今回の主人公は今年の春から中学1年生になった小山 蒼日(こやま あおひ)さん。新しいステージでバスケットボールに向き合っている蒼日さんは小学生までにこの8スターズクラブを受賞し、念願のトロフィー獲得、8スターズクラブメンバーとなっている。
そんな蒼日さんは積極的にチャレンジを行う選手で、その様子がインタビューを通じて伝わってきており、蒼日さんの魅力がたっぷり詰まった記事になっている。
絶対に手にしたい目標のトロフィー
ERUTLUCは『より多くの子ども達がなりうる最高の自分を目指せる環境を提供する』ことを理念に活動している。
ERUTLUCには練習会で取り組んでいる7項目の技能検定がある。この技能検定は自主練習の延長として、子どもたちが主体的に取り組みながらなりうる最高の自分を目指していくことをねらいとしており、技能検定はそれぞれ初級者向けの7級から高難度の1級までで構成される。すべてをクリアすると星をもらうことができるシステムで、この7つの星に、ある条件を達成すると獲得できる幻の星を加えた8つの星を揃えると、『8スターズクラブメンバー』に認定され表彰されるものである。
この8スターズメンバーにどうしてもなりたかったと語る蒼日さん。まずは蒼日さんが獲得するまで、技能検定への取り組みについて伺った。
「得意だったのはノーマルレイアップ、カップリングスキップでした。苦手だったのは体幹とテニスボールです。体幹は1級のギャノンプッシュアップ、テニスボールも1級に苦戦しました。1年生のときにはエルトラックの練習会に通っていて、すでに技能検定に取り組んでいたので、そのときにクリアしたものも多かったです。最初はテニスボールが楽しくて、よくやっていたと思います。」
小学1年生から技能検定に取り組んでいたというのは驚きだ。その時から、バスケットボールを楽しんでいたのだろう。取り組みのエピソードについてさらに蒼日さんに伺った。
「得意だったものは練習しなくてもクリアできたものばかりでした。ですが、体幹1級のギャノンプッシュアップは1ヶ月位かかりました。ちょうど同じタイミングで一緒に練習していた友達が練習会にいて、ボールの数の関係で、その人と交互にチャレンジしながら練習していました。最初は乗るのが大変だったのですが、何回も練習していたらできるようになりました。練習会で技能検定に取り組む時間があったので、そこで練習とチェックしてもらっていました。最後、これをクリアしたら終わりだったので、絶対にできるようにしたくて頑張りました。」
得意なものはスムーズにクリアしていったのに対し、体幹の1級は1ヶ月もかかったという。体幹1級のギャノンプッシュアップは、これまで8スターズを獲得してきた人の中でも難易度の高い項目と言われており、手足4箇所、それぞれボールの上に乗り、そこで腕立てを3回するという高難度の内容である。1ヶ月同じものに取り組み続けることは簡単なことではない。
1ヶ月という長い期間を乗り越え、見事8スターズ獲得を達成した蒼日さんの糧となったものは一体何だろうか。蒼日さんの背中を押したものとは何だろう。
「8スターズのトロフィーをどうしても欲しくて、そのために頑張りました。技能検定を1つ1つクリアしていく、ゲームのような楽しさとクリアした達成感もあって、取り組み続けられたと思います。そして、最後残っていたギャノンプッシュアップもこれで今まで努力をしてきた技能検定のすべてが終わるものだったので、絶対にクリアするんだと言う気持ちで頑張れました。」
自分の決めた目標に向かって、ひたむきに努力を重ね、見事一つの目標達成をした蒼日さん。そのバスケットボールに対する失敗を恐れない行動力がこの結果に結びついているのだろう。何度もチャレンジをして、小学1年生からの長い月日をかけて目標に向かって日々過ごしたこの期間は、8スターズクラブ受賞トロフィー以上に輝くものとなっているのではないだろうか。
学びを活かして、行動を変える
8スターズクラブメンバーに認定されるための条件には、技能検定の他にもう1つある。それはエルトラックの練習会に通う子どもたちに配られる冊子『子どものスポーツのすすめ』に書かれている内容をアウトプットすることだ。
エルトラックでは、学んだことをインプットしたら(知ったり、学んだりすること)、アウトプットする(誰かに話す)ことを大切にしている。『子どものスポーツのすすめ』はスポーツをする選手としてだけではなく、これから社会へ進んでいく子どもたちが大人になっても必要になる考え方を学ぶことができる。その内容をアウトプットすることを通じて、蒼日さんが印象に残っている話や学びになった話は何だったかを伺った。
「印象に残っている話は最初のだまし絵のある『うまくなるかどうかはあなた次第』、『中国の竹の奇跡』、『サーカスの象』の話などが印象に残っています。」
「だまし絵の『うまくなるかどうかはあなた次第』は、練習会でみんなで一緒に冊子を読んでいて、このだまし絵を見たときに僕はおばあちゃんに見えていて、でも他の友達はお姉さんに見えている人が多かったから、見え方が人によって違うことを実感しました。」
この『うまくなるかどうかはあなた次第』というお話は、ある一枚の絵がおばあさん、もしくはお姉さんに見えているかで、その後にとる行動が変わってくることを知ることができる。
その他の話で印象に残っていることが何だろうか。
「『中国の竹の奇跡』は最初は成長が見られなかったのに、5年後とかに一気に伸びたというところが印象に残っていて、心に響きました。『サーカスの象』は小学4,5年生のときは感染症の拡大や怪我をしていたこともあり、バスケが嫌な時もあって、やる気が出なくて、離れたくなることもありました。だけど、まずはやってみようと思って、ボールを触って、やってみたらまた好きになることができて、実際の生活で重なるところがありました。」
どちらの話も、なかなか成果や成長が見られない選手にとって、背中を押してくれるようなお話である。努力をすること、チャレンジすることを通して、バスケットボールをする選手たちの励みになっているのだろう。
これらの話を含め、この『子どものスポーツのすすめ』を通して、蒼日さんの行動に変化が現れたという。それは一体何だろうか。何を学び、どう行動に移したのだろうか。
「ミニバスで副キャプテンをしているのですが、キャプテンもいて、その人だけがまとめるのではなくて、みんなでリーダーシップを発揮することが大切だと、この冊子から学んで実際に行動してみました。チームをまとめることに僕も協力をしたり、試合の中でもっと頑張れるところや足りないところを見つけて声掛けしたりしていました。」
リーダーシップはキャプテンだけが発揮するものではない。全員が役割やできることを理解し、全員でリーダーシップを発揮することでよいチームとなっていく。それを学んだ蒼日さんはチームとして活動しているミニバスで実際に意識してやっているという。自分だけでなく、周りの人にも影響を与え、より良い環境を作れるよう自ら行動できる蒼日さんはこれからもより良い環境・チームを作っていく一員になっていくのではないだろうか。
蒼日さんの技能検定の取り組みを見られていた、父・計(けい)さんは
「5年生ぐらいから練習会で技能検定を練習する時間があるようになって、その時間までに合格したいから、失敗してもすぐボール拾って、急いで並んでという様子を見ていて、その姿が楽しそうでした。あと何回、あと何秒というと必死で走って、やっていて楽しそうでした。もともと、意見を言う方ではなくて、つらいことがあっても、あまり言わない方で、嬉しいことはたまに話してくれて、自分の中で考え、感じながら消化しているのかなと思っていました。そうやって技能検定もやっていたのだと思います。」
楽しさも悔しさも、成長する実感も感じた場所
続いては、エルトラックの練習会について伺った。まず、エルトラックを知ったきっかけについて
父・計さんは
「同じミニバスの先輩が先にエルトラックの練習会に通っていて、そこから知って体験に行きました。終わった後はとても楽しそうで、それで入ることにしました。」
そこで通い始めたのが神奈川県にある川崎練習会だったという。そこでの思い出を蒼日さんに伺った。
「川崎練習会は人数も多くて、その中で練習していて、いい刺激になっています。最近は中学生になり、カテゴリーが変わって、上の学年の人と一緒にやっています。その中では、できてたことができなくなって、もっと頑張ろうと思えるようになりました。先輩がとても上手なので、その発見が自分の刺激になっています。」
多くの人がいる環境で、チャレンジを続けている蒼日さん。そのチャレンジが他の場所でも活きているという。それは一体何だろうか。
「あと、思い出に残っていることが、PREMIUM CAMPです。4年生の時だったのですが、年上の人ばかりでした。その中でシュート対決をして、その時に全体の4位に入れて嬉しかったことが思い出です。シュートはもともと好きで、練習をしていたのですが、そのときにいい結果が出せたので、もっと好きになりました。年上の人ばかりの中でチャレンジをたくさんできた2日間だったと思います。」
PREMIUM CAMPとはエルトラックの練習会に通う子どもたちの中からバスケ能力テストの高得点選手にのみ参加権利が与えられる特別なキャンプである。そこでの経験は蒼日さんにとって、価値あるものになるだろう。
そして、蒼日さんにとって、苦しい思い出も残る。それは怪我によりバスケットボールから離れた期間だという。その時のエピソードも伺えた。
「怪我のときは、足を怪我していたので、激しい動きや走ることができないから、コーチにハンドリングを出してもらっていました。はやく動けるようになりたいと思っていて、嫌になる自分もいました。でも、他にも怪我で悩んでいる仲間が居て、その人と一緒に練習できたからこそ乗り越えられたと思います。」
目の前で一生懸命練習している人の横で思うように動けないことや別メニューを行う悔しさは怪我をして離れた人だからこそ知ることのできる感情だろう。その悔しさから乗り越えた経験はきっとこれからの蒼日さんの糧になるに違いない。
そうやって、さまざまな経験をすることができた練習会で蒼日さんが得たものとはいったい何だろうか。
「その日に教わったことを、最後のゲームの時間で挑戦してみて、上手くいったら他の場所でも使ってみようと意識していました。そうやって、身についたスキルは自分の財産になっています。身についたスキルを実際の試合で使えた喜びもあったり、バスケットボールが楽しくなってきたりしていました。さっきも言ったのですが、年上が多くて、相手が上手だからこそ、自分がどこまでできるのかと思って、チャレンジすることを意識していました。そして、その先輩とミニバスの試合で会ったときは試合では負けないと思ってやっていました。そういった出会いも大切なものになっています。」
様々な環境でバスケットボールと向き合っているからこそ、そこでしか経験できないことや新たな出会いが蒼日さんに新しい視点を与えるきっかけになっている。そして、そういった新しいことに対して、主体的に取り入れ、自分のものにしようとする力はバスケットボールに関係なく、これから大きくなっても大切なことになるだろう。
父・計(けい)さん
「低学年のときは『バスケは遊びだ』という蒼日の名言があって、それぐらい楽しく毎日でも行きたいと思っていたと思います。少しずつやることが難しくなってきて、そのときに感染症拡大で練習がお休みになったり、かえって感染症が落ち着いてくると練習が増えたりと変化が多かったと思います。大きくなると、やりたいことが他にも増えてくるじゃないですか。それで、なかなか気持ちが乗らない時もあったと思うのですが、最後までやめずに続けてきたということが成長に繋がっていると思います。怪我をした時期もあったので、そこで休んで苦しかったこともあったと思うので、よく乗り換えたと思います。」
自分から良い雰囲気を作れる選手に
最後は蒼日さんの将来の目標や、これからどんなバスケットボール選手になりたいと思っているのか伺った。まず、蒼日さんのバスケットボールのプレーについて語ってくれた。
「得意なプレーはシュートや外回りのプレーをすることで、速攻やアシストパスなどが得意です。ボール運びをすることもありますが、自分で攻めて得点したり、ドライブからのアシストパスを出したりすることが多いです。自分でも点数を取りながら、周りの選手を活かせるように意識をしてプレーしています。」
「そして、これからは1on1のディフェンスを頑張りたいです。相手が攻めてくるときに、1発で抜かれてしまうことがあるので、そこを止めれるようにしたいです。」
自分自身で得意なことや課題を分析し、何ができるのか、何を練習すべきなのか考えることのできる蒼日さん。その勤勉さはバスケットボールをする選手にとって必要な能力である。
このようにバスケットボールのプレーを通して、蒼日さんはどんなプレイヤーになりたいと思っているのだろうか。将来の目標とする姿や夢を最後に伺った。
「バスケットボール選手として、みんなからたくさん応援される人になりたいです。自分だけではなくて、他の人のことも応援したり、協力したりして、お互いに影響を与えられるような行動を取っていきたいです。そして、バスケットだけでなくて、いつでもどんなときでも応援される選手になるために、中学生からは新しい環境でバスケットボールをやるので、みんなが元気がないときにいい雰囲気にしていけるように自分から行動して引っ張れるようになりたいです。」
自分だけでなく、周りの人に影響を与える選手になり、応援される選手になれるように行動していくと語っている。そうして、周りの人のことを考えることのできる選手になっていくのではないだろうか。そんな思いやりのあふれる蒼日さんは応援される選手になり、今後もより成長してくだろう。
父・計(けい)さんは
「バスケットは小学1年生から中学までやることになったので、しっかり続けていってほしいなと思います。徐々に自分の責任が大きくなってくると思うので、自分で考えて行動してほしいなと思います。そこで色々な経験をして、とにかく自分が好きだと思うものを続けていってほしいです。今はバスケットですが、将来は違うものになるかもしれないですし、大人になっても楽しいこと、好きなことを続けてほしいなと思います。そして、人生を楽しんでほしいです。」
最後にメッセージ
最後に蒼日さんからメッセージをいただいた。
関谷コーチ、志村コーチ、萱沼コーチ、柳田コーチへ
「怪我でやりたくなくなったときに、元気が出る言葉とか楽しませてくれる言葉など、声をかけてくれて嬉しかったです。検定も見てくれたし、練習の最後の試合で、シュート決めたときに、拍手やいい言葉とか、声掛けしてくれて本当にありがとうございます。」
8スターズクラブを目指す後輩へ
「最初はできないと思っていたけど、頑張ったらできるようになります。だから、決めつけないで頑張って欲しいです。」
名前:小山 蒼日(コヤマ アオヒ)
生年月日:2010年06月13日生まれ
出身:神奈川県川崎市