェンスはオールコートでプレッシャーをかけてスティールからの速攻などができるようになりたいです。」
バスケットボールに限らず、生活すべてのことについて全力で頑張っていきたいと語ってくれた楓さん。その姿は同年代の選手にとっても参考になるであろう。
「得意なプレーはノーマークの人へ、確実にアシストすることです。ドライブからディフェンスを引き付けてノーマークの味方にパスを出すことは全日本の選手もやっていてかっこいいと思います。でも、たまに視野が狭くなって見えていない場面があるので、広く見れるようにしていきたいです。」
楓さんは現実の自分となりたい自分の双方を見据えていた。
さらに、これから磨いていきたいプレーについて、
「これから磨きたいプレーはスリーポイントシュートです。
高校でバスケする上で小さい選手に必要なスキルだと思うから、今は確率にムラがあるけどシュート練習をたくさんして確率を上げていきたいです。
その為に、力をつける目的でメディシンボール(通常のバスケットボールより重いボール)でスナップの練習をしています。また、クイックモーションが苦手なので、シュート前に強いドリブルやフットワークを入れ、打ちにくい状況からクイックで打つ練習をしています。また、シュート練習の時に動画を撮ってもらってシュートフォームの確認も徹底することも続けていきたいです。
あと、ディフェンスは疲れてくると妥協して足が動かなくなることがあったり、ヘルプに行くタイミングが掴めなかったりするので、これから高校では自分よりスピードがある選手とか身体が強い選手にも出会うと思うから、普段の練習から全力でやって磨いていきたいです。
その為に、フットワークを自分で考えたり、オフェンス練習とかゲームでどれだけディフェンスを頑張ったりすることが今後の成長の秘訣だと思っています。」
と、具体的な内容とその取組について細かく教えてくれた。それは楓さんが普段から「なりうる最高の自分になるためにどうすればいいのか」を考えていることの現れだろう。
父・英世さんは、
「速く走ることは得意ではないのですが、ハンドリングやドリブルはずっと練習してきてかなり出来ると思います。コーチが出してくれるスキル練習もストレスなくこなすことができていました。
特に1on1が好きで、スピードや能力では勝てない選手に対してタイミングや色々なスキルを使って、抜けるのは上手だなと思います。
シュートも少しずつ確率が上がり、フォームもきれいになったりしているから、教わったことを思い出して持続することが重要になると思います。最近は本当にスリーポイントが入るようになってきているので続けてほしいです。
高校に入ったら、走ることやスリーポイントが大事になると思うからそういうところは磨きながら、エルトラックで教わったことを思い出して発展させていってほしいです。」
父の思いと楓さんのもっと上手くなりたいという頑張りが重なり、これからさらなる成長を遂げていく楓さんの姿が楽しみだ。
より多くの子どもたちにバスケットの楽しさを
最後にバスケットや高校生に限らず、将来どんな自分になりたいと思っているのか聞くことができた。
「将来は、バスケの面でも勉強の面でも意識高く全力で取り組んで、周りの人にいい影響を与えて信頼される人になりたいです。
尊敬できる大人としてのコーチの存在や、年齢の近い身近なコーチたちがロールモデルとなっています。バスケット面の憧れでもあり、悩みを話すと相談にも乗ってくださったりするコーチのような存在に私もなりたいと思うようになりました。」
楓さんの中で普段関わるコーチたちの存在が良い影響となり、成長を後押ししているのだろう。
楓さんは数々のコーチと出会い、ある夢をもったのだという。
その夢は一体何なのだろうか。
「将来は日本中の子どもたちにバスケットの楽しさを教えたいです。
休校中に家の前でドリブル練習をやっていた時に、近くで遊んでいた隣の小学校の児童が、私の練習する姿を見て『今からバスケットボールを買ってきます!こうやって一つのことに一生懸命になれるのはいいですね』と言ってくれてバスケットボールを始めたという出来事がありました。
それがきっかけで教えたいと思うようになり、自分にたくさん教えてくれたコーチたちのようになりたいと思っています。」
「バスケットで学べるのは技術だけじゃなくて、気持ちの面やチームワークの意識も学べます。まず自分が選手として、色々なことを学びたいと思います。そして、こんな小さくてもできるんだということを伝えたり、こんなプレーもあるんだというバスケットの魅力を知ってもらったりしたいなと思っています。
大人になった時に子どもたちに関わり、学んだことを次の子どもたちに教えていきたいです。」
楓さんが今までバスケットをしてきて感じたものや楽しかったこと、エルトラックと出会って学んだことや得たものを、次の世代の人たちに教えたいという想いはとても感動するものであり、楓さんの夢を全力で応援したい。
楓さんが思う「バスケットの魅力・学び」を私達も聞き、そこから学んでいきたい。
父・英世さんから楓さんの将来についての想いを聞くことができた。
「転勤の関係で色々なところに行き、そのたびに仲間とお別れすることが多かったのですが、新しい場所ではいつもバスケットの仲間ができて、素晴らしいコーチの方々にも出会いました。
高校から北海道に行くので、また環境がガラッと変わりますが、これからの人生もバスケの仲間を作って楽しく過ごしてほしいと思います。」
メッセージ
楓さんより
「検定がクリアできたのは、埼玉教室などで色々なコーチに教えていただき、たくさんの方に支えていただいたおかげです。ありがとうございます。
プレーの面では、私がいろいろな技に挑戦することを褒めてもらい、逆に上手くいかなかった時にヒントを出してくれてアドバイスをしていただきました。
取り組み方の面では、意識高く練習しているとそれを認めてくれたり、よくない考えの時は違うと指摘をいただいたりもしました。正しい道に戻そうとしてくれたのが伝わり、とても嬉しかったです。3年間ありがとうございました。」
父・英世さんより
「文武両道を目指したいと言っている中で、『文』のところは学校で成績や受験など目に見えていたから安心感がありました。しかし、『武』の方では、どれくらい成長しているかがわかりにくいと、やはり不安があります。なりうる最高の自分を目指しているので結果は重要視していないし、過程が大事だと思っています。その過程が見える検定カードや8スターズがあり、課題をクリアしていくのが親からも見えたこの取り組みのおかげで安心して見ることができました。本当にありがとうございました。」
名前:山形 楓(ヤマガタ カエデ)
生年月日:2006年10月23日生まれ
出身:北海道函館市