ジョン・ポール・ターナー氏のインタビューレポート

ターナー氏から観る各国バスケの違い

2016年10月9日、10日にJUNIOR BASKETBALL SUMMIT 2016が開催され、このイベントに合わせてスペインからU-13スペイン代表のコーチも務めるジョン・ポール・ターナー氏が来日されました!
2日間に渡ったターナー氏のクリニックの後にお時間を頂き、日本やスペイン、アメリカのバスケットボールに思うことやバスケットボールとの関わりについてインタビューを行いました。

インタビューの様子をレポートをまとめましたので皆様にお届けします。

ジョン・ポール・ターナー氏について

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現在、U-13スペイン代表のヘッドコーチ。またU-15スペイン代表のアシスタントコーチも兼任するコーチ。
アメリカで生まれ、11歳の頃からスペインに住んでおり、スペインバスケの中で育ちました。
スペインとアメリカ両方の国籍をもつコーチです。

また長らくU-12マドリッド州代表のヘッドコーチも務められている方で、ミニバスやジュニア世代など特に若者に対する指導に長けているコーチです。
また英語とスペイン語を完璧に操るバイリンガルのため、2014年にスペインで行われたワールドカップではアメリカ代表にも帯同しており、様々な経験をしているコーチです。

何故、バスケットボールのコーチを目指したのですか?

幼い頃、私はいろいろなスポーツに取り組みました。
例えば、サッカー、アメリカンフットボール、テニス、そしてバスケです。
中でもチームスポーツにとても興味を惹かれました。

注)ターナー氏はアメリカ生まれで、11歳の時にスペインへ移住。
スペインとアメリカの両国の国籍をお持ちです。

小さい頃の私は、フットワークが良くて(すばしっこい?)、どのスポーツのコーチからも上達が早いと褒められました。

またサッカーやバスケの試合を観るのが小さい頃から大好きでした。
その時、小さいながらに
「何でこういうプレイをするんだろう?」
「どうして、この作戦を使うのかな?」
「1on1で使うにはどうすればいいかな?」
などいろいろな事を自問自答していました。つまり自分で自分をコーチしてたんですね。

その後、スペインで実際にコーチをする機会を得て、本格的にコーチングをスタートしました。

あなたがコーチをする上で一番大切にしていることは何ですか?

それは難しい質問ですね(笑)
どの年代の選手をコーチしているかでも変わりますが…。

私の哲学としては
第一に選手にはアグレッシブであって欲しいと思っています。
それはつまり、競い合うときには自分のベストを尽くすということです。
そして“失敗と共に学ぶ”ことです。

ですからコーチは選手を見守る忍耐が必要ですし、選手には失敗は恥ずかしいことではないと理解して欲しい。

選手として失敗が恥ずべきことではないと知ることは非常に重要です。
何故なら、選手は試合中、すぐに次のプレイを考える必要があります。
ミスを犯したということは、選手も何かが間違っていたと認識するわけです。
それでもプレイをし続ける強いメンタリティーが必要です。

それらのミスにクヨクヨすることなくプレイを続けられるのであれば、その子はきっと良いプレーヤーに成長していけるでしょうし、その事を理解している人が良いコーチにもなれると考えています。

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あなたにとって“素晴らしいコーチ”と、そうでないコーチの間にある違いは何ですか?

一つ目のことはさっき言った事と重なりますが、バスケットボールは完璧にすることはできないですが
ただ、いくら失敗してもいいから努力を続けることがとても大事だと思います。完璧を目指そうとするとどうしても我慢が必要だし、忍耐力も必要になることを理解し知らなければならない。

もうひとつ大切な事は、自分らしさや自らのフィロソフィーをもつ事だと思っています。
誰かのクリニックやコーチングを見たときに、それを真似て繰り返すだけでなく、そこから学び、自分の中で咀嚼しながら己のものにしていくことがすごく大事になると考えます。

バスケットボールの勉強はどのように行ってきましたか?

何よりもまずバスケットボールの試合を観ます。そもそもバスケットボールの試合を観ることが大好きだし、NBAやNCAA、ACBやユースの試合も観ます。
また自分はマドリッド州やスペイン協会で働いていて、たくさんの良いコーチが周りにたくさん居るので、彼らから学べるチャンスが多いです。

もう一つはバスケットボールを始めたときに指導を受けたコーチからも大きな影響を受けました。
バスケットボールはもちろんのこと、バスケットボール以外の生きる力というものも学べたからです。

アメリカとスペインの指導法にはどんな点で違いがありますか?

18歳以下と18歳以上とではアメリカもスペインも大きく環境が変わってきます。
18歳以下では、スペインのバスケットボールのほうがアメリカに比べると個人のファンダメンタルよりも状況判断に時間を割く傾向が強く、個人やチームとしての判断能力の向上を目指しています。
アメリカは逆に個人のファンダメンタルスキルに時間を割いているイメージがあります。

▼JUNIOR BASKETBALL SUMMIT 2016クリニックレポート▼

「”スペイン流”~シュートのメカニズム&ショットフェイクからの状況判断~」

「”スペイン流”~ドリブルの仕掛け方(状況判断やフェイクを交えて)~」

↑ターナー氏がジュニアサミットで取り扱ったクリニックのレポートです。
同氏がインタビューでも語っている“スペイン流の状況判断”を多分に含んだクリニック内容となっています。詳しい練習内容を知りたい方は是非レポートもご覧下さい。




18歳以上はスペインでプレイする選手はクラブチームとして1年の間に10ヶ月以上練習することができます。そこがNCAAと違いチームとしてできる時間がスペインの方が長いです。しかし、その期間はミッシングパートと呼ばれ、完全なプロ選手ではない状態で18~21歳の時期を過ごすことが多いので空白の時間ができてしまうのが問題ですね。(もちろんスペインでも若くプロ契約を結ぶ選手も居る)

アメリカであればその期間、大学バスケがプロ顔負けのレベルで盛んですので、そういった空白の時間がないですね。早い選手はアーリーエントリーでNBAに行くこともできますしね。そういった環境の違いもありますので、指導法も両国では違っていると思います。

アメリカ、スペイン、日本、各国子どもの印象は?

スペインの子どもたちは、日本の子どもにくらべてもっと社交的ですね。シャイな子は少ないです。それはバスケットボールのプレイに良い影響をもたらしていると思います。社交性の高さが、そのまま積極的なプレイや競争心にも繋がっているからです。
しかし逆の面では、スペインの子どもたちは人の話を聴くのが苦手ですね。スペインの子どもたちは日本やアメリカの子どもたちほど、先生やコーチをリスペクトする部分が少ないのでしょう。それがもたらす良い面は“自分自身で上達していこう”という意思が芽生えやすいこと。自分で問題の解決策を探そうとします。しかし話を良く聴いていないことで、コーチから言われたことを正確に遂行することがあまり上手ではありません。



また自分はイギリスの子どもたちにも指導したことがありますが、彼らのコーチへのリスペクトは大きいですね。しかしイギリス自体があまりバスケの環境が良いとは言えないので、イギリスにも能力の高い選手、強く大きな選手もたくさんいますが、国内のバスケ環境の未熟さが故に、彼らがトップレベルの選手にたどり着くのは難しいでしょう。選手たちは非常に良く教育されていますし、人の話もしっかりと聴けます。しかしスキルの面での成長は少しゆっくりですね。



日本の子どもは、本当に本当によく話を聴きますね。
しかし少し競争心に欠けるなと感じました。
決しては競争したくないわけではないでしょうが…。
恐らく、日本の子どもたちが置かれている試合環境も影響していると思います。
スペインの子どもたちは幼いころからリーグ戦形式でたくさんの試合を経験します。
その分は日本のバスケ環境に欠けている部分かもしれませんね。それでも言われたことは本当に忠実に再現しようとしますね。
些細なことでも、しっかりと遂行しようとします。

ジョン・ポール・ターナー

この2日間で日本の子どもたちに伝えたいメッセージは?

昨日、今日と子どもたちを観て感じたことは、
「勇気をもってプレイしよう!」ということです。
ミスを犯しても気にしない。ミスから学べば良いのです。

二つ目は
「もっと外に出てプレイしよう!」です。
外とは例えば学校のチーム、地域のクラブチーム、そういった組織の中だけでなく、
街中のストリートバスケコートに出ていって1on1をやったりするという意味です。
組織の中だけでプレイしていては、ベストの選手になるのは難しいでしょう。
外にでれば、より多くの良いプレーヤーと出会えます。そこから自分自身でいろいろなことが学べます。


サミットは楽しんでもらえましたか?

もちろん楽しかったです。
何よりも自分にとっては全てが初めてでしたので。
初めての来日、全く異なる文化。

またいろいろなコーチと意見交換ができたのが私にとっては非常に良かったです。
クリニックの後にたくさんのコーチが質問に来てくれて、そこで自分の考え方を伝えられたこと。
また他のゲストコーチたちにいろいろと質問をし、彼らの考え方を学べたことがとても良かったです。
初めて見る練習や、初めて触れる考え方などもあり、非常に参考になりました。

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